シンガポール その他

マレーシア・JE-SEZへの進出までの道のり

以下は、日系企業がJS-SEZ(Johor–Singapore Special Economic Zone)に進出する場合の実務フローを、日本から新規進出するケース、すでにシンガポールに進出済みの日系企業が拡張するケースに分けて、問い合わせ窓口/誰にコンサルを依頼すべきかまで含めて整理したものです。

1.日本からJS-SEZに「新規進出」する場合の流れ

① 初期検討フェーズ(日本国内)

この段階では、マレーシア当局に直接行かないのが一般的です。もちろん、具体的な制度や立地の検討段階ではInvest JohorやMIDAへの問い合わせが必要になる場合があります。

主な検討事項

  • 事業目的(製造/SSC/IT・DC/物流など)
  • なぜ「シンガポール単独ではなくJS-SEZか」
  • 投資規模・人員規模・タイムライン

相談先

日本国内

  • JETRO(日本貿易振興機構)
  • 日系会計事務所・コンサル(ASEAN進出経験必須)
  • 取引銀行(MUFG、SMBC、みずほ等)

② 制度・立地の具体化フェーズ(SG / Johor)

ここからマレーシア政府機関の公式窓口への相談が始まります。

主な問い合わせ先(一次窓口)

  • Invest Johor(IMFC-J)
    → ジョホール州のワンストップ投資窓口
  • MIDA(Malaysia Investment Development Authority)
    IMFC-Jは、IRDA、MIDA、Invest Johorの3機関が共同で運営しており、それぞれの強みを活かして以下のように連携しています。
  1. IRDAが地域開発やインフラ整備を主導し、投資家が必要とする基盤を提供。
  2. MIDAが連邦レベルでの政策策定やインセンティブ管理を担当し、国際的な投資誘致を推進。
  3. Invest Johorがジョホール州の現地窓口として、投資家に対する直接的なサポートを提供。
  4. IMFC-Jがこれらの機関を統括し、投資プロセス全体を一元化して管理。

ここで整理する内容

  • JS-SEZの対象ゾーン(どこに立地するか)
  • 対象インセンティブ(5%法人税等)の該当可否
  • 必要なライセンス・製造認可

(注)IMFC-J、IRDA、MIDAの役割分担

① IMFC-Jの役割

IMFC-Jは、JS-SEZ(Johor-Singapore Special Economic Zone)における投資促進の「司令塔」として機能し、以下の役割を担っています。

  • 投資プロセスの一元化:
    • 投資申請、承認、投資後のフォローアップ、再投資支援など、投資に関するプロセス全体を一元的に管理。
    • 各種行政手続きの簡素化と迅速化を実現し、投資家が複数の機関を個別に訪問する必要を排除。
  • 投資家支援の窓口:
    • 投資家に対し、ジョホール州の経済、政策、エコシステムに関する戦略的な洞察やカスタマイズされたソリューションを提供。
    • 高度なサポートを通じて、投資家のプロジェクトが計画から実行までスムーズに進むよう支援。
  • 連携のハブ:
    • IRDA、MIDA、Invest Johorなどの関連機関と連携し、投資家に対して包括的なサポートを提供。

② IRDA(Iskandar Regional Development Authority)の役割

IRDAは、ジョホール州のイスカンダル地域における開発を統括する機関であり、以下の役割を果たします。

  • 地域開発の計画と実行:
    • イスカンダル地域のインフラ整備や都市計画を主導し、JS-SEZの基盤を整備。
    • 高付加価値産業(先端製造業、デジタル技術、持続可能な開発など)の誘致を支援。
  • 投資プロジェクトの実現支援:
    • 投資家が直面する課題を解決し、プロジェクトの実現をサポート。
    • 投資家が必要とするインフラやサービスを計画段階から提供。

