シンガポール ビザ・就労関連

シンガポールのWork Permit制度(概要)

本記事では、シンガポール法人がWork Permitで外国人を採用する際の制度について説明いたします。まず、業種共通の手順を説明し、その後、業種別の相違点を解説します。

なお、すでにシンガポール国内でWork Permitにより別の会社で勤務している方を雇用する場合と、新たにシンガポール国外から採用する場合では、勤務開始までのリードタイムが異なります。

1. Work Permit採用の基本手順

Step 1: 事前準備・適格性確認

  • 自社のQuota(枠)残高をMOMポータルで確認します
  • 候補者の国籍が承認済みソース国リストに含まれるか確認します
  • 候補者の年齢要件を確認します(新規申請:18歳〜61歳未満、更新:63歳まで)※2025年7月改定

Step 2: 必要書類の準備

  • 候補者のパスポートを準備します(有効期限6ヶ月以上が必要です)
  • Higher-Skilled Levy適用の場合は、教育・資格証明書を準備します
  • 英語以外の書類は翻訳証明を取得します
  • 労働者からの書面での同意書を取得します

Step 3: オンライン申請

  • 自社のCorpPassでMOM WP Onlineにログインします
  • 申請フォームを記入・提出します
  • 申請費用としてSGD 35を支払います

Step 4: In-Principle Approval (IPA) 取得

  • 通常、申請後1週間程度で処理されます
  • IPA発行後、追加手続の指示を確認します
    なお、IPAには有効期限があり(通常6ヶ月)、期限内に入国・手続きを完了しないと失効します。

Step 5: 入国前の手続き

  • Security Bond:非マレーシア人はSGD 5,000の保証金を用意します。なお、保険会社による保証(Banker’s/Insurance Guarantee)でも可能です。
  • Medical Insurance:MOM基準を満たす医療保険に加入します(年間補償額SGD 60,000以上、Co-paymentルール適用が義務化されています)
  • Settling-In Programme (SIP):建設・造船・石油化学等(CMP)業種の初回WP申請者は必須の研修を受講します

Step 6: Work Permit発行

  • 入国後、MOMサービスセンターで指紋・写真を登録します
  • 約5営業日でWPカードが発行されます

2. Quota(枠)の計算方法

基本概念:Dependency Ratio Ceiling (DRC)

DRCとは、外国人労働者(WP + S Pass)が占められる最大比率を指します。

計算式

最大外国人労働者数 = (ローカル従業員数 × DRC) ÷ (100% − DRC)

計算例:製造業(DRC 60%)、ローカル従業員10人の場合

= (10 × 60%) ÷ (100% − 60%) = 6 ÷ 0.4 = 15人(WP + S Pass合計)

Local Qualifying Salary (LQS) のカウント方法

ローカル従業員の給与によってカウントが変わります。LQSは2026年7月1日にSGD 1,600からSGD 1,800に引き上げられました。現行のカウント方法は以下のとおりです。

月給(固定月額給与) カウント
SGD 1,800以上 1.0人
SGD 900〜1,799 0.5人
SGD 900未満 0人(カウント対象外)

上記の「ローカル従業員10人」は、全員が月給SGD 1,800以上である必要があります。

なお、パートタイムのローカル従業員は時給SGD 10.50以上(従来SGD 9.00)が必要です。LQS引き上げにより、月額SGD 1,600〜1,799の従業員は1.0人から0.5人のカウントに変わるため、昇給等の対応をしない場合はQuotaが減少し、既存WP・S Passの更新に影響する可能性があります。賃上げ負担の緩和策として、PWCS(Progressive Wage Credit Scheme)による政府の賃金共同負担(2026年は30%)が2028年まで延長されています。

3. 業種別のDRC・Levy(2026年7月時点)

DRC(外国人比率上限)

業種 DRC ローカル1人あたり雇用可能数
建設(Construction) 83.3% 5人(LQSカウント×5)
石油化学等(Process) 83.3% 5人(LQSカウント×5)
造船(Marine Shipyard) 75% 3人(LQSカウント×3)
製造(Manufacturing) 60% 1.5人(LQSカウント×1.5)
サービス(Services) 35% 約0.54人(LQSカウント×0.538462)

S Pass サブQuota

業種 S Pass上限
サービス(Services) 10%
製造、建設、造船、石油化学等 15%

(注)S PassのLevyは、2025年9月以降、全業種一律SGD 650/月です。

Work Permit Monthly Levy(MOM公式ティア構造)

