香港 国際会計税務・相続

[タックスヘイブン] (4)ペーパーカンパニーなのに合算課税なし!?

今どこでこの記事を読んでるんでしょうか?きっと大方の読者はソファーに転がってバナナでも食べながらリラックスして読んでるんでしょうねえ。そんなときに堅い話だなんて、気が利かない。細かい要件なんて見るだけで気分が悪くなるから書かないで!という読者が多いのでは?と今回は勝手に都合良く解釈して、イメージだけで分かるテーマでいきましょう。いやいや、けして条文調べに飽きてきたわけではありませんよ。

香港は法人税が低いので、日本の居住者が香港で法人を作るとほぼ自動的にタックスヘイブン税制の対象となり、香港法人の利益は日本でも合算課税されてしまいます。ただし適用除外の四要件を全て満たす場合には合算課税はしませんよ、というのがタックスヘイブン税制の基本的な仕組みでした。そしてこの適用除外の要件として香港に法人を作ることの合理性を求めていますので、いわゆるペーパーカンパニーの場合は無条件でタックスヘイブン税制の対象となってしまうのです。つまり、香港法人がペーパーカンパニーであって、しかも利益がでているのならば、それは日本で合算課税の対象となると考えて間違いないでしょう。制度の仕組み的には、これで合算課税されないなんて、有り得ない。

しかし、利益の出ているペーパーカンパニーでも、日本での合算課税対象額が無い場合があるのです。そんなバナナ?

例えば、日本法人が100%子会社として香港法人を作り、その香港法人が100%子会社として中国法人を作った場合。この中国法人が利益が出るようになり、香港法人に1億円の配当をします。ここで香港法人がただ中国法人の株式を持っているだけのペーパーカンパニーだとしたら?

これまでの私の説明からしますと、タックスヘイブン税制の対象になって合算課税されてしまいそうですよね。ところが、このケースでは合算課税されません。なぜでしょうか?それは、「子会社からの配当については合算課税の対象としない」という条項があるからです。つまり、この香港法人自体はタックスヘイブン税制の対象にはなるけれど、子会社からの配当金額については、ある政策的な理由によって合算課税の対象外にしますよ、という例外規定があるので最終的な合算課税額は無い、ということになるのです。

なぜわざわざこんな例外規定を作る必要があったのでしょう?このような規定はもともとなかったのですが、ある別の税制改正に関連して平成21年度税制改正にて新設されました。その税制改正が、「外国子会社配当益金不算入制度」の創設です。これは簡単に言うと、日本法人が外国子会社から受ける配当については法人税を課税しませんよ、という制度です。これまでは外国子会社から配当を受けると日本で40%もの法人税を取られてしまうので、どの会社も日本に配当してこない、という問題意識から作られたものです。

さあ、「外国子会社配当益金不算入制度」と「子会社からの配当については合算課税の対象としない」例外規定とのつながりがピンときたでしょうか?おおもとの法人税の改正で、日本国は外国子会社からの受ける配当については法人税を課税しないと決めたのです。この例外規定を設けないと合算課税されて法人税が課税されてしまう結果になってしまいますから、そのバランスのために設けられたのです。実に気が利いてますね。

従って現在は、単なる持株会社としてのペーパーカンパニーならば合算課税されませんので、配当源泉税の減免のある租税協定等をうまく活用できるような場合(例えば中国)には、このような香港法人を作って節税することが可能になりました。でも節税案を考えるよりも利益を出す方が難しいんですよね・・・。