
シンガポール
シンガポール会計・税務・監査の基礎知識
シンガポール・事業撤退等をする場合
シンガポールで事業撤退等を行う場合には、いくつかの方法があり、それぞれに法律上・実務上の要件があります。
以下のような、選択肢が考えられます。
- 事業活動していない・債務なし → Strike-Off(ACRAの登記抹消の手続、もっとも簡便的な方法)
- 債務を全額支払可能 → MVL(株主自発的清算)
- 債務超過だが自主清算 → CVL(債権者自発的清算)
- 債権者が強制清算申立て → Court Winding Up(裁判所命令による清算)
- Exit戦略として売却 → M&A/事業譲渡v
- 将来、事業再開の可能性がある → Dormant化(休眠化、法定の義務の一部免除)
目次
1. Strike-Off(会社の登録抹消申請)
概要
ACRA(会計企業規制庁)に申請して、会社を公式に抹消する方法。比較的コストが低く、スムーズに会社を消滅させられる手段。
主な要件
- 会社が活動していない(Dormant)、または、活動を停止済み。
- 未解決の負債がない(債権者・IRASへの未払税金・CPF未払いなし)。
- 未解決の訴訟がない。
- すべての銀行口座をクローズしている。
- 株主・取締役全員の合意がある。
2. Members’ Voluntary Liquidation (MVL)(株主自発的清算)
概要
会社が支払能力を有する場合、株主の決議に基づき清算人を任命し、資産を処分して清算する方法。
主な要件
- 取締役が「12か月以内に全債務を支払える」との法定宣誓を提出。
- 株主特別決議(75%以上の賛成)が必要。
- 清算人(通常は、公認会計士または弁護士)を選任。
- 清算人が資産の売却・債務清算・残余財産分配を行う。
3. Creditors’ Voluntary Liquidation (CVL)(債権者自発的清算)
概要
会社が支払不能である場合に、株主の決議で清算を開始し、債権者の承認を得て清算人を選任する方法。
主な要件
- 会社が支払不能(liabilities > assets)。
- 株主特別決議に基づき清算開始。
- 債権者集会を開催し、清算人を承認。
- 債権者に優先して資産処分が行われる。
4. Court-Ordered Winding Up(裁判所命令による清算)
概要
裁判所の命令により強制的に会社を清算する方法。主に債権者が申立てを行う。
主な要件
- 債権者が支払不能を理由に裁判所へ申立て。
- 未払債務がSGD 15,000以上、かつ、21日以内に支払われていないことなどが典型的な要件。
- 裁判所が命令を下すと公式受託人(Official Receiver)または清算人が任命される。
5. 事業譲渡・M&Aによる撤退
概要
撤退する代わりに、会社または事業部門を第三者へ譲渡する方法。清算ではなく「Exit Strategy」として活用。
主な要件
- 株主・取締役会の承認。
- 取引スキームによっては IRAS(税務当局)への税務申告、GSTインパクトへの考慮が必要。
- 雇用契約・リース契約などの移管調整。
6. Dormant Company(休眠状態にする)
概要
撤退せずに、会社を存続させたまま事業を停止する。将来再開や売却を予定している場合に利用。
主な要件
- 取引活動を行わない(一定の管理コストは残る)。
- 毎年の申告義務(Annual ReturnやTax Filing)は一部簡略化または免除申請可能。
- 事業再開時には通常の申請で可能。
注意点
ただし、シンガポールの地場銀行の銀行口座が凍結、閉鎖される可能性は否定できません。閉鎖されたあと、あらためて銀行口座を開設する必要がある場合、時間がかかる、または、開けないケースもありますので、ご注意ください。
(注)上記は、出稿時点の情報であり、最新の実務は変更されている可能性があります。
当社提供サービス
当社では、上記に関するご相談を随時お受けしております。
また、シンガポール以外の東南アジアの第三国に本拠地を移される、拠点開設される際のご相談もお受けしております。マレーシアにつきましては、当社シンガポール事務所及びマレーシア拠点による、直接のサポートの実績がございます。