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[全訳] 中国・日本社会保障協定の実施に関する通知

『社会保障に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定(日・中社会保障協定)』(日本語原文中国語原文、以下『協定』と呼称)が2019年9月1日より効力が発生する。この協定に関する中国側の手続きについて、中国人力資源社会保障部より『人力資源社会保障部弁公庁による中国-日本社会保障協定の実施に関する通知』(原文)が、2019年8月27日付で発表された。

今回の通知は、協定の主要内容をまとめるととともに、中国から日本への派遣者等が日本での国民年金・厚生年金の納付免除を受ける場合の『適用証明書』の発行に関する手続き及び日本から中国への派遣者等が、中国での養老保険の納付免除を受ける手続きについて、各省各自治区の人力資源社会保障部門に通知したものである。

日本では、8月1日より、日本年金事務所・事務センターが『適用証明書』の交付申請を受け付けており、9月1日以降、順次、発行される。9月1日以降、本通知二、(二)の内容に基づき、『適用証明書』を持つ駐在員等は、所在地の社会保険機構に、養老保険の納付免除の申請を行う。

なお、今回の通知では、養老保険以外の社会保険項目について、また、『適用証明書』を持たない者は養老保険についても、外国人(日本人)の納付義務を改めて明確に規定している。この点、外国人の社会保険の納付に関する市レベルの細則が出ていない、上海市等の地域において、今後、日本人に対する徴収が強化されるかどうかについて、注意が必要である。

以下、『人力資源社会保障部弁公庁による中国・日本社会保障協定の実施に関する通知』の全訳である。

各省、自治区、直轄市及び新疆生産建設兵団人資源社会保障庁(局):

中国、日本両国の相手国で就労する者の社会保険費の二重負担の問題を有効に解決するため、両国は、2018年5月9日に『中華人民共和国政府と日本国政府との間の社会保障協定』(以下『協定』とする)に正式に署名した。『協定』の円滑な実施を保証するため、当部と日本管轄機関との間で、2019年4月18日に『中華人民共和国と日本国政府との間の社会保障協定の実施に関する行政合意』(以下『行政合意』とする)に署名した。双方の協議合意により、『協定』及び『行政合意』は、2019年9月1日より正式に効力が生じる。『協定』及び『行政合意』の完全執行を確保するため、関連問題について、以下の通り通知する。

一、『協定』主要内容

(一)相互免除の保険範囲

中国側は、被用者基本老齢保険、日本側は、国民年金(国民年金基金を除く)及び厚生年金(厚生年金基金を除く)。

(二)中国側は、日本における関連社会保険料納付者の免除に適用する。

  1. 派遣者。中国の領域内に事業所を有する雇用者に雇用され、その雇用関係により日本の領域内に派遣され就労する者を指す。
  2. 海上航行船舶において就労する者。中国の旗を掲げる船舶において雇用されている者及び通常は中国の領域内において居住し、日本の旗を掲げる船舶において雇用されている者を指す。
  3. 航空機において就労する者。中国の領域内の雇用主に雇用され、国際航空路線の航空機において就労する者を指す。
  4. 外交領事機構の構成員及び公務員。外交領事機構の構成員とは、『ウィーン条約』及び『領事関係に関するウィーン条約』において定義する関係者を指す。公務員とは、中国が日本の領域内に派遣され就労している公務員と中国の法律規定に基づき同等の待遇を持つ者を指す。
  5. 例外。特定の者又は集団に対して、これらの者又は集団に中国及び日本のいずれか一方の法律規定が適用されることを条件として、中国及び日本両国の管轄機関又は実施機関は、『協定』第5条から第8条のまでの規定の例外的処理について同意することができる。
  6. 随行配偶者及び子女。派遣者、公務員、例外者に随行する配偶者及び子女は、社会保障協定の実施に関する日本の法律規定に合致することを条件に、日本国民年金(国民年金基金を除く)の納付の免除を受けることができる。但し、その配偶者及び子女が別段の申し出をした場合は、適用されない。

(三)日本側は、中国における関連社会保険料納付者の免除に適用する。

日本の中国の社会保険料の納付を免除する者は、中国側の1から5の適用者の条件を日本側にあてはめたものである。

(四)派遣者の社会保険納付の免除の期限

派遣者の最初の免除納付期間は最長5年である。派遣期間が5年を超える場合、中国及び日本両国の管轄機関又は実施機関の同意を得ることにより、延長することができる。

(五)管轄機関、実施機関

  1. 管轄機構:中国側は、人力資源社会保障部。日本側は国民年金(国民年金基金を除く)、厚生年金(厚生年金基金を除く)制度を所管する政府機関。
  2. 実施機関:中国側は、人力資源社会保障部社会保険事業管理センター又は当該部の指定するその他の機構。日本側は、実施は日本国民年金(国民年金基金を除く)、厚生年金(厚生年金基金を除く)制度保険機構又はその協会。

二、『協定』に基づく関係社会保険費の納付免除管理弁法

(一)中国側の日本に滞在する者の関連社会保険費の納付免除の『適用証明書』の管理弁法

既に規定に基づき中国国内の被用者基本養老保険に加入し、適切に保険料を納付している者は、以下の順序に従って日本の関連する社会保険費の納付の免除を申請することができる。

  1. 個人が、「国家社会保険公共服務平台」のホームページへアクセスし、実名ユーザー登録を行う。アドレス:http://si.12333.gov.cn。個人の申請者が国家平台へログインし、「境外納付免除申請」サービスを選択し、本人の詳細な申請情報を入力し、保存、提出申請を行う。
  2. 派遣者の国内の派遣元単位は、登録単位のユーザー登録を行い、当該単位からの派遣者の情報を入力し、保存、提出申請を行う。
  3. 部社会保険センターは申請情報の審査を行う。条件に符合する場合、7営業日以内に適用証明書を発行し、申請人に郵送する。条件に符合しない場合、理由を説明する。補充資料が必要な場合、告知する。
  4. 部社会保険センターは、申請者が郵便紙質の申請材料の形式で申請を行った場合も、審査が通過した場合、適用証明書を発行する。インターネットでの処理の流れは、部門のホームページ「中日社会保障協定適用証明書の申請処理ガイド」で閲覧することができる。
  5. 申請人は、日本の実施機関に『適用証明書』を提出することにより、関連する社会保険費の納付の免除を申請する。

(二)日本側の中国に滞在する者の関連社会保険費の納付免除の管理弁法

  1. 日本側は、中国に滞在する者の所在地の社会保険機構に、日本の実施機関が発行した『適用証明書』を提出する。その所在地の社会保険実施機関は書類原本を審査し、副本を記録・保存する。承認後、『適用証明書』の規定する期限の期間、関連する社会保険費用の納付義務を免除する。
  2. 『適用証明書』を提出することができない日本の中国滞在者に対しては、各地の社会保険実施機関は、『中華人民共和国社会保険法』及び『中国国内に就業する外国人の社会保険加入暫定弁法』(人力資源社会保障部令第16号)の規定に基づき、中国の社会保険の加入を催促しなければならない。
  3. 『協定』の規定する被用者基本養老保険以外、中国に滞在する日本人は、社会保険法及び部令第16号の規定に基づき、中国のその他の社会保険に加入する。