③ MIDA(Malaysian Investment Development Authority)の役割

MIDAは、マレーシア全体の投資促進を担う連邦政府機関であり、以下の役割を果たします。

  • 投資政策の策定と実施:
    • マレーシア全体の投資政策を策定し、JS-SEZにおける税制インセンティブ(法人税5%、知識労働者向け個人税15%など)の適用を管理。
  • プロジェクトの実行支援:
    • IMFC-Jと連携し、プロジェクトの実行を円滑化するためのTRACK(Project Implementation and Facilitation Office)を運営。
    • 投資家が必要とするライセンスや認可の取得を支援。
  • 国際的な投資誘致:
    • マレーシア全体の投資環境を国際的にアピールし、JS-SEZへの投資を促進。

④ Invest Johorの役割

Invest Johorは、ジョホール州政府の投資促進機関として、以下の役割を担います。

  • ジョホール州の投資促進:
    • ジョホール州の投資環境を国内外にアピールし、投資家を誘致。
  • 現地サポートの提供:
    • 投資家に対し、ジョホール州の政策やエコシステムに関する詳細な情報を提供。
    • 投資家がジョホール州での事業を円滑に開始できるよう、現地でのサポートを提供。

⑤ 法人設立・認可フェーズ(マレーシア)

実務作業

  • マレーシア法人設立
  • 製造ライセンス/MSC/GSH認定等
  • インセンティブ申請

この段階で必須の専門家

  • マレーシアの会計・税務・会社秘書役事務所
  • 日系またはBig4(日本本社対応経験が重要)

具体的な専門家の選定にあたっては、以下の基準が参考になります。

  • ASEAN進出経験が豊富で、現地規制や税制に精通している。
  • 税務ストラクチャリングやインセンティブ活用の実績がある。
  • 日本本社との連携経験があり、日本の税制や企業文化を理解している。
  • 国際税務プロジェクト経験がある。
  • 対象業界(製造業、IT、物流など)に特化した知見を持つ。
  • プロジェクトマネジメント能力が高く、複雑な案件を統括できる。
  • ESG対応の知識を持ち、持続可能な投資計画を支援できる。

⑥ 人材・稼働開始フェーズ

実務作業

  • 駐在員・ローカル採用
  • EP(就労ビザ)/PVIP(プロジェクトベースの就労・滞在ビザ)/DE Rantau等の検討
  • 日本本社・現地との役割分担明確化

2.「シンガポール進出済み日系企業」がJS-SEZへ展開する場合

実務上はこちらのケースが圧倒的に多いものと思われますが、以下の手順で進められることが想定されます。

① シンガポールHQ内での内部検討

検討内容

  • SG法人のどの機能をJohorに移すか
    • 製造
    • SSC/BPO
    • DC/IT運用
  • SG側に残す機能(HQ・契約・IP等)

※ここで、PE、TP、GSTにかかる論点(前述)が必ず出てきます。

② シンガポール側の公式窓口

問い合わせ・相談先

  • EDB(Economic Development Board, Singapore)
  • 既存のEDB担当官

EDBの役割

  • SG HQとしての位置づけ整理
  • Johor展開がSG拠点の「空洞化」ではなく、機能高度化であることを整理

③ Johor側との並行協議

Johor側窓口

  • Invest Johor(IMFC-J)
  • MIDA Johor Office

ここでの焦点

  • SG HQ × Johor Ops の役割分担
  • 税制インセンティブ適用可能性
  • 越境人材・物流の実務

※SGとMYの当局を“同時に”見る必要がある。

④ 税務・法務ストラクチャリング(最も重要)

必須の専門家

  • Big4(SG+MY両方)
  • 日系会計事務所(日本本社説明用)

具体論点

  • PE(恒久的施設)リスク
  • 移転価格(TP)
  • GST / SST
  • 日本側税制(タックスヘイブン対策等)

※この工程を飛ばすと、後で必ず問題になります。

⑤ 実装・移管フェーズ

  • Johor法人設立
  • 段階的な機能移管
  • 価格・契約・人事の調整