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[全訳] 中華人民共和国外貨管理条例

中華人民共和国国務院令 第532号(原文

《中華人民共和国外貨管理条例》はすでに2008年8月1日国務院第20回常務会議の改訂を通過し、ここに改訂後の《中華人民共和国外貨管理条例》を公布し、公布の日より施行する。

総 理 温家宝
二〇〇八年八月五日

中華人民共和国外貨管理条例

(1996年1月29日中華人民共和国国務院令 第193号発布
1997年1月14日《国務院の〈中華人民共和国外貨管理条例〉修正の決定》により改訂
2008年8月1日国務院 第20回常務会議の改訂を通過)

第一章 総 則

第一条 外貨管理を強化し、国際収支を均衡させ、国民経済の健全な発展を促すため、本条例を制定する。

第二条 国務院外貨管理部門及びその分支機構(以下、外貨管理機関と総称する)は法により外貨管理の職責を遂行し、本条例の実施に責任を負う。

第三条 本条例でいう外貨とは、下記に列挙するような、外貨で表示された国際決済に用いることのできる支払手段と資産のことを指す。

  1. 外貨現金、すなわち紙幣・硬貨など。
  2. 外貨支払証憑または支払手段、すなわち手形・銀行預金証憑・銀行カード等。
  3. 外貨有価証券、すなわち債券・株式等。
  4. 特別引出権。
  5. その他外貨資産。

第四条 国内機構・国内個人の外貨収支または外貨経営活動、及び国外機構・国外個人の国内における外貨収支または外貨経営活動に、本条例を適用する。

第五条 国家の経常性国際支払と移転に対しては制限を設けない。

第六条 国家は国際収支の統計申告制度を実施する。
国務院外貨管理部門は国際収支を統計・監視し、国際収支状況を定期的に公布しなければならない。

第七条 外貨業務を営む金融機関は国務院外貨管理部門の規定に従い顧客のために外貨口座を開設し、外貨口座を通じて外貨業務を処理しなければならない。
外貨業務を営む金融機関は法により外貨管理機関に顧客の外貨収支及び口座変動状況を報告しなければならない。

第八条 中華人民共和国国内での外貨の流通は禁止するものとし、外貨により評価決済してはならない。ただし国家が別途規定した場合を除く。

第九条 国内機構・国内個人の外貨収入は国内に還流または国外に保管することができる。国内への還流または国外保管の条件・期限等は、国務院外貨管理部門が国際収支の状況と外貨管理の需要により規定する。

第十条 国務院外貨管理部門は法により国家外貨準備を保有・管理・運用し、安全・流動・増値の原則を遵守する。

第十一条 国際収支の重大な不均衡、及び国民経済の重大な危機が発生するまたは発生の恐れがある時は、国家は国際収支に対して必要な保障・統制等の措置を取ることができる。

第二章 経常項目外貨管理

第十二条 経常項目の外貨収支は真実で合法的な取引の基礎を備えなければならない。為替決済・為替販売業務を営む金融機関は国務院外貨管理部門の規定に従い、取引書類の真実性及びその外貨収支との整合性について合理的に審査しなければならない。
外貨管理機関は前項に規定した事項に対して監督検査をする権限を有する。

第十三条 経常項目の外貨収入は、国家の規定に従い留保または為替決済・為替販売業務を営む金融機関に売り渡すことができる。

第十四条 経常項目の外貨支出は、国務院外貨管理部門の外貨支払と為替購入に関する管理規定に従い、有効な証明書類をもって自ら保有する外貨を支払うか、または為替決済・為替販売業務を営む金融機関で為替購入をして支払う。

第十五条 出入国の際の外貨現金の携帯・申告限度額は、国務院外貨管理部門が規定する。

第三章 資本項目外貨管理

第十六条 国外機構・国外個人の国内での直接投資は、主管部門の批准を得た後、外貨管理機関で登記をしなければならない。
国外機構・国外個人が国内で行う有価証券またはデリバティブ商品の発行・取引は、国家の市場算入に関する規定を遵守し、国務院外貨管理部門の規定に従い登記をしなければならない。

第十七条 国内機構・国内個人の国外への直接投資または国外で行う有価証券・デリバティブ商品発行・取引は、国務院外貨管理部門の規定に従い登記をしなければならない。国家が事前に関連する主管部門の批准または備案が必要であることを規定している場合、外貨登記の前に批准または備案手続をしなければならない。

