中国 中国会計税務レポ

[中国会計税務レポ] 営改増全面展開後の増値税 – 取り扱いの明確化 (2)

昨年5月1日の営業税を増値税に移行する税制改革『営改増』の全面実施から1年以上が経過しました。前回に続き、営改増の全面実施後に公布された規定の概要を紹介します。

1. 金融、不動産開発、教育補助サービス等の増値税政策明確化

営改増に関連して、金融、不動産開発、教育補助サービス、生活サービスに対する増値税の課税上の取り扱いを明確化するための補足規定が定められました。うち、課税サービスの区分に関する主な規定は以下の通りです。

  • 飲食サービス業でテイクアウト(中国語表記:外売)食品を販売する場合、飲食サービス(6%)として増値税を納付する。
  • 旅館、ホテル、リゾートホテルなどの宿泊施設が提供する会議場および付帯サービス活動は、「会議展示サービス」(6%)として増値税を納付する。
  • 観光地のロープウェイ、フェリー、電動カート、遊覧船などを運行することによる収入は、「文化体育サービス」(6%)として増値税を納付する。
  • 警護輸送サービスの提供は「安全保護サービス」(6%)として増値税を納付する。
  • 不動産管理サービス企業が提供する内装サービスは「建築サービス」(11%)として増値税を納付する。
  • 建設施工設備をリースして他人の使用に供すると共に操作人員を配備した場合は、「建築サービス」(11%)として増値税を納付する。

関連規定:財税[2016]140号、国家税務総局公告2016年第86号

2. 輸入増値税の仕入税額控除の管理強化

税関輸入増値税専用納付書(略称「税関納付書」)を用いた納税回避の犯罪行為に対抗するため、税関納付書の検査照合を厳しくすることを以って輸入増値税の控除に対する管理強化を図りました。

  • 増値税一般納税人は、貨物を輸入した際に企業名称を正確に記入し、税関納付書上の企業名称と税務登記の企業名称を一致させる。
  • 税務機関は輸入貨物の属する増値税仕入税額控除範囲の税関納付書の情報と税関が収集した納税情報の検査照合を行い、一致が確認された後に、税関納付書上に明記されている増値税額を仕入税額控除することができる。
  • 照合が一致しなかった場合には、仕入税額控除は一時停止し、税関納税票と納税人の実際輸入業務情報の一致が確認された後に、仕入税額控除を行う。

関連規定:国家税務総局公告2017年第3号

3. 増値税率の簡素化(税率13%の廃止)

2017年7月1日より、物品販売のうち13%の増値税税率が取り消され、以下の品目の増値税税率は11%に減税されました。

  • 農産品(穀物を含む)、水道水、暖房、石油液化ガス、天然ガス、食用植物油、冷房、熱湯、ガス、民用石炭製品、食用塩、農機、飼料、農薬、農業用フィルム、化学肥料、メタンガス、ジメチルエーテル、図書、新聞、雑誌、音響製品、電子出版物。

また、輸出還付率(注1)も11%に調整されています。ただし、2017年8月末までに輸出する物品については、経過措置が設けられ、対外貿易企業が13%の税率で購入した商品および製造企業の製品については、13%の輸出還付率が適用されます。なお、輸出日は輸出貨物の通関申告書に記載された日を以って決定されます。
これに伴い、増値税納税申告表も改定され、2017年8月1日から適用されています。

関連規定:財税[2017]37号、国家税務総局公告2017年第19号

(注1) 中国語表記は出口退税率。物品の輸出に対する増値税率は0%が適用されるため、輸出物品にかかる仕入増値税は還付されることになるが、物品の品目によってその還付率が異なり、仕入増値税の税率とは必ずしも一致しない。37号通知の対象となる関税分類番号(HSコード)は通知にリストが添付されている。

4. 農産品を購入した場合の仕入税額控除

一般納税人から増値税専用発票または税関納付書を取得した場合は、発票または納付書上に明記された増値税額を仕入税額とし、小規模納税人から増値税専用発票を取得した場合および農産物販売発票または購入発票を取得した場合は、発票上に明記された金額と11%の控除率を以って仕入税額を算定するとされています。なお、適用税率が17%の物品の生産、販売又は委託加工用農産物を購入する場合は従来の控除制度を維持するとされています。

関連規定:財税[2017]37号