香港 暗号資産税制

香港・暗号資産の報告フレームワーク(CARF)の導入 ― 2027年施行に向けた実務ポイント

概要

暗号資産の報告フレームワーク(Crypto-Asset Reporting Framework、以下「CARF」)は、経済協力開発機構(Organization for Economic Co-operation and Development、以下「OECD」)が2023年に策定した新たな税務の透明性基準である。これは、暗号資産取引に関する税務情報を、関連する税務管轄区域との間で自動的に交換することを標準化するものである。報告義務のある暗号資産サービスプロバイダー(Reporting Crypto-Asset Service Providers、以下「RCASP」)は、デューデリジェンス要件を満たし、必要な情報を収集して、関係する税務当局に毎年報告することが求められる。

香港政府は、OECD基準に準拠した税務の透明性の向上と国境を越えた脱税対策に向けた国際的な取り組みへの支持を示すため、2026年までに必要な国内法が整備されることを条件として、2028年にCARFに基づく暗号資産取引に関する初の税務情報の自動交換を実施することを約束した。

2026年5月22日に「2026年税務(改正)(暗号資産報告枠組み及び改正共通報告基準)条例法案」が官報に掲載され、同年6月3日に立法会に第一読会のために提出された。この改正法案が立法会で可決されれば、CARF及び改正共通報告基準に関する法改正は、それぞれ2027年1月1日以降及び2028年1月1日以降に施行される。香港とのネクサスルールに定められた基準のいずれかを満たすRCASPは、2027年1月1日よりCARFに基づく登録デューデリジェンス、並びに報告義務の対象となり、これらの義務の履行をサービスプロバイダーに委託することも可能である。

2026年5月20日に公布された改正法案の官報掲載に関するプレスリリースはこちらをご覧ください。

改正共通報告基準に関する法改正の内容詳細はこちらをご覧ください。

対象となる暗号資産の範囲

CARFにおいて、暗号資産とは、デジタル形式で存在する価値の一形態であり、暗号技術によって保護された分散型台帳または類似の技術を用いて取引を検証し、安全性を確保するものである。暗号資産は、価値に対する権利を表すものでなければならず、その所有権または権利は、他の個人または団体に対してデジタル方式で売買または譲渡することが可能である。暗号資産の定義は機能的なものであり、代替可能なトークンと代替不可能なトークンの両方を含む。

関連する暗号資産とは、RCASPがデューデリジェンスおよび報告要件を満たす必要がある暗号資産である。関連する暗号資産とは、以下を除くすべての暗号資産を指す:

  • 中央銀行デジタル通貨;
  • 特定の電子マネー商品;並びに
  • RCASPにより決済または投資の利用に不適切であると十分に判断された暗号資産。

デューデリジェンス及び報告義務の対象となる個人並びに事業体

CARFの基では、事業の一環として、暗号資産の交換取引(すなわち、関連する暗号資産と法定通貨間の交換、または関連する暗号資産同士の交換)において、顧客の取引を促進または代理するサービスを提供する個人または団体(当該交換取引における取引相手方または仲介者としての役割を果たす場合、あるいは当該交換取引のための取引プラットフォームを提供する場合を含む)は、RCASPとみなされる。RCASPは、顧客から関連書類(マネーロンダリング対策または顧客確認(AML/KYC)手続きに基づく書類を含む)を収集して審査する権限を有する。

OECDによると、RCASPの例としては、以下のものが挙げられる:

  • 顧客名義で関連する暗号資産を売買するディーラー;
  • 関連する暗号資産を法定通貨または他の関連する暗号資産と交換できる暗号資産ATMの運営者;
  • マーケットメーカーとして機能し、取引手数料として買値と売値のスプレッドを受取る暗号資産取引所;
  • 顧客に代わって関連する暗号資産の権利の売買注文を執行する暗号資産ブローカー;並びに
  • 発行体から関連する暗号資産を引受け、顧客に再販及び(該当する場合)配布する個人または事業体。

香港税務局は、CARFに基づくRCASPに該当するかどうかを判断するのに役立つフローチャートをご用意しています。このフローチャートは、参考資料としてのみ提供されています。CARFルールを包括的に理解して頂くには、OECDが発行している、関連するCARF資料を参照してください。必要に応じて、法律専門家の助言を求めることも可能です。