第十八条 国家は外債の規模管理を実施する。外債の借入は国家の規定に従い処理し、外貨管理機関に外債登記をしなければならない。
国務院外貨管理部門は全国の外債の統計と監視の責任を負い、定期的に外債の状況を公布する。

第十九条 対外担保の提供は、外貨管理機関に申請を提出し、外貨管理機関が申請者の資産負債等の状況により批准の決定を行う。国家がその経営範囲について主管部門の批准が必要であると規定している場合、外貨管理機関に申請を提出する前に批准手続をしなければならない。申請者は対外担保契約の締結後、外貨管理機関で対外担保登記をしなければならない。
国務院の批准を経て外国政府または国際金融組織による借款の転貸を使用するために提供する対外担保については、前項の規定は適用しない。

第二十条 銀行業金融機関は批准の経営範囲内で直接国外に商業ローンを提供することができる。その他国内機構が国外に提供する商業ローンについては、外貨管理機関に申請を提出し、外貨管理機関が申請者の資産負債等の状況により批准の決定を行う。国家がその経営範囲について主管部門の批准が必要であると規定している場合、外貨管理機関に申請を提出する前に批准手続をしなければならない。
国外に提供する商業ローンは、国務院外貨管理部門の規定に従い登記をしなければならない。

第二十一条 資本項目の外貨収入を留保または為替決済・為替販売業務を営む金融機関に販売する場合、外貨管理機関の批准を経なければならない。ただし国家が批准不要と規定するものを除く。

第二十二条 資本項目の外貨支出は、国務院外貨管理部門の外貨支払と為替購入に関する管理規定により、有効な証明書類をもって自ら保有する外貨を支払うか、または為替決済・為替販売業務を営む金融機関で為替購入をして支払う。国家が外貨管理機関で批准を経ることを規定している場合、外貨支払前に批准手続をしなければならない。
法により終止する外商投資企業は、国家の規定に従い清算・納税した後、国外投資者が所有する人民元を、為替決済・為替販売業務を営む金融機関で外貨に換金し送金することができる。

第二十三条 資本項目の外貨及び両替後の人民元は、主管部門及び外貨管理機関が批准した用途に使用しなければならない。外貨管理機関は資本項目の外貨及び両替後の人民元の使用と口座変動状況について監督検査する権利を有する。

第四章 金融機関外貨業務管理

第二十四条 金融機関が為替決済・為替販売業務を経営または終止する場合、外貨管理機関の批准を経なければならない。その他外貨業務の経営または終止については、職責分担により外貨管理機関または金融業監督管理機構の批准を経なければならない。

第二十五条 外貨管理機関は金融機関の外貨業務に対して総合残高管理を行い、具体的な弁法は国務院外貨管理部門が制定する。

第二十六条 金融機関の資本金・利益及び人民元・外貨資産の不整合により人民元と外貨の間の両替が必要な場合、外貨管理機関の批准を経なければならない。

第五章 人民元為替レートと外貨市場管理

第二十七条 人民元為替レートは市場の需給を基礎とした管理変動為替レート制度を実施する。

第二十八条 為替決済・為替販売業務を営む金融機関と国務院外貨管理部門が規定する条件に符号するその他の機構は、国務院外貨管理部門の規定に従い銀行間の外貨市場で外貨取引を行うことができる。

