中国 中国会計税務

[中国会計税務] 実務基礎知識2(監査報告書の基礎知識)

 中国の会計年度が終了して、これから前年度の決算監査や年度手続が開始されます。会計事務所からは、現地法人の決算について監査報告書が発行され、出資者やその他関係者へ一年間の経営実績や財務状態が報告されます。今回は、この監査報告書に書かれる内容について紹介します。

■ 監査報告
 企業決算の監査を行った責任者による、監査実務や企業財務諸表に対する総括が「監査報告」として表される。監査報告の部分は、1ページから2ページ程度であることが一般的となり、監査報告書全体で最も重要な部分であるとも言える。監査報告書全体の様式については、地域や会計事務所により異なるが、監査報告については、監査準則で厳格に定められているため、外形的には同一の形式になることが一般的である。なお、監査準則で決められた監査報告に欠かせない主な内容は以下のようである。

① 標題(「審計報告(中国語)」と表記することが義務付けられている)
② 報告先(一般的には出資者宛である)
③ 導入部(監査対象の財務諸表が示される)
④ 企業や公認会計士の責任と義務
⑤ 監査意見
⑥ 会計事務所印や監査人署名
⑦ 報告日

【監査意見】
 中国の会計規定に基づいた決算が行われ、財務諸表に売上や資産等が適切に反映されているか否かに対して、監査人が状況を判断して総合的な意見を表明する。中国の監査準則では、4種類の監査意見が用いられる。

① 無保留意見(無限定適正意見)
 会計処理に大きな問題がなく、貸借対照表や損益計算書の内容が会社の状況を表している際に提示される意見となる。
② 保留意見(限定付適正意見)
 決算の一部に問題があるが、財務諸表全体から鑑みれば、表示される財務状況や経営状況は参考となり得るので、監査で認識した問題点を提起した上で示される意見である。
③ 否定意見(不適正意見)
 決算処理に大きな問題が認識され、会社が行った決算結果は信頼に足らないと判断される場合に提示される意見である。
④ 意見提示不可(意見不表明)
 適切な決算資料が得られない、或いは会社の会計処理が非常に混乱しており、監査を通じても企業の決算に対して意見を提示することが出来ない場合に示される意見となる。

 左記監査意見のうち②~④が提示される場合には、監査人により当該意見を提示した理由が示される。管理者の皆様においては、監査報告書を手に入れた後には、まず監査人の意見を確認して、無保留意見が公表されていれば、基本的には監査が無事に終わった判断されて問題ありません。また、②保留意見については、監査人の意見内容を確認して、その問題が納得できるようであれば、企業として受容出来る監査として頂いても宜しいかと思います。なお、それ以外も意見が提示されている場合には、現地法人の決算手続に大きな問題があると指摘されていますので、会計やその他部門を含めた迅速な対応が必要になります。

【監査修正】
 決算監査の段階において、過誤が確認される会計処理に対しては、監査人と企業の協議を経て修正処理を行うことがある。中国では、月次決算を行っているため、決算月の12月終了時点で企業自身が財務諸表を作成しているが、当該監査修正により適切な財務諸表を再作成して、無保留意見が附された監査報告を得ることが可能である。監査修正が行われる場合、年度末に算出した決算内容と異なる数値になるため、管理者としては、上述の監査意見と合わせて、監査修正の有無を確認した上で、最終的な年間の決算を把握されることが必要です。

■ 財務諸表
 監査報告書では、毎月作成する貸借対照表や損益計算書に加えて、キャッシュフロー計算書と所有者持分変動計算書も加えられる。これは、企業の会計担当者が自身で作成するには難しく、且つ会計ソフト等での自動編集が出来ない場合も多いため、監査を経て決定される最終的な決算内容に基づき、監査人が作成することが一般的である(企業が採用する会計規定に依っては、所有者持分変動計算書は作成されない場合もある)。基本的には、左記両表に貸借対照表と損益計算書を加えて4種類の資料が財務諸表として監査報告書に添付される必要があるが、個別税目や社会保険料の納付額を明示する補充資料や企業所得税申告のための税務調整を行った計算表が添付される場合もある。