ネクサスルール

RCASPは、以下のいずれかに該当する場合、当該税務管轄区域におけるデューデリジェンス及び報告義務を遵守する必要がある:

  • 当該税務管轄区域に税務上の居住者である個人または事業体;
  • 当該税務管轄区域の法律に基づいて設立または組織された事業体で、当該税務管轄区域において法人格を有するか、または当該税務管轄区域の税務当局に、所得に関して税務申告書を提出する義務を有する事業体;
  • 当該税務管轄区域によって管理されている事業体;あるいは
  • 当該税務管轄区域内に、支店を含む恒久的事業所を有する個人または事業体。

RCASPは、CARFを導入している税務管轄区域において、当該管轄区域内の支店を通じて行われた関連取引に関して、デューデリジェンス及び報告義務の対象となる。

RCASPは複数の税務管轄区域にネクサスを有する可能性があり、それが故、複数の異なる税務管轄区域において、デューデリジェンス及び報告義務の対象となる場合がある。CARFは、ネクサスルールにおいて上記の基準を階層的に規定することで、RCASPが複数の異なる税務管轄区域において重複した報告義務の対象とならないようにしている。

報告義務の対象となる取引

CARFにおいて報告義務の対象となる関連取引は、以下の3つのカテゴリーに分類される:

  • 関連する暗号資産と法定通貨間のあらゆる交換;
  • 1種類以上の関連する暗号資産間のあらゆる交換;並びに
  • 関連する暗号資産の送金(報告義務の対象となる小売決済取引、報告義務の対象となるユーザーが関与するその他の送金、外部ウォレットへの送金を含む)。

報告義務規定

各関連暦年またはその他の適切な報告期間において、RCASPは、報告義務の対象となるユーザー(個人及び法人)または報告義務の対象となる管理者を有する暗号資産ユーザー(法人のみ)に関して、ネクサスルールで定められた税務管轄区域に対し、必要な情報を報告しなければならない。報告義務の対象となるユーザー/報告義務を負う主体とは、当該税務管轄区域の税法に基づき、当該税務管轄区域に居住する個人または法人を指す。必要な情報には、以下のものが含まれる:

  • RCASPの識別情報:名称、住所及び識別番号(該当する場合);
  • 各報告義務の対象となるユーザー/報告義務を負う主体の識別情報:氏名/役職、住所、居住地、納税者番号、生年月日及び出生地(該当する場合);並びに
  • 各関連暦年またはその他の適切な報告期間について、RCASPの関連する暗号資産の種類毎に集計された取引情報。これには、関連する暗号資産の名称、関連する暗号資産の購入及び/もしくは売却に対して、法定通貨あるいは他の関連する暗号資産で支払われた/受け取った合計金額または公正市場価格(該当する場合)、ユニット数、関連する取引数などが含まれる。

デューデリジェンス要件

RCASPは、報告義務の対象となるユーザー及び報告義務を負う主体を特定するために、デューデリジェンス手続きを実施しなければならない。RCASPは、新規顧客を受け入れる際に、暗号資産のユーザー及び管理者から居住地を特定するための自己証明書を取得し、当該自己証明書の妥当性を確認する必要がある。既存の暗号資産のユーザーについては、RCASPは、当該顧客の税務管轄区域でCARF規則の導入後12ヶ月以内に自己証明書を取得し、その妥当性を確認する必要がある。RCASPは、関連する自己証明書の妥当性を確認するために、適用される税法に係る独立した法的分析を行う必要はない。

個人または事業体(管理者を含む)の暗号資産のユーザーの状況が変化し、RCASPが当初の自己証明書が不正確または信頼できないと判断するに足る理由がある場合、RCASPは当初の自己証明書に依拠せず、新しい有効な自己証明書、または当初の自己証明書の有効性を証明するための合理的な説明及び文書を追加で取得しなければならない。

当該改正法案において、香港政府は、RCASPが報告義務の対象となるユーザーまたは報告義務の対象ではない暗号資産のユーザーまたは管理者に対しても、同様のデューデリジェンス手続きを適用できることを提案している。