第二十九条 外貨市場取引は公開・公平・公正と誠実信用の原則を遵守しなければならない。

第三十条 外貨市場取引の通貨と形式は国務院外貨管理部門が規定する。

第三十一条 国務院外貨管理部門は法により全国の外貨市場を監督管理する。

第三十二条 国務院外貨管理部門は外貨市場の変化と貨幣政策の要求に基づき、法により外貨市場を調節することができる。

第六章 監督管理

第三十三条 外貨管理機関は法により職責を履行し、下記に列挙する措置を取る権利を有する。

  1. 外貨業務を営む金融機関への実地検査。
  2. 外貨違法行為が発生した疑いのある場所への調査。
  3. 外貨収支または外貨経営活動を有する機構と個人を訪問し、調査対象の外貨違法事件と直接関係する事項への説明を求める。
  4. 調査対象の外貨違法事件と直接関係する取引書類等の資料の調査閲覧・複製。
  5. 調査対象の外貨違法事件の当事者と直接関係する単位・個人の財務会計資料及び関連文書を調査閲覧・複製し、移動・隠匿または毀損の恐れのある文書と資料は、密封することができる。
  6. 国務院外貨管理部門または省級外貨管理機関の責任者の批准を経て、調査対象の外貨違法事件の当事者と直接関係する単位・個人の口座を調査する、ただし個人の貯蓄預金口座は除く。
  7. 違法な資金等事件にかかわる財産の移動・隠匿または重要な証拠の隠匿・偽造・毀損がすでに発生または発生の恐れがあることを証明する証拠がある場合、人民法院に申請し凍結または差し押さえることができる。

関係する単位と個人は外貨管理機関の監督検査に協力し、真実に状況を説明し、また関係する文書・資料を提供し、これを拒絶したり妨害または隠蔽してはならない。

第三十四条 外貨管理機関は法により監督検査または調査を行い、監督検査または調査の人員は2人以上でなければならず、また証明書を提示しなければならない。監督検査・調査の人員が2人より少ないまたは証明書の提示がない場合、監督検査・調査対象の単位と個人は拒絶する権利を有する。

第三十五条 外貨経営活動を行う国内機構は、国務院外貨管理部門の規定に従い財務会計報告・統計報告書等の資料を提出しなければならない。

第三十六条 外貨業務を営む金融機関が顧客の外貨違法行為を発見した場合、ただちに外貨管理機関に報告しなければならない。

第三十七条 国務院外貨管理部門は外貨管理の職責を履行するために、国務院の関連部門・機構から必要な情報を取得することができ、国務院の関連部門・機構はそれを提供しなければならない。
国務院外貨管理部門は国務院の関連部門・機構に外貨管理業務の状況を報告しなければならない。

第三十八条 いかなる単位と個人も外貨違法行為を通報する権利を有する。
外貨管理機関は通報者の秘密を保護しなければならず、規定により通報者または外貨違法行為の摘発に協力し功労のあった単位と個人に報奨を与える。

第七章 法律責任

第三十九条 規定に違反して国内の外貨を国外に移転し、または不正な手段を用いて国内の資本を国外に移転する等の不正持出行為をした場合、外貨管理機関は期限内に外貨を国内に戻すよう命じ、不正持出金額の30%以下の罰金を科す。状況が重大である場合、不正持出金額の30%以上同額以下の罰金を科す。犯罪にあたる場合、法により刑事責任を追求する。

第四十条 規定に違反して人民元で受払すべき金額を外貨によって受払をする、または虚偽・無効な取引書類等により為替決済・為替販売業務を営む金融機関で不正に外貨を購入する等の違法な裁定行為があった場合、外貨管理機関は違法裁定資金を人民元に戻すよう命じ、違法裁定金額の30%以下の罰金を課す。状況が重大である場合、違法裁定金額の30%以上同額以下の罰金を科す。犯罪にあたる場合、法により刑事責任を追求する。

第四十一条 規定に違反して外貨を国内に送金した場合、外貨管理機関は改正を命じ、違法金額の30%以下の罰金を科す。状況が重大である場合、違法金額の30%以上同額以下の罰金を科す。
違法為替決済があった場合、外貨管理機関は違法に両替した資金を元の通貨に戻すよう命じ、違法金額の30%以下の罰金を科す。

第四十二条 規定に違反して外貨を持込・持出した場合、外貨管理機関は警告を発し、違法金額の20%以下の罰金を課すことができる。法律・行政法規により税関が処罰すると規定されている場合、その規定に従う。

第四十三条 無断での対外借款・国外での債券発行または対外担保の提供等の外債管理に違反する行為があった場合、外貨管理機関は警告を発し、違法金額の30%以下の罰金を科す。

第四十四条 規定に違反して、無断で外貨または両替後の人民元の用途を変更した場合、外貨管理機関は改正を命じ、違法所得を没収し、違法金額の30%以下の罰金を科す。状況が重大である場合、違法金額の30%以上同額以下の罰金を科す。
規定に違反した外貨による国内での評価決済または外貨振替等の違法な外貨使用行為があった場合、外貨管理機関は改正を命じ、警告を発し、違法金額の30%以下の罰金を科すことができる。

