香港 予算案

香港・2026-27年度香港予算案

2026/27年度予算案で財政司司長は、下記の税制措置を提案した。当該措置の全ては施行前に、関連する法規の修正を必要としている。

  • 2025/26年度の利得税(法人・個人事業)、給与所得税及びパーソナル・アセスメントの税額の軽減
  • 人的及び所得控除各項目に関する調整
  • 高齢者介護施設費用控除に関する調整
  • 第一子の子供扶養控除の誕生年における追加控除に対する請求可能期間の延長
  • 1億ドルを超える住宅用不動産に対する従価印紙税率の引き上げ
  • グループ内の持分譲渡における印紙税免除基準の緩和
  • 生計面や経済面、その他の措置(※税制措置以外の予算案より抜粋)

当該法案及び実施内容のハイライトは下段に示されている通りである。よくある質問に対する回答(FAQ)及び当該措置が実施された場合に、上記の各項目が如何に納税義務者の給与所得税及びパーソナル・アセスメントの税額を軽減するかを示す例示も併せて提供されている。

当該措置が実施された場合の給与所得税並びにパーソナル・アセスメントの税額を計算したい方は、香港政府によって提供されている納税額自動計算プログラムを使用することが可能。

2025/26年度の利得税(法人・個人事業)、給与所得税及びパーソナル・アセスメントの税額を軽減

財政司司長は、2025/26年度の利得税(法人・個人事業)、給与所得税及びパーソナル・アセスメントの税額に対し、当該税年度に限定して、3,000ドルを上限とする100%の減税措置を提案した。当該減税措置の実施に当たり、立法会での可決承認が必要となる。

利得税(法人・個人事業)に係る税額控除上限額は、事業単位毎に適用可能である。給与所得税に対する控除上限額は、納税義務者毎に適用可能であるが、夫婦で共同申告(ジョイント・アセスメント)を行う場合は、夫婦単位毎に適用される(すなわち、合計で3,000ドルの控除上限額)。パーソナル・アセスメントにおいて、納税義務者個人もしくは既婚者で配偶者と別々の申告を選択している場合、個々人に対して当該控除上限額が適用される。夫婦単位でパーソナル・アセスメントを選択する場合は、3,000ドルの控除上限額が夫婦単位毎に適用されることとなる。

当該減税措置は、資産所得税には適用されない。賃貸収入がある個人は、パーソナル・アセスメントを適用できる場合、パーソナル・アセスメントの下で当該減税措置を享受することができる。

給与所得税及び利得税(法人・個人事業)それぞれに課税される納税義務者(パーソナル・アセスメントを適用できない場合)は、それぞれの税金に対して当該減税措置を享受することができる。事業収入や賃料収入のある個人でパーソナル・アセスメントを適用できる場合、パーソナル・アセスメントの下で当該減税措置を享受することができる。当該ケースの場合、パーソナル・アセスメントを選択しない場合、享受しうる減税額とは異なる可能性がある。正確な減税額は、ケース毎に判断される。香港税務局は、パーソナル・アセスメントの選択が納税額を減額できるかどうかをケース毎に確認し、最も有利な方法で納税義務者を査定する。

パーソナル・アセスメントの適用を希望する場合、納税義務者は、2025/26年度給与所得税申告書(BIR60)の項目7に記入しなければならない。事業収入もしくは賃料収入がなく、給与所得のみの個人は、パーソナル・アセスメントを選択する必要がない。

当該減税措置は、2025/26年度の税額査定における納税義務者の納税債務を軽減する予定。納税義務者は例年同様、2025/26年度利得税(法人・個人事業)申告書並びに給与所得税申告書を提出しなければならない。関連法案の成立後、香港税務局は、最終査定において当該減税措置を有効とする。当該法案の成立前に発行された2025/26年度の最終税額査定書に関して、香港税務局は当該法案の成立後に再度査定を実施する予定である。これに対し、納税義務者は特段申告や照会を香港税務局にする必要はない。

