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[M&Aは今] (15)M&Aとデューデリジェンス-2
前回はM&Aにおけるデューデリジェンス(DD)について、目的や調査の範囲などについて紹介しました。今回は財務DDと法務DDで発見される問題点などについて説明します。
DDでは、企業の客観的な価値評価(譲渡価格)や譲渡契約、また買収後の運営管理のために確認すべき点という視点から問題点を洗いだすものです。香港や中国企業のDDで発見される問題点について、いくつかを列挙して説明します。
資産や収益関連の問題点
企業の純資産は譲渡価格算定の参考数値の一つですので、資産や収益に関する問題点を基に、決算書の純資産から企業の真実の純資産に修正することを目的とします。隠れた債務を探しだすことはDDの重要な任務の一つですが、売り手の情報開示状況などによって限界があることも確かです。
- 売掛金の回収可能性:売掛金は後日回収予定の資産ですが、長期債権の手続き方針などを確認し、回収可能性を確認します。
- 減価償却が正しく行われているか:建物や設備などは、使用するに従いその価値は減少するため、毎年正しく減価償却が行われているかを確認します。
- 香港では長期服務金、中国では経済補償金と呼ばれる、従業員解雇時のコストが見込まれていない場合、実態を把握の上試算します。
- 取締役や株主の個人的な費用と会社の費用を区別する方針について、確認します。香港・中国の特に中小規模の企業では、会社の経費で個人の費用を負担することがかなりの範囲で行われていることも多いため、企業の収益への影響度を把握する必要があります。
- 雇用契約通りに報酬が支払われているか。香港会社の取締役報酬などが契約書で約定されているが、会社の資金不足或いは契約の未履行で報酬が未払いのようなケースがあります。
その他会計・税務関連の問題
- 個人所得税の申告は会社に源泉徴収の義務がありますが、納税負担は個人であることから会社が従業員に便宜を図って、個人所得税を過小申告しているような場合があります。
- 香港会社の関連中国法人費用が香港会社に合算して計上されていたり、中国事務所経費が一般管理費ではなく、売上原 価として計上されていたりすることがあります。適正な会計処理ではなく、また買い手の会計処理と異なり評価や分析がしにくいため、買収後は修正が必要とな る場合があります。
取引・決済
取引・決済状況では、主に買収後のビジネスの潜在的なリスクを確定させます。
- 直近の年度及び最近の状況で、収入・売上総利益・税引前利益の動向を確認します。売上金額や経費の異常な増減などが無いか、買収後の経営に影響がないかを確認します。
- 一定顧客が売上総額を占める割合が高い場合は、買収後のリスクとして留意すべきです。
- 基本契約と個別契約:重要顧客及び重要仕入先との契約書について、品質或いはサービスの保証、リベートなどの状況に留意すべきです。
- 事業に関連する商標や特許登録を行っていない場合、それらの侵害を受ける潜在リスクがあります。
- 関連者間取引がある場合、買収後の取引に変化がないかどうか、確認する必要があります。関連者取引によって対象企業の意図的な利益移転などが無いかどうかもチェックのポイントの一つです。
組織・従業員
- 会社の組織図に表示されない機構があります。例えば合弁会社、出資先などの関連会社です。こういった会社の存在、資本関係、運営管理は調査対象の是非や範囲、今後の拠点の機能、今後の買い手の支配力にもよりますが、実態を把握する必要があります。
- 労務関連訴訟で係争中の訴訟が無いかどうかを確認します。
- 製造業などでは、環境問題で基準を超えた環境汚染物質の排出が無いかどうか、確認をする必要があります。
(以上)
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