香港 M&A

[M&A] 長実とハチソンが合併・再編:不動産と他事業に改組

アジアの大富豪、李嘉誠氏が率いる大型コングロマリット(複合企業)の長江実業とハチソン・ワンポアは9日、合併、事業再編を行うと発表した。非不動産事業を手掛ける「長江和記実業(長和)」と不動産事業の「長江実業地産(長地)」2社を設立する。改組後2社の資産価値は8,000億HKドル(約12兆3,500億円)を超え、香港史上最大規模の企業再編となる。長和は、港湾事業や情報・通信サービス、小売り、建設、エネルギー事業など非不動産事業を行い、長地は、香港、中国本土、海外の不動産事業を手掛ける。

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再編は今年上半期(1~6月)中に完了する見通し。再編に伴う株式の配分は、長実と長和の株式が1対1。ハチソンと長和が1対0.684で、再編完成後、長和株と長地が1対1となる。株式交換比率は、1月7日から前の5営業日期間の平均株価で決めた。また2社とも李氏が会長を兼任する。

9日に記者会見した李会長は「再編は全ての株主にとって利益になる。今年の配当を増やしたい」と述べ、組織再編が株主の利益になることを強調した。

また長江実業とハチソン・ワンポアは香港で登記されている企業だが、再編する2社はタックスヘイブン(租税回避地)として知られる英領ケイマン諸島で設立する。このため「李会長が香港から資産を引き揚げるのでは」との観測が広がった。

李会長は「過去10年間、新たに上場した企業の75%がケイマン諸島など海外に登記している。民間企業だけでなく国有企業もだ。国有企業は移転などしていない」と説明し、「資金引き揚げ説」を否定した。ケイマン諸島での設立はビジネス上のことだと強調した。

■政治リスクを考慮か

ケイマン諸島での設立には李会長が香港の政治リスクを考慮したのではないか、という見方もある。

10日付蘋果日報によると、香港中文大学会計学院の李兆波(サイモン・リー)シニア講師は「李会長はここ数年香港で政治リスクが高まっていることや、一国二制度に変化が見られることなどを考慮した。再編する2社の規模は大きいため、リスクを回避するためにケイマン諸島を選んだ」と分析する。

また香港城市大学(専業進修学院)の宋立功(ジェームズ・ソン)政治アナリストは、「(ケイマン諸島での設立は)李会長一族が香港撤退を考えていることの表れだ」と話している。普通選挙による行政長官選挙の実現を目指す政治改革案が立法会で可決成立する可能性は低く、香港政府の統治も困難になり政治リスクが高まると指摘した。

李会長は香港の政治改革について、「政治改革案が可決成立できなければ香港にとって計り知れない損失になる。政治改革を推し進めることができなければ、香港人は私も含めて全員が敗者だ」と述べている。(NNA.ASIA