Work PermitのLevyは、製造業・サービス業ではDRC充足率に応じた3段階のティア制、建設・石油化学等では労働者のソース国区分別、造船では単一レートとなっています(Higher-Skilled/Basic-Skilledの2区分)。

業種 ティア/区分 DRC充足率 Higher-Skilled Basic-Skilled
製造
(Quota 60%)
Basic / Tier 1 25%以下 SGD 250 SGD 370
Tier 2 25%超〜50% SGD 350 SGD 470
Tier 3 50%超〜60% SGD 550 SGD 650
サービス
(Quota 35%)
Basic / Tier 1 10%以下 SGD 300 SGD 450
Tier 2 10%超〜25% SGD 400 SGD 600
Tier 3 25%超〜35% SGD 600 SGD 800
建設
(Quota 83.3%)
マレーシア・NAS・PRC 83.3%以下 SGD 300 SGD 700
NTS 83.3%以下 SGD 500 SGD 900
オフサイト(Off-site) 83.3%以下 SGD 250 SGD 370
石油化学等
(Quota 83.3%)
マレーシア・NAS・PRC 83.3%以下 SGD 200 SGD 450
NTS 83.3%以下 SGD 300 SGD 650
造船
(Quota 75%)
基本ティア 75%以下 SGD 350 SGD 500

※NAS=North Asian Sources(香港、マカオ、韓国、台湾)、PRC=中国、NTS=Non-Traditional Sources(インド、バングラデシュ、ミャンマー、タイ、フィリピン、スリランカ、ブータン、カンボジア、ラオス)。

※製造業・サービス業では、雇用する外国人労働者が多いほど(=DRC充足率が高いティアに入るほど)、高いLevyが適用されます。ティアへの割当は、S Passホルダー、Higher-Skilled WP、Basic-Skilled WPの順に行われます。

※NTS職業リストにより採用するWP保持者は、最低月給SGD 2,000以上の支払いが必要で、全従業員の8%まで(製造・サービス共通)というサブQuotaが適用されます。中国籍(PRC)WP保持者のサブQuotaは、サービス業8%、製造業25%です。

4. 2025〜2026年の主な変更点(参考情報)

項目 変更内容 施行日
雇用期間上限撤廃 従来14〜26年の上限が撤廃され、無期限更新が可能になりました 2025年7月1日
年齢上限引き上げ 新規61歳未満、更新63歳までに引き上げられました 2025年7月1日
ソース国追加 ブータン、カンボジア、ラオスがNTS承認国に追加されました 2025年6月1日
NTS職業リスト拡大 重機オペレーター、製造業オペレーター、一般料理人などが追加されました 2025年9月1日
S Pass最低給与 SGD 3,300(金融SGD 3,800)に引き上げられました(更新は2026年9月以降失効分から) 2025年9月1日
S Pass Levy一律化 一律SGD 650に統一されました 2025年9月1日
LQS引き上げ SGD 1,600からSGD 1,800に引き上げられました(0.5人カウントはSGD 900以上、パートタイムは時給SGD 10.50以上) 2026年7月1日
NTS職業リスト再拡大(予定) ソーシャルサービス・フードサービス・航空輸送の3分野8職種が追加される予定です 2026年9月(予定)
レヴィー体系の変更(予定) Budget 2026で発表されたレヴィー改定が適用される予定です 2028年〜(予定)

5. 実務上のポイント

(1) Quotaの更新タイミング

Quotaは毎週土曜に更新され、翌営業日に新しい残高を確認できます。

【重要】Quotaはリアルタイムではなく、CPF納付実績ベース(直近3ヶ月平均)で計算されます。そのため、ローカル採用・退職が即日反映されるわけではありません。通常2〜3週間のラグがあるため、採用計画は余裕をもって設計する必要があります。

(2) Levyの支払期限

Levyは、毎月17日までに支払います。GIROによる自動引落しが推奨されています。

(3) Primary Care Plan (PCP)

建設・造船(Marine)・石油化学等(Process)業種では、PCPの購入が必要です。

(4) M-SEP制度

一定条件を満たす企業は、DRC超過により+5%の追加枠を取得できます。なお、2025年5月から、サポート期間が従来の2年から3年に延長されています。

(5) 違反をした場合の罰則

以下の違反をした場合、罰則が科されます。

  • Under-declaration(給与偽装)
  • 無断の職種変更
  • 宿舎違反
  • Levy未納

コンプライアンス違反時の主なペナルティは以下のとおりです。

  • Security Bond没収(SGD 5,000/人)
  • 罰金、刑事罰
  • Work Permit申請停止(debarment)
  • 将来のQuota削減(最大2年)

