フィリピン 進出

フィリピン・第4回【進出編】外資規制とFINL — Public Service Act改正後に100%外資が可能になった分野

「フィリピンは外資規制が厳しい」というイメージは半分正しく、半分は2022年以降にアップデートが必要です。RA 11659(公的サービス法改正法、2022年)、RA 11647(外国投資法改正法)、RA 11595(小売自由化法改正、RTLA)の3法により、外資規制は大幅に緩和されました。本記事では2026年時点での規制マップを整理します。

外資規制の枠組み — FINL(外国投資ネガティブリスト)

フィリピンは「ネガティブリスト方式」を採用しており、リストに記載されていない業種は原則として100%外資参入が可能です。FINLは2部構成:

  • List A:憲法・特定法令による外資参入制限業種
  • List B:国家安全保障・公衆衛生・道徳・小規模事業保護による制限業種

2026年時点では第13次FINL。

List A — 主な制限業種

業種 外資上限
マスメディア(インターネット系業務を除く) 0%
商業ラジオ・テレビ放送 0%(憲法)
弁護士・会計士等の専門職業務 0%
公的サービス(一部の公益事業) 40%
教育機関(一部除外あり) 40%
米麦の精製等 40%
民間警備会社 40%
鉱物資源・小規模採掘 40%
国内市場向け小規模事業(払込資本USD 200,000未満) 0%(先端技術・50名雇用でUSD 100,000)

RA 11659 — Public Service Act改正の決定的な意味

2022年の公的サービス法改正により、「公的サービス(Public Service)」と「公益事業(Public Utility)」が明確に分離されました。公益事業のみが外資40%上限の対象で、それ以外の公的サービスは、原則として100%外資が可能となったが、安全保障審査や特定規制(critical infrastructure規制等)の対象となるため、実務上は完全自由化ではない点に留意。

100%外資が解禁された分野

  • 電気通信(テレコム)
  • 国内・国際海運
  • 航空(一部)
  • 空港運営
  • 有料道路・高速道路
  • 鉄道
  • 地下鉄
  • これにより、日系企業のフィリピンインフラ参入の道が大きく開かれました。

引き続き外資40%上限の「公益事業」

  • 配電
  • 送電
  • 上下水道
  • 石油パイプライン
  • 海港

RTLA(小売自由化法改正、2022年)

外資小売業者の参入要件が大幅緩和されました:

  • 最低払込資本:従来USD 250万 → PHP 2,500万へ
  • 店舗ごとの最低投資額:PHP 1,000万
  • 旧法にあった「総資産USD 2億以上の親会社」「上場5年以上」等の要件は撤廃

業種別チェックポイント

進出検討時には以下を確認すること:

  1. 自社業種がFINL List A/Bに該当するか
  2. 該当する場合、外資上限は何%か
  3. 例外規定(先端技術、輸出比率、雇用規模)の適用可能性
  4. 「公的サービス」か「公益事業」かの分類
  5. 最低払込資本の要件
  6. 業種別ライセンス(テレコムならNTC、銀行ならBSP等)

落とし穴 — グランドファザリング・ルール

フィリピンでは外資比率を直接持株だけで判定せず、実質的所有関係を見る「グランドファザリング・ルール」 が適用される業種があります。中間持株会社経由で外資40%枠内に収めたつもりが、実質判定で違反となり、SECからの登録取消・契約無効のリスクがあります。

まとめ

フィリピンの外資規制は2022年以降、過去数十年で最大の緩和局面にあります。「制限業種だから諦めた」案件も、Public Service Act改正、RTLA改正、FINL改訂を踏まえて再検討する価値があります。