フィリピン 進出

フィリピン・第3回【進出編】進出形態5択を1枚で比較 — 駐在員事務所・RHQ・ROHQ・支店・現地法人

「とりあえず駐在員事務所で」「とりあえず支店で」と決めてしまった結果、数年後に組織変更コスト数千万ペソを支払うケースが後を絶ちません。フィリピンの進出形態は5つあり、それぞれ可能な活動範囲、最低資本、税務上の扱い、撤退コストが大きく異なります。

5つの進出形態

1. 駐在員事務所(Representative Office)

可能な活動:情報収集、本社との連絡、品質管理、現地顧客サポート。営業活動・収益獲得は不可。

最低資本:払込資本の規定はないが、年間USD 30,000の運転資金を本社から送金する義務。

税務:法人所得税の対象外(収益なし)。ただし源泉税・VAT等の手続き義務はあり。

典型用途:市場調査、本社との連絡拠点。

落とし穴:実態として営業活動を行っているとBIRから「みなし支店」認定を受け、過年度遡及課税のリスク。

2. RHQ(Regional Headquarters・地域統括本部)

可能な活動:アジア太平洋地域の関係会社への監督・連絡・調整。収益獲得は不可。

最低資本:年間USD 50,000の本社送金。

税務:法人所得税免除。VAT・GROにも一定の免除あり。

典型用途:地域統括拠点としての法的なハコ。マネジメント駐在員ビザ取得がしやすい。

3. ROHQ(Regional Operating Headquarters・地域業務統括本部)

可能な活動:関係会社向けの認められた業務(経理、人事、研究開発、企画、ロジスティクス支援等)。第三者への提供は不可。

最低資本:USD 200,000(一時払込)。

税務:従来は10%の優遇税率があったが、CREATE法により標準25%の法人税率が適用されるよう改正された点に実務上の確認が必要。2022年以降、優遇税率が完全に廃止され、通常の現地法人と同様の税率が適用されるようになりました。既存ROHQについては経過措置の適用有無により税率が異なるため、個別確認が必要

典型用途:地域シェアードサービスセンター。

4. 支店(Branch Office)

可能な活動:本社事業と同種の活動(営業含む)。本社の一部門という法的位置づけ。

最低資本:USD 200,000(国内市場向け)。輸出比率60%以上、または先端技術活用/50名以上の直接雇用の場合はUSD 100,000等の緩和あり。

税務:法人税25%。本社送金(プロフィット・リミッタンス)に対し15%の源泉税。

典型用途:単一事業の早期立ち上げ。本社と連結会計しやすい。

落とし穴:本社が現地債務の最終的な責任を負う(無限責任)。

5. 現地法人(Domestic Corporation・株式会社)

可能な活動:定款記載の事業全般。

最低資本

・輸出企業(売上の60%以上が輸出):PHP 5,000(実務上はもっと積む)

・国内市場向けで外資40%超:USD 200,000(先端技術または50名以上雇用ならUSD 100,000)

・小売業(RTLA下):払込資本PHP 2,500万/店舗(フォーマット・規模により異なる)

税務:標準25%(中小は20%)。CREATE MORE法のSCIT/EDR適用は制度上は可能だが、適用要件の確認が必要。

典型用途:本格的な事業展開、M&A受皿、合弁。

メリット:有限責任、現地ブランド構築、株式譲渡による撤退の容易さ。

比較表

形態 営業活動 最低資本 法人税 撤退の容易さ
駐在員事務所 USD 30,000/年 非課税
RHQ USD 50,000/年 免税
ROHQ △ (関係会社のみ) USD 200,000 25%
支店 USD 200,000 25% +本国送金税15%
現地法人 業種により可変 25% (CREATE優遇可)

典型的な失敗ケース

「駐在員事務所で営業活動」:BIR・SEC双方からの遡及課税と過料。

「ROHQに過大な期待」:CREATE法でROHQの10%優遇税率が撤廃された事実を本社が把握しておらず、シェアードサービス機能の採算が崩壊。

「最低資本ぎりぎりで設立」:払込資本が運転資金として実際には全く足りず、初年度から増資手続きに追われる。

まとめ

進出形態の選択は、3年後・5年後の事業計画を起点に決めるべきものです。営業活動の有無、現地での雇用規模、本社との取引構造、将来のM&A可能性によって最適形態は変わります。