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中国・粤港澳大湾区における個人所得税優遇政策について

中国華南地域の経済圏構想である粤港澳大湾区(「広東・香港・マカオベイエリア」)の人材誘致政策の一つである個人所得税優遇政策について、今年1年間に限る優遇政策が発布されました。昨年まで自由貿易試験区内に登記された企業に勤務する外国籍高級管理人材に限定されていた個人所得税優遇政策が珠江デルタ9市[*1]に適用されることは今年3月にすでに発布されていました[*2]。今回、広東省財政庁と広東省税務局による通知[*3]の概要は以下の通りです。

1. 対象人材

香港・マカオ永久居民、香港入境計画(優秀人材・専門人材・起業家対象)を取得した香港居民、台湾居民、外国国籍人員、国外長期居留権を取得した帰国留学生及び海外華僑で、以下の条件の一つに符合する者。

  • 国家、省、市の重大人材工程入選者。広東省「人材優粤カード」取得者。
  • 外国人工作許可証A類、若しくは外国人ハイエンド人材確認書の取得者。
  • そのほか国家・省・市の認定したその他の国外ハイレベル人材。
  • 国家、省、市の重大イノベーションプラットフォームにおける科学研究チームメンバー。
  • 大学、科学研究機構、医院等関連機構の科学研究技術チームメンバー。
  • 我が省の重大発展産業、重点領域で就業・創業する技術技能幹部と優秀管理人材。
  • 珠江デルタ9市で認定するその他の特殊専門知識を有する不足人材。

※ハイエンド人材と不足人材の具体的な認定標準及び取扱い弁法は、各市により当地の実際状況に応じて制定するとしています。

2. 優遇される所得の範囲

《中華人民共和国個人所得税法》に基づく以下の所得が、優遇の範囲となります。

  1. 給与・賃金所得
  2. 労務報酬所得
  3. 原稿料
  4. 特許権使用料
  5. 経営所得
  6. 入選人材工程或は人材項目で獲得した補助金性質の所得

3. 優遇を享受する方法

上記対象人材が取得する上記範囲の所得を、珠江デルタ9市において既に納税した個人所得税がその課税所得額[*4]の15%を超える税額部分について、珠江デルタ9市の人民政府より財政補助を与えるとしています。なお、この財政補助の取得時、個人所得税免税としています。税額は一旦納付させ、年度終了後に申請を受け付け、市の財政から補助金を支給する方法は、元の自由貿易試験区での優遇時の方法を踏襲しているものと思われます。

4. 施行日

2019年1月1日施行とし、1年の暫定運用としています。珠江デルタ9市は本通知に基づき7月末までに各市の状況に応じた弁法を省に報告し、省人力資源と社会保障庁や省税務局により統一的な人材認定標準と補助金支給方法で実施することとされています。

5. 申請に関わる行政機関

ハイエンド人材は、各市の科技(外専)部門により認定、不足人材は、人力資源と社会保障部門により認定、財政部門が補助金申請の受理と支給を実施し、人力資源社会保障、税務部門をリードして審査業務を行うとしています。申請提出は、本人或は企業より行うこととし、本通知は企業からの申請を奨励するとしています。

  • [*1] 珠江デルタ9市 : 広州市、深セン市、珠海市、佛山市、恵州市、東がん市、中山市、江門市、肇慶市
  • [*2] 《財政部 税務総局 粤港澳大湾区個人所得税優遇政策についての通知》(財税[2019]31号)
  • [*3] 《粤港澳大湾区個人所得税優遇政策徹底実行についての通知》(粤財税[2019]2号)
  • [*4] 課税所得とは、収入額から基礎控除、社会保険等を控除した後の課税対象所得を指す。外国人は以前の個人所得税に規定されていた家賃や子女教育費等の免税項目について、2019年1月1日より改定後の個人所得税で、向こう3年間のみ過渡期措置として継続が認められている。

※各地の運用状況が異なる場合があります。各所在地にて再度ご確認ください。