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フィリピン・第10回【税務編】RA 12023でフィリピン子会社にも12% VAT — 日本本社のSaaS再請求にも実務上の確認が必要
2024年10月に成立した RA 12023(VAT on Digital Services Act) は、フィリピンの消費税制度を根本から拡張しました。これまで課税対象外だった海外プラットフォーマー(Microsoft、Google、Amazon、Netflix、Adobe、Salesforce等)が、フィリピン国内顧客向けの売上に対して 12%のVATを徴収・納付 する義務を負うことになりました。
日系企業にとっての隠れたリスクは、日本本社からフィリピン子会社へグループライセンスを再請求している場合、その再請求にもVATが適用される可能性がある点です。
目次
RA 12023の概要
- 施行:2024年10月成立、実施規則(IRR)に基づき段階的施行
- 対象:非居住者デジタルサービスプロバイダー(Non-Resident Digital Service Provider, NRDSP)
- 税率:12% VAT
- 登録閾値:年間フィリピン国内売上PHP 300万超
- 申告納付:四半期ごとにBIRへ
- 対象サービス:
- クラウドサービス(IaaS、PaaS、SaaS)
- オンライン広告(Google Ads、Meta広告等)
- ストリーミング配信(動画、音楽)
- オンラインゲーム
- 電子書籍、デジタルコンテンツ
- オンライン教育プラットフォーム
- マーケットプレイス手数料
B2B取引とB2C取引の取扱の違い
B2C(個人顧客向け)
- NRDSPがフィリピン顧客に直接課税し、BIRに納付
- 例:個人がNetflixサブスクを契約 → Netflixが12% VATを徴収
B2B(法人顧客向け)
- リバースチャージ方式:フィリピン側の法人顧客がVATを納付
- フィリピン法人がVAT登録事業者であれば、入力VAT税額控除が可能
- 例:フィリピン子会社がSalesforceサブスクを契約 → 子会社側で12% VATをリバースチャージで申告納付
- 実務運用は過渡期にあり、NRDSP登録方式との関係を含めて今後のBIRガイダンスに留意が必要。
日系企業に特有の論点 — グループライセンス再請求

実務対応チェックリスト
- 棚卸:本社や海外関連会社から請求を受けているデジタルサービスの一覧化
- B2B/B2Cの区分:自社がVAT登録事業者か確認
- リバースチャージVAT申告:四半期VAT申告書(BIR Form 2550Q)に正しく反映
- 入力税額控除の活用:VAT登録事業者なら入力税額として控除可能
- 契約書の見直し:価格にVATが含まれるか別か(VAT Inclusive / Exclusive)の明記
- グループ内チャージバックポリシーの整備:本社経由の請求を含む取扱いを文書化
移転価格との関連
グループ内デジタルサービス再請求は、VAT課税(RA 12023)と移転価格(独立企業間価格)の二重論点 になります。第9回で解説した通り、シェアードサービス費は移転価格調査の典型対象であり、適切な独立企業間価格の設定とBenefit Testの文書化が不可欠です。
違反リスク
- 未納VAT + 25%サーチャージ + 年率12%延滞利息
- 故意の脱税認定時はさらに50%のサーチャージ
- BIR調査で3年遡及して摘発されると、税負担の倍増もあり得る
想定される追加コスト試算
フィリピン子会社が年間USD 100,000のグループライセンスを本社経由で受けているケース:
- 対象金額:USD 100,000(約PHP 580万)
- VAT:12% = PHP 約70万/年
- 3年分遡及されると:PHP 約210万+サーチャージ+利息で総額PHP 350万〜400万
VAT登録事業者であれば入力税額控除で実質負担は軽減されますが、申告漏れによるサーチャージは控除対象外です。
まとめ
RA 12023は施行から日が浅く、運用ガイダンスがまだ蓄積されている段階です。日系企業は 「本社からの再請求もVAT課税対象になり得る」 という前提で、グループ内取引の棚卸と申告体制の整備を急ぐべきです。
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