第四十五条 無断での外貨の売買・形を変えた外貨の売買・外貨の転売または違法な外貨売買の斡旋、の金額が比較的大きい場合、外貨管理機関は警告を発し、違法所得を没収し、違法金額の30%以下の罰金を科す。状況が重大である場合、違法金額の30%以上同額以下の罰金を科す。犯罪にあたる場合、法により刑事責任を追求する。

第四十六条 批准を経ずに無断で為替決済・為替販売業務を営んだ場合、外貨管理機関は改正を命じ、違法所得がある場合は、違法所得を没収し、違法所得が50万元以上であれば、違法所得の1倍以上 5倍以下の罰金を科す。違法所得がないまたは違法所得が50万元未満の場合、50万元以上200万元以下の罰金を科す。状況が重大である場合、関連主管部門は営業停止または業務許可証取消を命ずる。犯罪にあたる場合、法により刑事責任を追求する。
批准を経ずに為替決済・為替販売業務以外のその他外貨業務を営む場合、外貨管理機関または金融業監督管理機構は前項の規定により処罰を行う。

第四十七条 金融機関が下記に列挙するものの一つに該当する場合、外貨管理機関は期限内の改正を命じ、違法所得を没収し、20万元以上100万元以下の罰金を科す。状況が重大であるか期限内に改正しない場合は、外貨管理機関は経営に関連する業務の停止を命ずる。

  1. 経常項目資金の受払を処理する際、取引書類の真実性及びその外貨収支の整合性について合理的な審査をしていない。
  2. 規定に違反した資本項目資金の受払処理。
  3. 規定に違反した為替決済・為替販売業務。
  4. 外貨業務総合残高管理の違反。
  5. 外貨市場取引管理の違反。

第四十八条 下記に列挙するものの一つに該当する場合、外貨管理機関は改正を命じ、警告を発し、組織に対して30万元以下の罰金を科し、個人に対して5万元以下の罰金を科すことができる。

  1. 規定に従い国際収支統計の申告をしていない。
  2. 規定に従い財務会計報告・統計報告書等の資料を提出していない。
  3. 規定に従い有効な書類を提出しない、または提出された書類が真実でない。
  4. 外貨口座管理規定の違反。
  5. 外貨登記管理規定の違反。
  6. 外貨管理機関が法により行う監督検査または調査の拒絶・妨害。

第四十九条 国内機構が外貨管理規定に違反した場合、本条例による処罰のほか、直接の主要責任者とその他直接の責任者に対し、処分を行わなければならない。金融機関で直接責任を負う董事・監査役・高級管理者とその他直接責任者に対して警告を発し、5万元以上50万元以下の罰金を科す。犯罪にあたる場合、法により刑事責任を追求する。

第五十条 外貨管理機関の業務担当者による不正・職権の濫用・職務怠慢は、犯罪にあたる場合、法により刑事責任を追求する。尚、犯罪にあたらない場合、法により処分を行う。

第五十一条 当事者が外貨管理機関の行政行為を不服とする場合、法により行政復議を申請することができる。さらに行政復議の決定を不服とする場合、法により人民法院に行政訴訟を提起することができる。

第八章 附 則

第五十二条 本条例の下記に列挙する用語の定義。

  1. 国内機構とは、中華人民共和国国内の国家機関・企業・事業単位・社会団体・部隊等を指し、外国駐中国外交領事機構と国際組織駐中国代表機構は除外する。
  2. 国内個人とは、中国公民と中華人民共和国国内に連続して満1年居住する外国人を指し、外国駐中国外交官と国際組織駐中国代表を除外する。
  3. 経常項目とは、国際収支において貨物・サービス・収益及び経常転移に関わる取引項目等を指す。
  4. 資本項目とは、国際収支において対外資産と負債の水準を変化させる取引項目を指し、例えば資本移転・直接投資・証券投資・デリバティブ商品及び借入等がある。

第五十三条 非金融機関が為替決済・為替販売業務を営む場合、国務院外貨管理部門の批准を経なければならず、具体的な管理弁法は国務院外貨管理部門が別途制定する。

第五十四条 本条例は公布の日より施行する。