中国 中国会計税務

[中国税務] 税金以外に徴収される諸費用(1)

中国の現地法人に係る諸税としての増値税や企業所得税、個人所得税に関しては、税率や納付の実態を把握されているかと思いますが、地方税務局では、普通税としての上記税金以外にも多くの税金や諸費用を徴収しています。

(一)労働組合経費

企業は、労働組合運営費(労働組合経費)として、現地法人給与費用総額の2%を拠出することが定められています。また、企業から拠出した経費は全てが企業の労働組合の運営に用いられるのではなく、企業労働組合から拠出経費額の40%を労働組合協会(中国総工会)へ納付する義務があります。この、協会への支払部分について、現在では、企業の労働組合を通じず、地方税務局が代行して企業からの徴収を行っており、税金と同じような形式で納付が求められています。
なお、現地法人で労働組合が存在しない企業もあるかと思いますが、この場合には、労働組合準備金として、現地法人給与費用総額の2%を地方税務局へ納付する義務があります。なお、現地法人で労働組合を設立した場合には、納付した労働組合準備金のうち、企業労働組合運営費部分60%が返還されることになっています。企業は、労働組合の有無に関わらず、従業員給与総額の2%が労働組合経費として負担をすることになります。

中国の労働組合
(1)組合結成義務
労働組合の有無に関わらず、現地法人では費用負担が求められる旨を紹介しましたが、労働組合結成の義務について記します。国家レベルの法律(中国労働組合法)では、「従業員が有している労働組合結成の権利を制限してはならない」とのみ規定されており、組合結成は義務化されていません。(江蘇省の行政法規では、法人設立後1年以内の労働組合結成を企業に課しており、当該法規に基づいて労働組合準備金が課されているものと思われます。)なお、労働組合準備金は適切に納付した上で、労働組合を組織しない状況に対しては、組合非結成に対する直接的な罰則条項が存在しないため、現状では大きな問題にならないものと考えます。

(2)労働組合費用の利用
労働組合に拠出した費用の管理に関しては、企業に責任はなく、労働組合が独立して決算や監査を実施します。労働組合の収入としては、企業からの経費拠出以外にも、組合参加従業員の会費や労働組合協会からの補助等もあります。
また、労働組合の支出に関しては、法律で「従業員福利や労働組合活動」と定められていますが、具体的な内容としては以下のようになります。
余暇活動も、労働組合の経費で企画することが認められているため、労働組合と協調することで、忘年会や食事会といった行事を、会社の福利厚生として支出するのではなく、労働組合活動の一環として行うことも可能となります。

(3)日本との違い
日本の労働組合は、労働条件改善や労働者の地位向上が目的となりますが、中国労働組合法では「従業員を組織して、理想・道徳・文化・規律のある従業員育成を行い、生産任務や職務遂行の完遂に努力する。」といった生産性向上の目的も含まれており、一概的に経営者側と対立する組織ではないことが読み取れます。労働組合を上手に利用した従業員管理といった方針を検討頂くことも可能な状況にあります。