タイ 一般ニュース

洪水被害 在タイ日系企業 前例のない規模期拡大

洪水被害が広がっている。日系企業の入居する工業団地が冠水するなど、甚大な損害を被った。10月21日には、在タイ日本国大使館の小島征二大使が、インラック首相や外務大臣に対し、日系企業の支援の措置を申し出るなど大きく働きかけている。盤谷日本人商工会議所(JCC)、ジュトロバンコクセンター、在タイ日本国大使館に経済への影響など話を聞いた。(下面に関連記事)(津田啓子記者)
盤谷日本人商工会議所(JCC)の石井信行事務局長は、「タイ北部、中部の大洪水は、また被害が広がりつつある。日系企業のヒアリングでもはっきりした被害情況を把握しきれていない。現在JCCで取りまとめている最中だ」という。
被害を受けた日系企業の中で、タイでしか部品を生産していない企業もある。その在庫が尽きればサプライチェーンがストップする。マレーシアやインドネシアなどタイ国外への部品調達に切り替えるのは容易ではない。タイから日本、および世界向けの輸出がストップしてしまう可能性があり、経済へのインパクトは世界的に広がりかねない。

これまでも日系企業はバーツ安、リーマンショック、東日本大震災など苦境の中にあっても、タイから撤退せずにがんばってきた。
石井氏は、「タイはまだ元気でありインフラを含め、タイのよさも承知している。今は非常にきつい状況だが、業界同士の情報交換を密にしながら乗り越えてこうという前向きな意識が高い」と話す。
ジェトロバンコクセンターの井内摂男所長は「まだ洪水地域は広まっている。日タイ経済への影響は大きい。当センターでは企業でアクセスできない情報、見えない情報を積極的に発信している。日本企業の相談窓口も設置した」と説明する。
これまで50社以上、70~80県の相談が寄せられているという。問い合わせの中では、初めは「洪水の状況が知りたい」「情報発信をして欲しい」という内容が多かった。

しかし現在では

①貸し工場を探している
②将来の資金操りが心配
③BIOの手続きにおいて、洪水被害にあった場合はどうなるのか

などが主なものになっている。
井内氏は「在タイ日本国大使館、JCCと三位一体で対処していく」と言う。
在タイ日本国大使館の大鷹正人経済部公使は、「相当被害は大きい。今回の洪水で被害を受けた700工場のうち日系企業は450工場を占める。そのうちのかなりの数が中小企業だ。自動車メーカーの操業がストップした。これだけの規模で浸水した日系企業は、かつてない試練を強いられる」と深刻に語る。
同大使館は、タイ政府に対して、この前例のない規模の洪水による被害を受けた企業への支援は通常の対応策ではなく、税制、雇用面において思い切った手を打ってもらうように要請している。やむを得ず生産が出来なくなった企業に対し、従業員の給料支援の負担軽減、資金操りに苦しむ身業には金融面での当面の確保が出来るよう配慮を求めている。
また、タイには保険制度が弱く、大きな課題となっている。
洪水被害後に保険料が上がる、あるいは病院によって保険医療を引き受けない所が出てくることが予想される。
このため同大使館ではタイ政府傘下の保険監督当局である対保険事業奨励管理委員会(OIC)の各保険会社に対し、保険金のあり方、運用の仕方などを責任を持った指導力の発揮を望んでいる。「タイが投資しにくい国とならないよう、ぜひタイの保険制度も見直しの検討として欲しい」と大鷹氏は言う。
洪水被害からの復興、今後の洪水対策については、日本政府も支援していく方針だ。日本の中小企業庁の視察団が10月半ばに来タイし、中小企業に関する情報収集を行っている。同庁では、金融面の支援策を検討中だ。