
シンガポール
事業撤退
シンガポール・休眠会社(Dormant Company)
目次
1. ACRA(会社法上)の休眠会社
定義
会計期間中、一切の会計取引がない会社を「休眠会社」と見なします。わずかな利息収入なども対象です。
要件(適格休眠会社=Dormant Relevant Company)
上場企業やその子会社ではない
会計年度末における総資産が S$ 500,000 以下であること
会計取引がないこと(注1)→ この場合、財務諸表の作成・会計監査が免除される
(義務として残るもの:
ACRAへの年次報告(Annual Return)の提出義務は免除されない
ただし、一定条件を満たす場合は「簡易年次報告(Simplified Annual Return)」で対応可能)
(注1)
会計取引には、売上・仕入・利息収入・投資収益などが含まれます。
ただし、次のような項目は会計取引に含まれません。
A) 登録住所の維持費
B) 登録料や官庁への罰金の支払い
C) 会社秘書役や監査人の選任
D) 会計帳簿や法令遵守のための維持活動
免除措置
監査(Audit)および財務諸表の作成が免除されることがあります
ACRAへの年次報告(Annual Return)は必要ですが、FYEから7か月以内に提出すればよく、一定要件下では「簡易年次報告(Simplified Annual Return)」が可能です
2. IRAS(税務上)の休眠会社
定義
対象となる課税年度において、事業活動を行わず、収入も一切発生しない会社。
銀行利息・配当・不動産収益などを保有している場合は休眠と認められません。
したがって、ACRA上は休眠でも、IRAS上では休眠扱いとならないケースもあります。
休眠会社としての取扱い:
原則として、休眠会社であっても Form C-S / C / C-S Lite の提出義務は残ります。
ただし後述の「免除申請(Waiver)」が承認された場合は申告義務を免除されます。
税務申告要件
毎年11月30日までに「Form C S / C S (Lite) / C」が必要(財務諸表の提出不要)
申告免除(Waiver)要件
- 休眠状態であること
営業活動を行っておらず、収入が一切ない - 投資収益を保有していないこと
銀行利息・配当・不動産収益などがある場合は不可 - GST登録をしていないこと
既に登録している場合は抹消が必要 - 今後2年間、事業を再開する予定がないこと
将来的に収益発生予定がある場合は申請できない - 過去年度の申告義務をすべて完了していること。
myTax Portal経由で申請し、21日以内に過去年度の申告を完了しないと却下されます。
いったん承認されれば、以後の申請は不要です。
免除の手続
申請方法:myTax Portalからオンラインで申請
IRASの審査:過去の申告や会社状況を確認し、条件を満たせば承認
承認後:翌年度以降、法人税申告義務が免除される
注意点:事業再開や収入発生があれば、1か月以内にIRASへ通知し、再び申告義務が発生
再開時
業務開始や収入発生があれば、1か月以内にIRASへ通知し、申告義務が再開されます
3. コーポレートガバナンス上の留意点
会社秘書役(Company Secretary)は、会社設立6か月以内に任命し、休眠中も継続してその存在を維持する必要があります 。
RORC(Register of Registrable Controllers)の制度は2025年6月以降に導入され、休眠会社でも管理・更新義務があります(変更時にBizFile+で更新)。
AGM(株主総会)や年次報告書の提出義務は免除される場合もありますが、「適格休眠会社」であることをBizFile+でチェックボックスにて確認する必要があります
まとめ
区分 | 以前の説明 | アップデート事項 |
---|---|---|
定義(休眠会社) | 会計取引がない、または収入がない | ACRAとIRASで基準が異なる点を明確化 |
ACRA対応 | 休眠で監査・年次報告免除 | 適格休眠会社の資産閾値明記(S$500k)・Simplified AR |
IRAS対応 | 申告免除可能 | Waiverの条件・オンライン手続の詳細・再開通知義務 |
ガバナンス | 旧情報のみ | 会社秘書義務・RORC対応・AGM/AR簡略化の手続強調 |
- ACRAの休眠要件:会計取引なし(ただし維持費・登記料等は除外)。資産500,000ドル以下であれば財務諸表作成・監査も免除。
- IRASの休眠要件:営業活動も投資収益もゼロであること。
- 税務申告免除の条件:休眠+投資なし+GST登録なし+事業再開予定なし+過去年度申告済。
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