当該減税措置は、2025/26年度最終税額に対してのみ適用され、同年の予定納税額に対しては適用されない。従って、当該減税措置とは区分して、納税義務者は依然として予定納税額を期限通りに納付する必要がある。既に納付済みの予定納税額は、2025/26年度最終査定額及び2026/27年度予定納税査定額に対する納付に対して充当される。万が一、超過残額がある場合は還付されることとなる。

課税所得の累進税率の調整及び累進課税幅の増額(※前年度より変更無)

評価年度 以前(2017/18年度まで) 現行(2018/19年度以降)
香港ドル 課税所得純額(累進幅) 税率 課税所得純額(累進幅) 税率
第1段階 45,000 2% 50,000 2%
第2段階 45,000 7% 50,000 6%
第3段階 45,000 12% 50,000 10%
第4段階 ______ 50,000 14%
135,000 200,000
残額 17% 17%

※給与所得税の税額は、次のいずれかで計算した結果の少ない方となる:

① 人的控除前の課税所得5百万ドル以下に対し15%と、5百万ドルを超える課税所得に対し16%の標準税率を乗じた金額;または

② 所得から人的及び所得控除額等を差引いた課税所得に、上図の2~17%までの累進税率を乗じた金額。

人的及び所得控除各項目

財務司司長は、2026/27年度からの各種控除額を、以下の通り増額することを提案している。

評価年度単位: 香港ドル 2017/18年度(以前) 2025/26年度(現行) 2026/27年度(予定)
人的控除
基礎控除(独身) 132,000 132,000 145,000
基礎控除(既婚者) 264,000 264,000 290,000
寡婦(夫)控除 132,000 132,000 145,000
子供扶養控除
第1子から第9子まで各一人当たり 100,000 130,000 140,000
誕生年における追加控除 100,000 130,000 140,000
兄弟(姉妹)扶養控除 37,500 37,500 37,500
父母祖父母扶養控除(1年間のうち6ヶ月間扶養している)
60歳以上または60歳未満の障害者 46,000 50,000 55,000
55歳~59歳まで 23,000 25,000 27,500
付加父母控除祖父母控除(年間を通じて納税者と同居している)
60歳以上または60歳未満の障害者 46,000 50,000 55,000
55歳~59歳まで 23,000 25,000 27,500
障害者扶養控除 75,000 75,000 75,000
自己障害者控除 75,000 75,000
所得控除
自己学習費用控除 100,000 100,000 100,000
老人介護施設費用控除 92,000 100,000 110,000
住宅借入金利息控除(扶養子女無/有) 100,000 10/120,000 10/120,000
MPF自己負担控除 18,000 18,000 18,000
適格医療保険制度任意負担控除(2019-20年度より追加) 8,000 8,000
適格繰延(据置)年金MPF任意負担控除(2019-20年度より追加) 60,000 60,000
住宅家賃控除(住宅不動産無所有が条件、2022-23年度追加、扶養子女無/有) 10/120,000 10/120,000
生殖補助医療支出控除額(2024-25年度より追加) 100,000 100,000
寄附金控除=下限100~上限(課税所得総額-所得控除-減価償却費)×35%

高齢者介護施設費用控除に関する調整

財務司司長は、2026/27年度から高齢者住宅介護費用の控除限度額を、上記の通り現在の10万ドルから11万ドルに引き上げることを提案している。

子供扶養控除の誕生年における追加控除に対する請求可能期間の延長

行政長官は、2025年の施政方針演説において、出生率向上のため、新生児に対する子供扶養控除の誕生年における追加控除の請求期間を、現行の1歳から2歳まで延長することを提案した。2026/27年度から、納税者は出産後2年間、子供1人につき、従前の控除額を2回(提案されている14万ドルの子供扶養控除額に基づくと2年間合計で28万ドル)請求する権利を有することとなる。この措置は、課税年度末までに2歳未満のすべての子供(つまり、2025年4月1日以降に生まれたすべての子供)に適用される。この提案に関するよくある質問に対する回答(FAQ)をご覧ください。

