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[M&Aは今] (20)M&Aによる対中投資に関わる規定-国有資産の譲渡

今回は国有資産の譲渡に関する規定を紹介します。

金融業国有資産及び上場企業の国有資産を除いた、企業国有資産について、国内外の法人・自然人に譲渡する場合には、2004年2月1日から施行された《企業国有資産譲渡監督管理暫定弁法》及び2006年 12月31日公布の《企業国有資産譲渡についての関連事項の通知》を参照することとされています。

国有資産とは、国家の投資或いは投資により形成された、国家の所有する権益を指し、国務院・省・自治区・直轄市や各 レベルの人民政府が、国務院直属の特設機構で国有資産の監督管理を行う国有財産監督管理機構から授権され、国有資産の出資者としての職責を果たすものとさ れ、その株式支配企業や出資企業について各行政レベルで確定、公布し、その行政レベルに応じて国有財産監督管理機構へ報告することとなっています。国有資 産の譲渡の実行については、国務院国有財産監督管理委員会がその制度を制定、監督することとされており、譲渡案件に対する決定や批准を行うものとされてい ます。

譲受企業及び譲渡の条件

《企業国有資産譲渡監督管理暫定弁法》によると、譲受企業の条件は①財務状況と支払い能力が良好で、商業的に良好な信用があることが必要で、譲受企業が外国企業である場合は、国の外商投資企業に対する産業方針指導に沿っていなければならないとしています。

また国有資産の譲渡については競売、入札、協議譲渡等の方法で行うことができ、譲受企業の募集は公開で行われることとされており、譲渡側は、譲受候補企業の資質、商業信用度、経営状況、財務状況、管理能力、資産規模などの譲渡条件を提示することになっています。公開募集によって2社以上の譲受企業がある場合、競売或いは入札の方法で行われ、1社のみであった場合には協議譲渡が行えるものとされています。その後《企業国有財産譲渡についての関連事項の通知》では、香港・マカオ・台湾を含む外国の企業及びその他の経済組織或いは個人(以下、外国投資者)が譲受の主体である場合は以下の規定に沿って行うとされています。

  1. 外国投資者に国有資産を譲渡する場合は取引市場において公開で行う。特殊な状況下で、確かに協議方式で譲渡が必要な場合に、企業国有資産譲渡監督管理弁法及びその関連通知にある、協議による譲渡の批准についての関連規定に合致しなければならない。
  2. 譲渡側が譲渡条件を提出する際、外商投資産業指導目録とその関連規定に基づき、国家の外国投資者の譲り受ける国有財産権に対し禁止或いは制限規定がある場合、譲渡公告の中に提示しなければならない。
  3. 資産取引市場を通じ外国投資者が譲受主体として確定された場合、譲渡側は国家の関連管理規定に基づき、関連の職能を担う部門に報告し審査批准を申請しなければならない。

譲渡の手順

《企業国有資産譲渡管理暫定弁法》に基づく譲渡の大まかな手順は以下の通りとなっています。

  1. 譲渡側は財産取引機構を選択し、譲渡財産に対し内部の決定手続きを経たうえで、書面決議を行い決定し、当該弁法に沿って国有資産監督管理機構の審査認可を経て譲渡を決定する。
  2. 譲渡の認可決定後、譲渡対象企業の財産・資本の整理と会計事務所による監査を行う。資産整理と監査の結果を基に、関連資格を有する資産評価機構に資産の評価を依頼する。評価報告は審査認可或いは届け出された後に国有資産譲渡価格の参考依拠として確定される。
  3. 譲渡側は取引機構に依頼し資産譲渡公告を新聞紙上と取引機構のネット上で行い、公開で譲受者を募集する。公告の期間は20日営業日とする。
  4. 譲受者が2者以上であれば競売或いは入札方式で、1者のみの場合は協議による譲渡方法を取り、譲渡条件を協議・合意後、財産譲渡契約を締結する。
  5. 譲渡金額を支払う。取引成立後、財産取引機構の発行した証憑に基づき財産登記の関連手続きを行う。

(本文以上)