故意ではない場合でも違反となることがありますので、適切に専門家の判断を仰いでください。

(6) WPの最低給与

Work Permitには法定最低給与が存在しないため、「最低給与規定は無い」と誤解されがちです。しかし、極端に低い給与はMOMにより不適切と判断され、申請却下や監査対象となる可能性があります。

実際には以下の制約があります。

  • Levy階層の最低賃金水準
  • MOM market rate審査
  • 不自然に低賃金の場合は却下・調査の対象
  • NTS職業リスト採用者は最低月給SGD 2,000以上

(7) Dormitory/宿舎規制

シンガポールではWork Permit保持者の住居確保は、雇用主の法的義務です。

  • 住所登録:勤務開始前に、MOMのシステム(OFER)に、有効な住所を登録する必要があります。
  • ドミトリーの制限:業種によっては、政府指定のドミトリーに居住させる必要があります。また、HDB(公営住宅)は、各物件の収容人数制限を遵守する必要があります

建設(Construction)・造船(Marine Shipyard)・石油化学等(Process)では、以下への配慮が重要です。

  • 政府認可宿舎義務
  • FEDA規制
  • ベッド数上限
  • 医療・食事基準

(8) Transfer rules(在星者の他社からの転職時の注意点)

他社WPからの転職の場合、以下の点に注意が必要です。

  • 旧雇用主のWPキャンセルが必須です。
  • 新IPA発行まで就労は不可です。
  • 旧WPと新WPに期間ギャップが発生します。

トラブルが多発するポイントですので、事前に十分な確認をお勧めします。

(9) 業種判定の注意点(サービス vs 製造)

日系企業で最も混乱する論点は以下のとおりです。

  • 物流(ロジスティクス)は、サービス(Services)扱いとなります
  • 修理は、製造(Manufacturing)扱いとなるケースがあります
  • Mixed businessの場合は、主業の判定が必要です

サービスに分類されるとQuotaが半分以下になるため、業種判定は非常に重要です。詳細は、後述の「業種判定の仕組み」をご参照ください。

※業種判定の仕組み(サービス(Services) vs 製造(Manufacturing))

① 日系企業で最も混乱する論点は、以下の通りです。

  • ロジスティクス=サービス(Services)扱い
  • 修理=製造(Manufacturing)扱いのケースあり
  • Mixed business → 主業の判定が必要です。②をご参照ください。

Serviceに分類されると、Quotaが、半分以下になるため重要です。

② 主業判定の仕組み

(i) まとめ:判定フロー

  • イ)売上・付加価値の最も大きい事業を特定
  • ロ)該当するSSIC Code(5桁)を確認
  • ハ)ACRAにPrimary SSICとして登録
  • ニ)MOMが自動的にセクター分類
  • ホ)Quota(DRC)・Levyが確定

(ii) 基本原則

主業判定は2段階で決まります。

段階 内容 担当機関
① ACRA登録時 SSIC Code(Singapore Standard Industrial Classification)を選択 ACRA
② MOM申請時 Business Activity Declaration(業種宣言)で確定 MOM

重要)MOMのセクター分類は、ACRAに申告したPrimary Business Activity(主たるSSIC)に基づいて決定されます。複数セクターで事業を行っていても関係ありません。

日系企業で特に注意が必要なのは、「シンガポール法人で何をしているか」であって、グループ全体の事業内容ではない点です。実際の業務内容とSSICが乖離していると、MOMの審査で問題になることがあります。

(iii) 主業判定の基準

ACRAの定義(SSIC選択時):Principal Activity = 会社が生産する財・サービスの「付加価値に最も貢献する活動」、または会社の活動の中で「最も付加価値の高い活動」

実務的には以下の要素で判断されます:

判定要素 説明
売上構成比 どの事業が最も収益を生んでいるか
付加価値 単なる売上ではなく、粗利・マージンの大きさ
主要資源の配分 人員・設備・資本がどこに投入されているか

複数の主要事業がある場合、最も売上の大きい2つの活動をACRAに登録できます(Primary + Secondary)。

6. 離職・キャンセル時の義務

雇用終了時の手続は以下のとおりです。

  • 帰国費用の負担:雇用を終了する際、労働者の本国への帰国航空券費用は、原則として雇用主が負担しなければなりません
  • 税金の清算(Tax Clearance):税金の徴収漏れを防ぐためのIR21手続が必要です

