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香港でタックスヘイブン対策税制といえば、来料加工のことも触れないわけにはいきません。基本的に香港法人特有のローカルなトピックですが、その解釈によって結論が180度変わってしまうことや、それによって多額の追徴課税されるリスクがあること、来料加工形態で進出した日系企業の数も数千社にも上ると考えられていることから、その影響の大きさから、日本でもよく話題になるトピックです。まずはなにが論点なのかということを簡単に説明し、その上で最近の状況についてまとめてみたいと思います。



90年代から香港法人と広東省との間で広東省型来料加工という形態が急速に普及しました。当時中国では外資企業による法人設立が事実上不可能でしたが、広大な土地と低賃金かつ豊富な労働力があり、中国の地方政府レベルでは工場の誘致をしたいと考えていました。一方、香港でも当時賃金が高騰していたこともあり、中国への工場進出する方法を考えていました。そしてお互いの利害を一致させるために考え出した方法が広東省型来料加工でした。

その方法はまず地方政府が中国法人を作り、その中国法人が中国工場を運営します。香港法人はこの中国法人に原材料を輸出して、加工費を払って加工してもらい、製品を輸入する。ここで普通の委託加工と比べて広東省型来料加工での特殊な点は、この中国法人は特別な技術等は持っていないというところです。地方政府が誘致のために作っただけですから。つまり、実際の工場運営に際しては、香港法人側から相当の技術支援や経営管理の支援をしてもらわなければこの形態は成り立たないのです。その結果、事実上は中国法人の経営は香港法人がほぼ全て握るようになり、あたかも中国工場が香港法人の直轄工場かのような形になることが多いのです。地方政府はその他にもさまざまな優遇措置を設けて来料加工形態での工場誘致を進めました。この動きに多数の日本企業も追随し、香港に法人設立して来料加工形態で中国に進出して、製造コスト削減の恩恵を享受したのです。メデタシメデタシ。

のはずが、この特殊な形態がタックスヘイブン税制の条文解釈を巡って争いを生じることになります。この来料加工形態の香港法人は、形式面だけみてみると、基本は法人相手に買って売ってをしてるだけですから卸売業になります。加工費の支払がある分だけ変わってますが、これも日本標準産業分類では製造問屋という区分になり、やっぱり卸売業です。一方実質面をみたらどうでしょうか?中国法人は形式的には別法人とはいえ、事実上経営を握っているわけですし、加工費等の管理料以外の製造損益は実質的に香港法人が負担しているわけですから、その実質を重視すれば香港法人は製造業と言えるのではないでしょうか?

この来料加工は卸売業か製造業かという論点が、そのまま納税者側の主張と国税側の主張の根本になります。なんでこんなくだらないことで?とお思いでしょうが、タックスヘイブンの適用除外要件が卸売業と製造業で違う条件となっているので、これは重要なところなのです。ちなみに卸売業だと認定されると一般的に適用除外要件を満たすことができますが、製造業だと認定されればまず適用除外要件を満たすことはできません。

進出当初はほぼ全ての会社が卸売業として適用除外で申告していたと思われますが、05年頃から国税側が製造業であるものとして更正処分をするケースが散見されるようになりました。国税不服審判所も含め係争中であるケースは相当数あると思われますが、現状では国税不服審判所の裁決事例として07年に1件、地裁判決が09年に1件公表されただけで、いずれも国税側の主張が認められています。また、争うとなると時間もコストもかかることから、あきらめて修正申告に応じたケースも少なからず増えてきています。

ただし金額も多額で社会的な影響の大きい船井電機事案がまだ地裁で係争中であることから、最終的にどのような形で結論が出るのかについてはまだしばらく先になると思われ、当面の間は来料加工の香港法人は不安定な状態に置かれ続けることになります。しかし、この間も国税側は類似事例についても毅然と更正処分をしてきているようですので、対応に頭を悩ませる状況がしばらく続きそうです。

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