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[M&A] タイ・ビバ、F&N買収完了

酒造大手タイ・ビバレッジ(THBEV)会長のジャルーン・シリワタナパクディ氏が率いるTCCアセッツは18日、シンガポールの不動産・飲料大手フレーザー・アンド・ニーブ(F&N)の株式公開買い付け(TOB)手続きを完了、90.3%株を確保し、買収が成立したと発表した。リー・シェンロン首相の弟でF&N会長のリー・シェンヤン氏も同日、所有株式約59万株を売却すると表明。F&N株主のキリンホールディングスも巻き込んだ買収攻防に終止符が打たれた。

19日付シンガポール紙ビジネス・タイムズなどによると、TCCアセッツはTOBで42.1%分の株式を取得。すでに保有している48.2%を合わせて出資比率が90.3%となり、浮動株が10%未満となることから、シンガポール取引所(SGX)での上場を廃止する。

ジャルーン氏が買収に投じた額は約120億シンガポールドル(約9,006億円)で、タイだけでなく、東南アジアでは過去最大規模の合併・買収(M&A)案件となる。

F&Nのリー会長は、保有する0.04%株を売却する。会長を含むF&Nの取締役は全員、TCCによる買収が確定次第、辞任する意向。14.8%株の売却を決めたキリンの小林弘武常務取締役は15日付でF&Nの役員を退任した。

買収劇は昨年7月、OCBC銀行がF&N株をジャルーン氏に売却したことで始まった。ジャルーン氏は9月、TCCアセッツを通じてF&Nに1株当たり8.88SドルでTOBを提案。これに対してインドネシア系不動産業者オーバーシーズ・ユニオン・エンタープライズ(OUE)も9.08Sドルを示し、争奪戦になった。今年1月まで膠着(こうちゃく)状態が続いたため、証券業委員会(SIC)が異例の入札手続きを開始すると発表。直後にTCCが9.55Sドルを提示、OUEは新たな提案をせず、TCCによる買収が決まった。これを受け、OUEと共同でF&N買収を目指したキリンは、保有株をTCCに20億Sドルで売却すると発表した。

F&Nはシンガポールで1898年に設立された老舗飲料メーカー。昨年にはタイガービールを製造するビール部門アジア・パシフィック・ブルワリーズ(APB)をオランダのビール大手ハイネケンに売却することで合意しており、F&Nとともに地場有名飲料ブランドが海外企業の手に渡ることになる。