人的及び所得控除と高齢者介護施設費用控除に関する調整、並びに子供扶養控除の誕生年における追加控除に対する請求可能期間延長の実施詳細

関連法案が成立次第、香港税務局は調整後の各種控除額に基づき、2026/27年度の予定納税額を自動的に算出する。納税者は2025/26年度において、関連する税務申告書を提出するだけでよく、別途申請する必要はない。2026/27年度における高齢者介護施設費用の控除限度額の引き上げに関する取扱いについては、よくある質問に対する回答(FAQ)10-11及び事例4を参照してください。

1億ドルを超える住宅用不動産に対する従価印紙税率の引き上げ

財務司司長は、1億ドルを超える住宅用不動産に対する従価印紙税率を4.25%から6.5%に引き上げることを提案した。この新しい税率は、2026年2月26日以降に住宅用不動産の売買または譲渡のために締結される、すべての契約文書に適用される。詳細については、従価印紙税及び関連するよくある質問に対する回答(FAQ)をご覧ください。

グループ内の持分譲渡における印紙税免除基準の緩和

財務司司長は、印花税条例(第117章)第45条に基づき、グループ内の持分譲渡に関する印紙税減免の条件を緩和し、対象となる関連法人の範囲を拡大することを提案した。詳細については、グループ内減免措置を参照してください。この提案は、2026年2月25日以降に締結される売買または譲渡証書に適用される。

不動産投資信託(REIT)による非住宅用不動産の譲渡に対する印紙税の免除

財務司司長は、香港での上場を目指す不動産投資信託(REIT)に対し、一定の条件を満たす場合に、非住宅用不動産の取得にかかる印紙税を免除することを提案した。

生計面や経済面、その他の措置(※税制措置以外の予算案より抜粋)

1. AI+発展の推進

  • AI+産業発展戦略委員会(Committee on AI+ and Industry Development Strategy)を設立し、産業転換と発展の牽引。
  • 人工知能研究開発院(Hong Kong AI Research and Development Institute)が年内後半に稼働開始。研究開発及び成果の実用化を支援。
  • 沙嶺データセンター圏区計画を推進。
  • 5,000万ドルを拠出し、公的機関・テック企業・大学によるAI応用の講座、セミナー、競技会を支援し、大学におけるAI関連科目を拡充。
  • 従業員再訓練局(Employees Retraining Board)を「技能向上局(Upskill Hong Kong)」へ格上げし、AI応用を含むスキルベースの研修を提供。
  • 1億ドルを拠出し、先進技術を導入して政府のデジタル・AI化を加速し、公共サービスの高度化。
  • データサイエンス分析を拡充。3月に新たなオンライン・データ対話型プラットフォームを公開しデータ活用。

2. 生命・健康テクノロジー

  • 国際臨床試験学院(International Clinical Trial Academy)を2027年に設立。
  • 中医薬発展基金(Chinese Medicine Development Fund)に5億ドルを追加投入し、戦略的研究・人材育成・国際展開を支援。

3. イノベーション(創科)主導:新興産業の支援・新型工業化の発展

  • 航空宇宙関連企業誘致のため、香港取引所は上場規則を見直し、航空宇宙関連企業の上場を容易化。
  • 香港投資管理有限公司(Hong Kong Investment Corporation)が企業と連携し、マイクロエレクトロニクスの「香港RISC-V連盟」を設立。
  • 具身知能(身体性を持つ人工知能)、量子技術、新材料などの先端分野の研究・応用を推進。
  • 年内に100億ドル規模のイノベーション産業誘導基金(I&T Industry-Oriented Fund)を始動。 研究開発費の税制優遇を見直し・最適化。
  • 新型工業エリート企業育成計画(New Industrialisation Elite Enterprises Nurturing Scheme)を年内に開始。
  • 約2.2億ドルを確保し、香港初の海外国家製造業イノベーションセンターを建設。

4. 北部都会区計画:国際イノベーション・テクノロジー新都市

  • 政府・デベロッパー・テック企業による官民連携を推進。
  • 河套香港園区に追加で100億ドルを投入。
  • 新田科技城(テクノポール)に専属会社を設立し、初期資金100億ドルを注入(香港サイエンスパーク)。
  • 洪水橋産業園有限公司に100億ドルを出資(港深西部鉄道(洪水橋~前海)や北環線)。