7. 業種別の相違点まとめ

業種によってWork Permitの手続で異なる主な項目を整理します。

業種別の特徴

業種 特徴
建設(Construction) 枠が広く、Levyは高めです。研修・PCP必須、MYEありです
造船(Marine Shipyard) 建設に近いですが、DRCは段階的に引き締められています(現行75%)
石油化学等(Process) 建設に近く、MYEありです
製造(Manufacturing) 中程度の枠で、比較的シンプルな運用です
サービス(Services) 枠が最も狭く、ソース国も限定的です。手続きは比較的軽いです

日系企業のシンガポール進出では、サービス業(飲食、小売、物流、医療等)で進出する場合、DRC 35%という厳しい制約があるため、ローカル採用とのバランスが特に重要になります。また、S Passの枠の管理も並行して、常時モニタリングが必要となる場合があります。

(詳細)Dependency Ratio Ceiling(DRC)

最も大きな違いはDRCです。サービス業が最も厳しく、建設業・石油化学等が最も緩いという特徴があります。DRCの一覧は、第3章の表をご参照ください。

(詳細)Foreign Worker Levy(月額)

Levyのレートは、第3章の「Work Permit Monthly Levy(MOM公式ティア構造)」の表をご参照ください。建設・石油化学等(Process)系は、ソース国と技能レベルによる差が大きいです。

(注1)Higher-Skilled(R1)とBasic-Skilled(R2)の違いは、MOMが認める技能資格・認定を取得しているかどうかです。

建設(Construction)の場合:

  • BCA(Building and Construction Authority)が認定する技能テスト(SEC(K)やMulti-Skilling等)に合格していること
  • 認定された技能資格(例:CoreTrade登録)を保持していること
  • 資格のレベルに応じてR1(Higher-Skilled)とR2(Basic-Skilled)に分かれます

造船/石油化学等(Marine Shipyard / Process)の場合:

  • 同様に業種固有の技能認定試験への合格

製造(Manufacturing)/サービス(Services)の場合:

  • 学歴ベースでの判定(例:認可された教育機関の資格・ディプロマ等)
  • SPF(Skills Performance Framework)等の基準を満たすかどうか

たとえば、建設業で外国人を多数雇用している場合、資格取得を支援してHigher-Skilledに引き上げることで、年間で相当なコスト削減になります。

(注2)製造業・サービス業では、R1/R2分類に加え、DRC充足率が高いティアに入るほど高いLevyが適用される仕組みです(第3章の表参照)。

(注3)Levy免除が適用される場合があります(入院・帰国中等の場合。ただし、免除を受けるにはMOMへの届出・申請が必要。全業種共通)。

(詳細)採用可能なソース国

サービス業はソース国が最も限定的です。

業種 採用可能国
建設、造船、石油化学等 マレーシア、中国、インド、バングラデシュ、ミャンマー、タイ、フィリピン、スリランカ等 + NTS国(ブータン、カンボジア、ラオス等)
製造(Manufacturing) 上記と同様です。NTS職業リスト該当職種によりNTS国からの採用が拡大しています(2025年9月〜。2026年9月にはさらに8職種の追加が予定されています)
サービス(Services) マレーシア、中国、香港、マカオ、韓国、台湾が中心です。NTS国はNTS職業リスト該当職種に限定されます

(詳細)必須研修・プログラム

業種 必須要件
建設、造船、石油化学等 初回WP保持者はSIP必須、安全研修必須です
製造、サービス SIP不要です(社内オリエンテーション推奨)

(詳細)Primary Care Plan (PCP)

業種 PCP要件
建設、造船、石油化学等 必須です(ドミトリー居住者含む)
製造、サービス 原則不要です(ドミトリー居住の場合は必要です)

(詳細)Man-Year Entitlement (MYE)

建設・石油化学等(Process)業種には、MYE制度(NTS国・中国からの採用割当)が適用されます。

業種 MYE適用
建設、石油化学等 あり(年間採用枠の管理)
その他 なし

(注)建設・プロセス分野では、MYE制度は段階的に廃止・枠組みが変更されています。2026年時点の最新運用状況(Quota制への完全移行など)をMOM公式サイト等で確認することをお勧めします。

(詳細)Security Bond

対象 金額
非マレーシア人労働者 SGD 5,000
マレーシア人労働者 不要

これは全業種共通ですが、建設・造船(Marine)・石油化学等(Process)は非マレーシア人比率が高いため、実務的な影響が大きいです。

出典

  • MOM公式サイト:Work Permit for migrant worker
  • MOM公式ガイド:How to calculate your quota and levy bill(2026年3月4日更新版)

注意:上記内容は、出稿当時の最新の規制に基づいていますが、詳細はMOM公式サイトで確認してください。

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