香港 クロスボーダー税制

香港・2023年税務(改正)(特定の外国源泉処分益に対する課税措置)条例草案が官報に掲載

2023年税務(改正)(特定の外国源泉処分益に対する課税措置)条例草案(以下「条例草案」)は、10月13日付で官報にて公布され、10月18日に立法会へ提出される。当該条例草案は、香港における特定の外国源泉(オフショア)受動的所得非課税(Foreign-sourced Income Exemption、以下「FSIE」)制度を最適な制度に改善し、特定の外国源泉(オフショア)処分益の対象となる資産の範囲を、株式もしくは持分以外の資産にまで拡大することを目的としている。

香港政府のスポークスマンは、「香港は国際税務協力の堅固な支持者として、クロスボーダー取引における租税回避活動を撲滅するため、欧州連合(EU)やその他の国際機関とも緊密に連携してきました。当該条例草案の提案は、我々のFSIE制度を国際課税基準に一致させるもので、法人納税者が香港において、特定のオフショア処分益に対する優遇税制を享受するには、香港で実質的な経済活動を行うことを要求しつつ、シェルカンパニーが、特定のオフショア処分益に対する「二重非課税」を通じて、優遇措置による税制上の行き過ぎた便益を得ることを防止するものとなります。

FSIE制度の最適な制度への改善に係る提案が実施された後も、香港の税制は引続き競争力と優位性を維持し、源泉地課税の原則もまた維持されます。個人や独立した香港地元企業、純粋に香港のみの地元グループを含む大多数の納税者は、影響を受けることはありません」と述べた。

EUが2021年に、香港を税務協力事項に関するウォッチリストに加えたことに応じ、香港特別行政区政府は2022年12月に、2022年税務(改正)(特定の外国源泉所得に対する課税措置)条例を施行し、多国籍企業(Multinational Enterprise、以下「MNE」)体が香港において受領する特定のオフショア受動的所得、すなわち配当(Dividends)、利子収入(Interest)、知的財産権に派生する収入(Intellectual property income)並びに株式及び持分に関連する処分益(Disposal gain in relation to shares or equity interests)に対する課税が免除となる新たなFSIE制度を導入している。

当該条例草案により、香港の税制は、2022年12月にEUによって更新された外国源泉所得非課税制度のガイダンスにおける最新の要件に準拠しているものとなり、特定のオフショア処分益は、FSIE制度の対象となる一般所得群として、経済的実体要件を満たす必要がある。EUは、FSIE改革が進行中の香港及びその他の税務管轄区域に対し、2023年末までにFSIE制度に関する法律をさらに改正し、改善された制度を2024年1月から導入するよう要請している。必要な法改正が完了するまで、香港はEUのウォッチリストに留まることとなる。

同スポークスマンは、「必要な法改正が完了次第、香港をウォッチリストから速やかに除外するようEUに要請します」と述べている。

2023年4月中旬以降、香港政府は、税務専門家、地元及び外国の商工会議所、各業界及び専門機関、並びに金融サービス業界の代表者と、改善案の提案に関する広範な協議を行ってきた。利害関係者の意見のほとんどが適宜採用されている。

改善されたFSIE制度は、香港のMNE企業体が受領する4種類のオフショア受動的所得のみを引続き対象とし、オフショア能動的所得には影響を与えない。

改善されたFSIE制度の下では、香港政府は引続き、影響を受けるMNE企業体のコンプライアンス負担を最小限に抑えるために、税務上の免除及び救済措置を提供していく。MNE企業体が香港で十分な経済的実体を有している場合、オフショアの非知的財産権の処分益は非課税となる。オフショアの知的財産権の処分益が非課税となる範囲は、経済協力開発機構(OECD)が公布しているネクサスアプローチによって決定される。

一般の販売業者や規制対象の金融事業体に事業活動、あるいは既存の別の優遇税制の恩恵を享受している納税者による営業活動に由来する、またはこれらに付随するオフショアの非知的財産権の処分益は、改善されたFSIE制度の対象外となる。

対象となる納税者のコンプライアンス遵守負担を軽減し、企業再編を促進するため、処分益に適用される新たなグループ内譲渡救済措置が、当該条例草案によって導入される予定である。対象となる資産が関連当事者間で譲渡される場合に、特定の濫用防止規定を満たしておれば、その処分益に課される税金が繰り延べられる。

さらに、二重課税が発生する可能性を減少させるために、改善されたFSIE制度の下はで、二重課税の救済措置が引続き適用可能である。香港政府は、納税者のコンプライアンス負担を軽減し、税務の明確性を向上し、透明性を確保することを目的として、税務コンプライアンスを促進するため、報告手続きの簡素化、事前裁定の提供、行政による指導の実施、並びに香港税務局からの技術支援等、一連の事業促進措置を引続き提供していく予定である。

当該条例草案の全文は、金曜日(10月13日)に香港政府による官報のウェブサイトに掲載され、閲覧できるようになっている(※10月18日及び19日の第二討論会後、一旦延期され現在第二討論会の再開待ち、その後、委員会審議及び第三討論会が開催される予定)。

原文:Gazettal of Inland Revenue (Amendment) (Taxation on Foreign-sourced Disposal Gains) Bill 2023、2023年10月11日更新

原文:Inland Revenue (Amendment) (Taxation on Foreign-sourced Disposal Gains) Bill 2023 to be introduced into LegCo for First Reading and Second Reading、2023年10月17日更新