シンガポール 進出

シンガポール進出で日本企業が最初に検討すべき5つの論点(その1)~シンガポール進出の全体像と5つの論点~

はじめに

シンガポール進出を検討する日本企業は年々増加しています。法人税率17%、整備されたビジネスインフラ、東南アジアへのゲートウェイとしての立地——こうしたメリットは広く知られるようになりました。

しかし実務の現場では、「会社設立は順調に終わったが、数年後の税務調査で想定外の指摘を受けた」「日本本社の連結決算で子会社の処理が問題になった」といった相談が後を絶ちません。

問題の多くは、進出「後」ではなく進出「前」の検討不足に起因しています。設立手続きそのものは比較的容易なシンガポールだからこそ、税務・会計・ガバナンスの論点が見落とされがちです。

本記事では、シンガポール進出時に日本企業が最初に検討すべき5つの論点を、実務視点から整理します。目的は「正解を示すこと」ではなく、読者の皆さまが「自社にはどのようなリスクや検討事項があるか」を把握し、適切なタイミングで専門家に相談できる状態になることです。

なお、具体的な税務判断は個別の事実関係により異なります。本記事は一般的な論点整理であり、個別案件への適用には、専門家へのご相談が必要です。

シンガポール進出の全体像(前提整理)

日本企業がシンガポールを選ぶ主な理由

シンガポールが日本企業に選ばれる理由は、大きく3つに整理できます。

税制面の優位性

法人税率17%は、日本の実効税率(約30%)と比較して低く、一定の条件を満たせばさらに軽減税率の適用を受けられる場合があります。また、キャピタルゲイン(株式譲渡益など)が原則非課税である点も、グループ再編やM&Aを視野に入れる企業にとって魅力となっています。

地理的・戦略的な立地

ASEAN諸国への統括拠点として、あるいは中国・インドを含むアジア全体をカバーする地域本社として、シンガポールを位置づける企業は少なくありません。

ビジネス環境の透明性

英語が公用語であること、法制度が整備されていること、汚職指数が低いことなどから、日本企業にとって比較的「安心して進出できる国」という認識があります。

ただし、これらのメリットは「適切な設計と運用」が前提です。税制優遇も、実態が伴わなければ事後的に否認されるリスクがあります。

会社設立だけでは終わらない理由

シンガポールでの会社設立手続き自体は、書類が整っていれば数日で完了します。設立代行業者も多く、「設立は簡単」という印象を持たれる方も多いでしょう。

しかし、設立後に以下のような問題が顕在化するケースが実務では頻繁に見られます。

  • 日本本社の関与の仕方により、シンガポール子会社ではなく日本本社に課税される(PE認定)
  • 親子間の取引価格が税務上の問題となる(移転価格税制)
  • 会計処理や機能通貨の選択が、日本側の連結決算で修正を要する
  • 監査時に契約書や証憑の不備を指摘され、過年度修正が発生する

これらの問題は、設立時点では見えにくいものです。しかし、税務調査や監査、あるいは日本本社の内部監査で発覚し、対応コストが膨らむことになります。

「設立後に考えればよい」ではなく、「設立前にどこまで設計できるか」が、後々のリスクを左右します。

以上を踏まえ、次回以降、シンガポール進出時に日本企業が最初に検討すべき以下5つの論点を、実務視点から整理します。

論点①:税務(PE)

Permanent Establishment(PE)とは何か、日本本社がシンガポールでPE認定された場合の影響等を整理します。

論点②:人件費・リチャージ、源泉税、GST

日本本社とシンガポール子会社の人件費の流れや、リチャージ(親会社が立て替えた人件費を子会社に請求すること)について、源泉税やGSTの論点を交えながら整理します。

論点③:会計・機能通貨・連結

シンガポールの会計基準や機能通貨(企業が営業活動を行う主たる経済環境の通貨)について、また、日本親会社の連結で問題になる点について整理します。

論点④:監査・ガバナンス

監査免除の要件や監査で見られるポイント、監査人変更について整理します。

論点⑤:進出前にやるべき実務準備

グループ内取引に関する契約書の整備、会計事務所に相談すべき事項等を整理します。

5つの論点を整理した後に、よくある質問(FAQ)も掲載予定です。

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「自社のケースではどの論点が重要か」「進出前に何を準備すべきか」など、個別の状況に応じた論点整理をサポートします。営業目的ではなく、判断に必要な情報を整理することを目的としたミーティングです。日本企業のシンガポール進出に精通した担当者が対応いたします。

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