5. 長期投資

  • 香港投資管理有限公司は190件超に投資しており、そのうち10社が上場、20社が上場準備中。
  • 投資1ドルあたり8ドル超の民間資本を誘発。

6. 長期投資ファイナンス+の推進

  • オフショア人民元市場における為替取引コスト低減、人民元建て債券発行促進、金利カーブ拡充。
  • 相互接続(コネクト)制度における国債先物、REITの組み入れ、人民元取引カウンターの株式コネクト化を検討。
  • 証券市場改革における複数議決権株(同一議決権規制)、第二上場、T+1決済などを協議。
  • 年内にデジタル債券の発行・決済プラットフォームを構築し、デジタル資産取引・保管業の免許制度を立法化。

7. 貿易・知的財産・物流

  • 用地、補助金、税制(半減または5%など)などの投資優遇パッケージの提供。
  • 知的財産権取引での取得費の税控除、特許評価パイロット、知財学院。
  • 航空・海運・物流におけるスマート物流加速、税制最適化、グリーン船舶の港湾費減免。

8. 観光・文化・スポーツ

  • 観光振興のため、香港旅遊發展局(Hong Kong Tourism Board)に16.6億ドル拠出。
  • 文化遺産保護を目的とした歴史建築保全基金(Built Heritage Conservation Fund)へ10億ドル、その他地方観光、スポーツ振興に重点投資。

9. グリーンテック

  • 5年間の廃棄物削減・リサイクル計画。
  • グリーンテック加速器の検討。
  • EV税制優遇(商用車等は2028年3月まで継続、個人の乗用車は2026年3月を以って終了予定)。

10. 教育・人材

  • 北都大学城整備に100億ドルを融資。
  • 医学院・教育病院整備のため、土地や資源を供与。
  • 建設・保険人材育成に注力。

11. 市民生活支援

  • 中小企業:ブランディング及び国内市場の更新と開拓のためのBUD(Dedicated Fund on Branding, Upgrading and Domestic Sales)基金に2億ドル、補助上限15万ドル。
  • 住宅・非住宅のレート(差餉)減免(課税対象となる個々の居住用・非居住用不動産に課される不動産税額に対し、第1及び第2四半期に最大500ドルを免除)。
  • 社会支援:高齢者医療券、介護サービス券、学生インターン、若者交流等。
  • 公共交通費用補助計画(Public Transport Fare Subsidy Scheme)により、従前は公共交通機関の月額利用額400ドル以上を対象に月額400ドルを上限、2022年5月から月額利用額200ドル以上を対象に月額500ドルを上限として利用額の3分の1の返金補助を継続していたが、2025年6月より月額利用額500ドル以上を対象に月額400ドルを上限として利用額の3分の1の返金補助となっており、廃止に係る言及無。
  • 総合社会保障援助(Comprehensive Social Security Assistance: CSSA)や高齢者手当(Old Age Allowance)、高齢者生活手当(Old Age Living Allowance)並びに障害者手当(Disability Allowance)などの各種社会保障給付額を1ヶ月分追加給付。

12. 土地・住宅・インフラ

  • 公営住宅:2026年以降の5年間で19.6万戸(2026/27年度における土地売却計画に含まれる、鉄道物件開発、市区再建局のプロジェクト、民間開発・再開発計画による)。
  • 民間住宅:上記5年間で年平均約1.7万戸(今後3~4年間で約10万7,000戸の新築民間住宅が供給)。
  • インフラ:建造業創新及科技基金に10億ドル、北部都会区の制度整備。

13. 公共財政・経済見通し

  • 2026–27年度:総支出8,434億、総収入7,652億ドル(これに約1,600億ドルの政府債券発行と約597億ドルの政府債券償還を勘案)により、221億ドルの財政黒字の見通し。
  • 歳出管理:経常支出を段階的に2%削減。
  • 税制:BEPS 2.0対応のクローバル・ミニマム課税により150億ドルの歳入が見込まれる。
  • 国債:中長期債を活用し、財政の安定性を維持。

2026年2月25日付英語原文(IRD : 2026-27 Budget – Tax Measures