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[M&A] 佐川急便、M&A1000億円

佐川急便、M&A1000億円
~栗和田会長、アジア中心に投資~

佐川急便の持株会社、SGホールディングス(京都市南区)は海外事業を加速し、グループの成長を支える柱として育てる。シンガポールを訪問した栗和田榮一会長は、国際貨物事業を中核に据え、今後3年で海外での合併・買収(M&A)に1,000億円を投じる計画を示した。国や地域の枠を超えた国際的なネットワークの構築を図ることで、海外売上高を現在の5倍にすることを目標に掲げている。

同会長はNNAに対して、「2015年度までに、アジアをはじめとする海外でM&Aに約1,000億円を投じる」と明らかにした。

同社は先月発表した13~15年度中期経営計画で、同期間中の投資総額を2,600億円と試算しており、うち約4割を海外でのM&Aに充てることになる。M&Aの対象については「国際的な物流網を有する企業」と説明した。

同社はシンガポールで新設した海外事業統括会社SGホールディングス・グローバルを先月に本格稼働した。23日には中心部ホテルで開所式を開催。開所式に参加した同会長が海外事業を加速する方針をあらためて示した。

■法人向けも強化

SGホールディングス・グローバルは、SGホールディングス・グループ海外法人の管理、事業戦略の策定、企画、資金調達・供給などを手掛け、海外事業推進の司令塔としての役割を担う。同グループは、シンガポールをはじめマレーシア、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム、中国、香港、台湾、米国ハワイなど10カ国・地域24カ所に現地法人を置いており、フレイト・フォワーディング(国際貨物事業)や通関、倉庫、3PL(サードパーティー・ロジスティクス)、宅配便サービスなどを提供している。

海外事業はこれまでSGロジスティクスが日本から管理していた。同会長は「日本市場は縮小しており、今後はさらに海外に目を向けていく必要がある。東南アジアの中心であるシンガポールに統括拠点を設置することで、より現地に近い場所でスピード感を持って事業を推進できると考えた」と説明した。

海外事業の中でも、特に国際貨物を中核事業に据える。アジア地域では同事業を支える法人向け配送も強化する。

SGホールディングスは配送事業依存からの脱却を掲げている。現在、グループ全体の売上高のうち配送事業が占める割合が8割以上となっている一方で、物流事業の比率は約6%。

同会長は「配送事業に匹敵とまではいかなくても、少なくともこれまで1本足で立ってきたところを、2本足、3本足で立てるようにしたい」と語った。そのためにも海外での国際貨物事業を拡大し、同グループを世界有数の物流企業に成長させる考えだ。

■経済統合に期待

同会長は東南アジア地域について、「全体のネットワークを再構築し、点から線へ、線から面へと広げていく」と語る。東西・南北経済回廊が通るラオスや民主化が進むミャンマー、インフラ整備が進むインドネシアなどに注目しているという。

またSGホールディングス・グローバルの川崎直介社長は15年年末を目標に進んでいる東南アジア諸国連合(ASEAN)経済統合について、「ヒトとモノの流れが自由になることで市場が活性化し、新たな事業機会が生まれると期待する」と述べた。

現在、SGホールディングスの海外売上高は約100億円で、グループ全体の売上高の1%にとどまっている。同会長は「15年にはこれを約5%に当たる500億円程度に拡大したい。5%のうち東南アジアの比率は2%強になると想定している」と説明した。