マレーシア 税務

マレーシアの電子インボイス制度(e-Invoice)

マレーシアでは、電子インボイス(e-Invoicing)が段階的に導入されており、2024年8月から特定の事業者に対して義務化が始まりました。この制度は、商取引のデジタル化を促進し、税務管理の効率化を図ることを目的としています。

■導入スケジュール

マレーシアのe-Invoice(電子インボイス)は、事業者の年間売上高または年間収益(annual turnover or revenue)に応じて段階的に導入されています。IRBM(マレーシア内国歳入庁)が2026年8月30日に公表した「e-Invoice Guideline Version 4.8」における導入スケジュールは、以下のとおりです。

年間売上高・年間収益 導入日
RM1億超 2024年8月1日
RM2,500万超~RM1億以下 2025年1月1日
RM500万超~RM2,500万以下 2025年7月1日
RM500万以下 2026年1月1日

RM300万未満の事業者に対する免除

2026年8月30日に公表されたVersion 4.8では、年間売上高または年間収益がRM300万未満の納税者について、原則としてe-Invoiceの発行義務(self-billed e-Invoiceを含む)が免除されることが明確化されています。

したがって、上記の導入スケジュール上は「RM500万以下」の事業者について2026年1月1日が導入日とされていますが、RM300万未満で免除要件を満たす事業者については、e-Invoiceの義務的な導入は不要となります。

ただし、RM300万未満であれば、すべての会社が自動的に免除されるわけではない点に注意が必要です

次のいずれかに該当する場合には、RM300万未満であっても、この免除を利用することができません。

  • 年間売上高または年間収益がRM300万以上の法人等の非個人株主(またはこれに相当する者)を有する場合
  • 年間売上高または年間収益がRM300万以上の持株会社の子会社である場合
  • 年間売上高または年間収益がRM300万以上の関連会社またはジョイント・ベンチャーを有する場合

このため、特に企業グループに属する会社については、その会社単体の売上高だけで免除の可否を判断することはできません

2023年~2025年に新たに事業を開始した場合

2023年から2025年までに新たに事業を開始した事業者について、年間売上高または年間収益がRM300万以上の場合、e-Invoiceの導入日は2026年7月1日となります。

2026年以降に新たに事業を開始した場合

2026年以降に新たに事業を開始する場合、原則として、2026年7月1日または事業開始日のいずれか該当する日からe-Invoiceの対象となります。

ただし、初年度の年間売上高または年間収益がRM300万未満と見込まれる場合には特則があります。この場合、年間売上高または年間収益がRM300万に達した年を基準として、その翌々年の1月1日がe-Invoiceの導入日となります。

e-Invoiceの提出方法

e-Invoiceの提出方法として、IRBMは次の2つの仕組みを用意しています。

  1. MyInvois Portal
  2. APIによる連携

MyInvois Portalでは個別入力のほか、所定のExcelファイルを利用した一括アップロードも可能です。APIは、大量の取引を処理する企業などを想定しており、自社ERPとMyInvois Systemを直接接続する方法のほか、Peppolまたは非Peppolのテクノロジープロバイダーを介する方法があります。

APIを利用する場合、e-InvoiceはUBL 2.1のデータ構造に従い、XMLまたはJSON形式でIRBMに送信します。

既存法人の売上高の判定

既存法人の導入時期を判定する際には、原則として2022年度の年間売上高または年間収益を使用します。

監査済財務諸表を作成している場合は2022年度の監査済財務諸表の包括利益計算書に記載された売上高・収益、監査済財務諸表がない場合は2022賦課年度の税務申告書に記載された年間収益を基準とします。

また、一度この基準によってe-Invoiceの導入時期が決定された場合、その後の年度に売上高・収益が変動しても、原則として当初決定された導入義務は変更されません。

■e-Invoicingの仕組み

電子インボイスは、売り手と買い手の間での取引をデジタルで記録するもので、政府のポータルを通じてリアルタイムで検証されます。これにより、請求書の発行、検証、保存が効率的に行われます。具体的には、以下のようなプロセスが含まれます:

発行: 売り手がMyInvoisポータルまたはAPIを通じてe-Invoiceを作成し、マレーシア内国歳入庁(IRBM)に送信します。

検証: IRBMがリアルタイムでe-Invoiceを検証し、ユニークな識別番号(UIN)を発行します。

通知: 検証が完了したe-Invoiceは、売り手と買い手の両方に通知されます。

■中小企業への影響

中小企業(SME)に対しては、2025年1月からの義務化に向けて、6ヶ月の猶予期間が設けられています。この期間中は、従来の請求書とe-Invoiceを併用することが可能です。中小企業は、e-Invoicingの導入に向けて、システムのアップグレードや従業員のトレーニングを行う必要があります。

■マレーシアのe-Invoicing制度と他国の比較

マレーシアのe-Invoicing制度は、他国の制度と比較していくつかの特徴があります。以下に、マレーシアの制度の概要と、他国との主な違いを示します。

1. 導入のタイムラインと段階的アプローチ

マレーシアでは、2024年8月からe-Invoicingが義務化され、最初は年間売上がRM100百万(約2.5億円)を超える企業が対象となります。2025年1月には年間売上RM25百万からRM100百万の企業、2025年7月にはすべての企業に拡大される予定です。これは、他の国々が採用している段階的な導入と類似していますが、特にマレーシアは、売上高に基づく明確な基準を設けている点が特徴です。

なお、シンガポールでは、GST登録業者のうち、任意登録の企業から順次導入されており、売上高により明確な基準は設けられておりませんが、任意登録の企業は、4つの四半期の売上高合計が100万SGD超ではなかった、または、ない見込であるにもかかわらず任意で登録する場合が先行導入が必要とされており、一応売上高等に基づく基準が設けられております。

2. 中央集権型の取引管理モデル

中央集権型の継続的取引管理(CTC)モデルは、企業が発行した請求書を税務当局にリアルタイムで送信し、検証を受ける必要があることを意味します。このモデルは、イタリアなどの他国でも採用されており、税務管理の透明性を高めることを目的としています。

3. 国際的なネットワークとの統合

マレーシアは、PEPPOL(Pan-European Public Procurement Online)という国際的なe-Invoicingネットワークに統合されています。これにより、マレーシアの企業は国際的な取引を行う際に、他国の企業とスムーズに取引できるようになります。PEPPOLは、ヨーロッパを中心に広がっており、国際的な標準化を促進しています。なお、シンガポールのInvoiceNOWでもPEPPOLを導入しています。

4. デジタル署名と認証の必要性

マレーシアのe-Invoicingでは、電子請求書を発行する際に、買い手の同意が必要です。また、請求書にはQRコードが添付され、検証が行われます。これは、他国の多くの制度でも見られる特徴ですが、マレーシアでは特にこのプロセスが強調されています。

5. 他国との比較

ヨーロッパ: 多くの国がe-Invoicingを義務化しており、特に公共部門での導入が進んでいます。例えば、EUではすべての公共機関が電子請求書を受け入れる必要があります。

アジア: インドや韓国などもe-Invoicingを導入していますが、各国の制度は異なります。韓国では2011年から義務化されており、すべての企業が対象です。

北米: アメリカでは、連邦政府が電子請求書の使用を推進していますが、州ごとに異なる規制が存在します。