報告ポータル及び登録義務要件

香港税務局は、RCASPが安全で効率的かつ簡単に、CARFに基づく報告書及び情報を提出することができるよう、専用ポータル(CARFポータル)を開発する。さらに、当局は、必要な情報を当局に報告するためのデータ構造とフォーマットを規定するデータスキーマを公開する。詳細については、追って発表する予定である。

改正法案において、香港政府は、ネクサスルールを満たすすべてのRCASPに対し、CARFポータルへのアカウント登録を義務付けることを提案している。この登録義務は、RCASPが当局に報告すべきCARF情報の有無にかかわらず適用される。当該登録は、RCASPがネクサスルールに規定された基準のいずれかを初めて満たした年の翌年の1月31日までに行う必要がある。

記録保持要件

改正法案において、香港政府は、ネクサスルールを満たすRCASPに対し、以下の事項について十分な記録を保持することを義務付けることを提案している:

  • 暗号資産のユーザー及び管理者に対するデューデリジェンス手続きの実施にあたり依拠した証拠及び講じた措置の記録;並びに
  • 香港税務局に報告義務のあるCARF情報の正確性及び妥当性を確認するために使用された記録。

これらの記録は、関連情報に関するCARF報告書の提出期限日から6年間保管する必要がある。記録保持要件は、個人または法人がRCASPとしての資格を失った場合、あるいはRCASPが解散した場合であっても、引続き適用される。事業体が解散し、かつ解散前の6年間においてRCASPであった場合、解散直前に当該事業体の取締役であった者(取締役がいない場合は、受託者であった者、または経営責任者であった者)は、その事業体の解散後も関連する記録保持要件が遵守されるようにしなければならない。

罰則規定

改正法案において、香港政府は、RCASP及びそのサービスプロバイダーが犯した違反行為に対し、罰則を科すことを提案している。対象となる違反行為には、以下のものが含まれる:

  • 登録デューデリジェンス報告及びその他の要件の不遵守;
  • 不正確もしくは不完全な情報の提供;並びに
  • 誤解を招く虚偽もしくは不正確な報告、情報または陳述書を発見したにもかかわらず香港税務局へ通知しなかった場合。

RCASPが犯した特定の違反行為に対する罰金は、有罪判決後の違反継続日数、または関与した暗号資産のユーザーまたは管理者の数に基づいて算定される。

また、自己申告を行う際に、重要な事項について故意もしくは過失により誤解を招く、虚偽または不正確な情報を提供した者は、違反行為とみなされることも提案されている。

さらに、特定の違反行為に対する訴追の代替手段として行政罰の仕組みを導入することが提案されている。RCASPが正当な理由なく関連する違反行為を行い、かつ同一の事実について訴追されない場合、訴追される代わりに罰金が科される可能性がある。RCASPは、香港税務局局長または副長局長によって、罰金の査定が行われる前に、自らの状況を説明するための書面による陳述書及び証拠を提出する権利を有し、また、その罰金の査定に関して税務上訴委員会に上訴する権利を有する。

報告義務の対象となる税務管轄区域及びパートナー税務管轄区域のリスト

改正法案では、香港政府は香港税務局局長が指定した方法で、以下を公表する権限を与えることを提案している:

  • 報告義務の対象となる税務管轄区域のリスト ―― 暗号資産のユーザーまたは暗号資産ユーザーの管理者が報告義務の対象となるユーザー/事業体であるかどうかを判断するため;そして
  • パートナー税務管轄区域のリスト ―― RCASPがCARFに基づくデューデリジェンス及び報告義務を遵守しなければならない税務管轄区域を決定するため。

香港税務局は、上記2つのリストを適切な時期に公表及び更新する。

OECD関連資料

CARFは税務に関する自動情報交換のための国際基準であるため、OECDが発行するCARF関連資料は香港におけるCARFの実施に不可欠である。OECDは、CARFに関する以下の規則、解説、ガイダンス、並びにCARFに基づく情報自動交換を支援するXMLスキーマのユーザーガイドを公表している:

詳細については、OECDのCARFに関するウェブサイトをご覧ください。

問い合わせ等

CARFに関するご質問は、下記のメールアドレスまでご連絡ください。

原文:香港税務局 CARF 専門ページ(2026年6月22日更新)