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国際税務は経済戦争?!(11)

Global Tax Deal

前回のコラムではグローバル・ミニマム課税がどのように各国で法制化され、これに対してアメリカトランプ政権がどのような反応を示したかという点について説明した。いうまでもなく、グローバル・ミニマム課税はOECD特にフランスとドイツが主導したと言われており、これをバイデン政権がサポートしてきたという経緯がある。グローバル・ミニマム課税はPillar 2であるが、これとPillar1を総称してGlobal Tax Dealという表現で説明されることが多い。

そもそもバイデン政権が何を意図してこのGlobal Tax Dealをサポートしていたのかは、例えばバイデン政権のイエレン財務長官は、国際的な法人税率切り下げ競争に歯止めを打つためには、グローバル・ミニマム課税は極めて重要と積極的な推進をサポートしていたし、そもそもバイデン元大統領はGlobal Tax Dealとは別にアメリカの法人税率の大幅引き上げを狙っていたことからも、その背景が民主党の基本理念である増税路線に基づくものであることは何となく推察できる。しかし、このような考え方は、共和党のマジョリティには受け入れがたいものであるし、ましてやアメリカファーストのトランプ大統領としては、何としてもその導入を阻止したいという固い決意を持って大統領に就任したことは想像に難くない。

Global Tax Deal大統領令

トランプ大統領はGlobal Tax Dealを阻止するため、大統領就任初日にGlobal Tax Deal大統領令を発令した。この就任初日というところが、バイデン元大統領の進めていた望ましくない政策のアンチテーゼという側面もあり、トランプ大統領のGlobal Tax Dealに対する気合の入り方(敵対心?)が如実に示されていると言っていい。

次に具体的中身に入っていく。同大統領令は、前政権が進めていたOECDのGlobal Tax Dealのことを米国の利益を外国が域外課税するのみならず、米国の税制立法権を侵害するものだと論じ、米国が諸外国の定めた差別的税制に同調しないという理由で、米国企業が不当な課税を受ける可能性があると位置付ける。そのために発せられたこの大統領令により、Global Tax Dealは米国において何の法的効果もないものと宣誓されたのである。あらためてここで留意点であるが、この大統領令で無効とされているのは、Pillar 2のグローバル・ミニマム・タックスだけでなくPillar 1も含まれているということ。Pillar1については改めて明確化したにすぎないのだが、事実上死に体であったものに明確にとどめを刺した形になった。

Global Tax Deal大統領令による対抗策

Global Tax Deal大統領令は単にGlobal Tax Dealが無効と宣言するだけでなく、対抗手段についても規定している。具体的には、2つで1つはGlobal Tax Dealを差別的かつ本来の権限が及ぶべき地域の域外にまで影響が及ぶ税(Discriminatory and Extraterritorial Tax)と位置づけ、このような税制を持っている国地域がどこかを調査するように財務省長官に命じている。これはひとつにはGlobal Tax Deal以外にも各国で巨大IT企業をターゲットにした税制を導入する動きがあり、これを強力にけん制する狙いがある。また噂話ベースでは、この調査対象の最大のターゲットはUTPRを導入した国・地域ではないかという説が流れ、その結果として香港のようにUTPRの導入時期をあいまいにする国・地域が出てきている。

次に対抗措置のオプションリストを60日以内に大統領に提示することを求めている。かなり短期的な期限設定だ。これまでの政権のスピード感だと、リストが出たらすぐ選定して即実施なんてことも考えられる。OECD(EU主要国)側には相当なプレッシャーになったに違いない。

Section 899

これらの対抗措置の中で最も有力視されていたものがSection 899である。このSection 899は、Global Tax Deal大統領令発令の時点ですでに法案化されており、その内容もGlobal Tax Deal大統領令に沿った形の構成になっていて、まさに満を持して登場したGlobal Tax Deal対抗オプションであることがわかる。

その内容は差別的税制や域外適用税制を保有する国の財務長官によるリストアップ及び差別的税制や域外適用税制の内容の精査が行われ、次に対象国に問題税制の撤廃要求と報復措置の通告を行うことである。

Section 899による報復措置の内容

Section 899による報復措置の最大の目玉は付加税率である。この付加税率は、差別的税制や域外適用税制を有する国の法人及び個人に対する米国の法人税、所得税や源泉税に関して通常の税率に一定割合上乗せした税率を適用するというもの。ただでも高い米国の税率に該当国の国レベルでさらに上乗せがあるとなると、影響はその国にとって甚大なものとなるのは想像に難くない。

次回はSection 899の影響の深堀りと、これに対するEU側の対応策についてふれていく。