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フィリピン・第5回【進出編】PEZA vs BOI 完全比較 — 5つの判断軸と2026-2028新SIPPの注目分野
CREATE MORE法のもとで、税制優遇を受けるためには 投資促進機関(IPA)への登録 が必要です。日系企業が最も多く利用するのが PEZA(フィリピン経済区庁) と BOI(投資委員会)。両者は似ているようで、立地、業種、登録手続き、優遇内容に明確な違いがあります。
目次
PEZA(Philippine Economic Zone Authority)
- 対象:原則として輸出企業(売上の70〜100%が輸出)
- 立地条件:PEZAが認定した経済特区(SEZ)内に立地することが必須
- 対象業種:製造業、IT-BPO、サービス輸出、観光、医療観光、農業加工等
- 強み:手続きがワンストップ(PEZA内で完結)、ワンルーフでBIR・税関・移民局の出張所が機能
- インセンティブ:4〜7年のITH(所得税免除)、その後SCIT 5%またはEDR、輸入関税・VAT免除
BOI(Board of Investments)
- 対象:輸出企業・国内市場企業(DME)どちらも可
- 立地条件:原則自由(経済特区外でも可)
- 対象業種:戦略投資優先計画(SIPP)に記載された業種
- 強み:立地の自由度、サービス業や農業でも適用可能。制度上は可能だが、適用要件の確認が必要。
- インセンティブ:ITH 4〜7年、その後SCITまたはEDR(輸出企業のみ)/EDR(DME)。LDA(後発開発地域)立地でさらに優遇
5つの判断軸
| 判断軸 | PEZA向き | BOI向き |
|---|---|---|
| ① 輸出比率 | 70%以上 | 任意(国内市場向けも可) |
| ② 立地 | 経済特区内に入居可能 | 都市部・地方・本社近接など自由 |
| ③ 業種 | 製造・BPO・サービス輸出 | サービス・農業・国内市場含む幅広い |
| ④ 手続き効率 | ワンストップ志向 | 個別対応志向(BIR・LGU等別途) |
| ⑤ 後発地域戦略 | 限定的 | LDA優遇(追加3年ITH等)あり |
2026〜2028新SIPPの注目分野
フィリピン投資委員会は、3年ごとに戦略投資優先計画(SIPP)を更新します。2026〜2028年版で新たに重点とされる見込みの分野:
- Tier I(基幹産業):自動車部品、電子機器、再生可能エネルギー、農業加工
- Tier II(応用技術):医療機器、医薬品、産業機械、特殊化学品
- Tier III(先端・転換型):データセンター、AI・機械学習、サイバーセキュリティ、半導体設計、宇宙・航空
Tier IIIに該当すれば、ITH最大7年+EDR 20年(合計27年)という最長クラスの優遇が可能です。日系のクラウド事業者、ファブレス半導体、AI開発企業にとっては大きな機会です。
CREATE MORE後の運用変更
- 20営業日ルール:IPAは書類完備から20営業日以内に裁定。従来の「半年待ち」が原則NGに。
- FIRBの審査閾値:PHP 10億→PHP 150億。中小・中堅案件はIPA単独で完結。
- 大統領裁量:FIRBの推薦なしでも大統領が優遇を付与可能(柔軟性は増したが透明性の懸念も)。
【2026年最新:CREATE MORE法によるIT-BPOの柔軟性向上】
以前はPEZA登録企業が優遇措置を維持したままリモートワークを行うには、BOIへの登録移管が必要でしたが、CREATE MORE法(RA 12066)により、PEZA登録のままでも100%リモートワーク(Work from Anywhere)が可能になりました。これにより、物理的な経済特区内に縛られず、フィリピン全土から優秀なIT人材を確保できる体制が整っています。
ただし、以下の点に注意が必要です。
資産管理の条件: リモートワークで使用するPC等の設備(免税で購入したもの)について、PEZAへの登録や追跡管理が引き続き求められます。
対象業種: 主にIT-BPOセクターが対象であり、製造業などは原則として特区内での操業が必要です。
PEZA/BOI間の移行可能性
事業の成長に応じて、BOI登録からPEZA登録(経済特区移転)への切替は実務上可能ですが、税務処理(既に享受したITH期間のカウント等)と物理的な移転コストが論点になります。初期登録時に5年・10年スパンの事業計画を見据えた選択 が肝心です。
典型的な使い分け事例
- 電子部品の輸出工場:PEZA経済特区入居、SCIT選択 → 関税・VAT負担を最小化
- 国内市場向け食品加工:BOIで登録、EDRで労務費の追加50%控除を活用
- データセンター(Tier III):BOI登録、ITH 7年+EDR 20年のフル活用
- 日本語コールセンター:PEZA IT-BPO登録、SCIT 5%+輸入関税免除
まとめ
PEZAかBOIかは「業態 × 立地 × 輸出比率」で決まり、税制優遇の合計額に5〜10年で数億ペソの差を生むことがあります。
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