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フィリピン・第8回【労務・ビザ編】日本人駐在員の9Gビザ・AEP・TIN取得 — 着任までのスケジュール(最短で約90日、実務上は120〜180日程度を見込むのが安全)
「来月から駐在させたい」という本社の要望は、フィリピンでは、現実的ではありません。9G就労ビザの取得は最短でも2〜3ヶ月、家族帯同や手続の不備があれば、4ヶ月以上かかります。本記事では駐在員着任までの全工程を整理します。
目次
9G(Pre-Arranged Employment Visa)— 標準的な駐在員ビザ
- 対象:フィリピン法人に雇用される外国人
- 発給機関:在日フィリピン大使館(初回)+現地BI(移民局)
- 有効期間:1〜3年、更新可
- 前提:雇用主のSEC・BIR登録完了、AEP取得
AEP(Alien Employment Permit)— 労働許可
- 発給機関:DOLE(労働雇用省)
- 9Gビザ申請の前提として必要
- 期間:1〜3年、雇用契約に応じる
- 取得期間:書類完備から1〜2ヶ月
【2025年最新】AEP取得ルールの厳格化 — DOLE省令第248号
2025年2月10日に施行されたDOLE省令第248号により、9Gビザの前提となるAEP(外国人雇用許可証)の取得要件が実質的に厳格化されました。駐在員の着任計画に直接影響するため、押さえるべき変更点は次の3つです。
- 労働市場テスト(LMT)の運用変更:一般紙への求人広告掲載は引き続き必須。当初義務化された政府求人ポータル(PhilJobNet)・PESOへの掲載は、2025年6月の補足ガイドラインで「推奨」に緩和されました。
- 経済需要テスト(ENT)の新設:その外国人の雇用が、労働力不足・産業需要・国家開発の優先課題に照らして経済的に正当かを審査します。「なぜフィリピン人で代替できないのか」の説明が求められます。
- 技術移転プログラムの義務化:優先産業ではアンダースタディ訓練・スキル開発プログラムの整備が必要となり、外国人専門職の知見をフィリピン人従業員へ移転する計画が求められます。
実務上の影響:単に「日本人マネージャーを配置したい」だけでは通りにくくなっています。申請前に「現地人材で代替できない理由」と「現地へのスキル移転計画」を人事・現場で言語化しておくことが、却下や差し戻しを避ける鍵です。これらの追加審査により、AEP取得は上記の目安より長期化する場合がある点にも留意してください。
SVEG(Special Visa for Employment Generation)
- 一定規模以上の雇用創出を行う投資家向けの特別ビザ
- 永住権相当の長期滞在が可能
- 配偶者・未婚の21歳未満の子も同等の権利
- 大型製造業・BPO進出企業のオーナー経営者に活用余地
SIRV(Special Investor’s Resident Visa)
- 最低USD 75,000の投資(指定証券または事業)で取得可能
- 永住権相当の滞在
CREATE MORE法による新設特別ビザ
CREATE MORE法は、RBE(優遇登録企業)が雇用する高度専門人材または役員クラスの外国人に対する特別ビザの発給をIPA(投資促進機関)に認めました。従来の9G/AEPプロセスより迅速な発給が期待されますが、実施規則(IRR)の運用が固まりつつある段階のため、最新の実務動向の確認が必要です。
家族帯同(9G Dependent Visa)
- 配偶者・21歳未満の未婚の子が対象
- 主たる9G保持者と同一の有効期間
- 本人の9G発給後または並行して申請可能
着任までの90日スケジュール(標準)

着任後の手続
TIN(納税者番号)取得
- BIRに個人TINを登録(雇用主が代行可)
- 給与源泉徴収のために必須
銀行口座開設
- 個人口座:パスポート、ACR-I-Card、雇用主からの証明書
- 日系銀行(MUFG、SMBC)または現地大手銀行を選定
運転免許(必要に応じて)
- 日本の免許証→国際免許証で当面運転可
- 90日超滞在の場合はフィリピン免許への切替推奨
SSS/PhilHealth/Pag-IBIG
- 雇用主経由で加入
- PhilHealthは外国人居住者も対象
典型的な失敗ケース
- 「観光ビザで入って現地で就労」:違法就労となり、BIから罰金・出国命令
- AEPなしで9G申請:書類不備で却下、再申請で1ヶ月ロス
- 本社書類の認証漏れ:日本側の在留証明、戸籍謄本のApostille認証を忘れて再取得
- 家族帯同を後回し:駐在員本人の9G発給後に家族分を別途進める場合、結局3〜6ヶ月のタイムラグ
駐在員コストの全体像
実コストは年収だけではありません:
- 給与(フィリピン現地給+本社給与負担、グロスアップ可否)
- 住宅手当(マカティ、BGC、セブで月USD 1,500〜4,000)
- 子女教育費(インターナショナルスクール、年USD 15,000〜25,000/人)
- 帰国費用、健康診断、海外駐在員保険
- 9G/AEP更新コスト
まとめ
「3週間で行ける」は不可能、「3ヶ月で行ける」が現実、「半年見ておけば家族帯同まで完了」が安全圏です。本社決裁から逆算した工程管理が肝心です。
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