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[M&A] 李首相が「深港通」に言及:株取引乗り入れ拡大へ

広東省深セン市を訪問していた中国の李克強・首相は5日、深セン証券取引所と香港取引所(HKEX)による株取引相互乗り入れ「深港通」について言及した。昨年11月に始まった香港と中国本土間の初の株取引相互乗り入れ「滬港通」も、同年4月に李首相が構想を明らかにしたことが実現の契機となった。業界は早ければ3月までに香港と本土の株取引相互乗り入れ第2弾が始まるとみている。

李首相は深セン視察時に「滬港通はすでに始まった。次は深港通だ」と述べ、「広東省と香港の協力は金融を優先すべきだ」と強調した。

李首相は昨年4月に海南省で開催された「博鰲アジアフォーラム」での演説で、「上海と香港の株式市場の取り引きで、相互乗り入れを確立する」と表明。上海と香港の株取引相互乗り入れ「滬港通」は、その約7カ月後の昨年11月17日に始まった。

深港通については、HKEXの李小加(チャールズ・リー)最高経営責任者(CEO)もかねて本土との株取引相互乗り入れの次の一手として実現を目指す可能性を示唆していたほか、深セン証券取引所も実現に向けてすでに動き出しているとの報道もある。

香港政府の梁振英行政長官は6日記者会見し、「香港は国際金融センターであり、本土の金融開放が進む中で特殊な役割を担っている」と述べた上で、「深港通は香港の成長と本土の金融開放に有利に働く。中央政府と連携してできるだけ早く実現させたい」と積極姿勢を示した。

また官営放送のRTHKが6日伝えたところによると、HKEXは「HKEXと深セン証券取引所は常に良好な関係にある。今後(深港通に関して)大きな進展があれば発表する」と明らかにしている。

■実施時期は未定

李首相は深港通の実施時期などについては言及していないが、業界では先に始まった滬港通が安定運営ができていることもあり、「第1四半期(1~3月)」や「下半期(7~12月)」など、さまざまな憶測が飛び交っている。

6日付信報によると、中国平安証券(香港)の関係者は「深港通は第4四半期(10~12月)には始まる」と予測する。

シティグループ香港証券サービス部門の責任者も「深港通の実施は市場関係者の予測の範囲内」とした上で、「法整備や投資業界の夏季休暇などを考慮して、実施は下半期が適切だろう」と述べている。

また本土系シンクタンクである盤古智庫(パンゴール)のアナリストは「早ければ3月5日からの開催が予定されている第12期全国人民代表大会(全人代=国会)第3回会議の前に実現する可能性もある」と指摘。

香港証券学会も「深港通のハード面の準備は3カ月未満で整うだろう」とし、実現までに7カ月かかった滬港通よりも早く実施できるとみている。

■盛り上がりはどうか

昨年11月に始まった香港と本土間初の株取引相互乗り入れ「滬港通」は、両取引所の株取引活性化などが期待されていた。ただ実際には本土投資家の参入条件が高いことや香港株式銘柄に対する知識不足から、取引は当初予測よりも低迷している。

1月5日の滬港通を通じての香港株式への投資額は1日の上限投資額105億人民元(約2,014億円)に対して、17億3,000万元だった。滬港通開始初日の17億7,000万元に次ぐ大きな投資額となったが、上限投資額のわずか16.5%にとどまっており、市場の活性化には程遠い状況だ。

ただ深港通に関しては滬港通よりも市場の活性化につながる可能性が高いとの指摘もある。

香港証券学会会長で金融サービス業界選出の立法会議員、張華峰(クリストファー・チュン)氏は「深セン市は香港に近く、深セン市民は香港株式に対する知識がある。深港通が実現すれば深センからの資金が多く香港に流入するだろう」と予測する。

また深センに上場している銘柄は本土の民間企業が多く、香港人にもよく知られた企業が多い。国有企業の上場が多い上海と比べて、香港人による本土への投資でも深センの方が親しみがあるとの指摘もあるようだ。

一方、閉鎖的な市場のままでは活性化につながらないとの懸念もある。

6日付明報によると、投資会社の以立投資管理(VLアセットマネジメント)の林少陽(ビンセント・ラム)社長は、「投資家にとって新しい投資窓口ができるのは良い事」と述べた上で、「国際的なファンドの参入がなければ閉鎖的な市場になってしまい、結果的に香港から資金が流出してしまう可能性もある」との懸念を明らかにしている。(NNA.ASIA