中国 中国会計税務

[中国会計] 中国の国家統一会計制度(62)

 企業会計準則における売上の認識については、主営業務収益の項目で既に紹介していますが、税務実務との同異点を改めて確認します。今回は商品販売を例として、企業会計準則と企業所得税、及び増値税における売上の認識について確認します。

1. 企業会計準則と企業所得税の商品販売認識

 企業会計準則では、商品販売収入の認識については◇商品の所有権上の主要なリスクと経済価値が買手に移転していること◇所有権に関連する継続的な管理権を留保していないこと◇収入金額の算定に信頼性があること◇経済利益が企業に流入する可能性が高いこと◇関連する原価が信頼性をもって測定できること――の5つが条件とされています。一方、企業所得税法上の課税所得の認識は、◇商品の販売契約をすでに締結し、企業が商品の所有権に関わる主要なリスク及び経済価値を購入者に移転した◇企業が通常、すでに販売した商品の所有権に関する継続的な管理権を留保しておらず、また有効な支配を行なっていない◇収入の金額を信頼性をもって測定することができる◇すでに発生したまたは発生の見込のある販売者の原価を信頼性をもって計算することができる――の4つが挙げられています。経済的利益の流入の可能性についての判断は企業所得税では求められていませんが、両者の売上認識は基本的に一致しています。

2. 流通税の発票(中国語:ファーピャオ)

 現在、中国ではモノの販売やサービス提供などの取引には、原則として増値税または営業税(注1)のいずれかの流通税が課税され、その証憑として売手により「発票」が発行され、買手に交付されます。
発票の英語表記では「Invoice」で、代金の授受の取引が行われることを証するものであり、代金が領収済みであることを証するものではありません。中国では合法的な証憑類の存在をもってはじめて会計処理ができるものとなっており、「発票」は売買や役務提供取引が行われたことを証する合法的な証憑となります。流通税のうち、営業税は売上額にそのまま税率を乗じた金額を売上げた当人が納税しますが、増値税は日本の消費税同様に最終消費者が税負担をする多段階方式(注2)です。売上の認識において、俗に「発票基準」として度々俎上に載るのは増値税ですが、これは、上述の通り、仕入税額の控除があるためです。

(注1)現在は営業税から増値税の移行プログラムの実施中で、近い将来に完全に移行される。
(注2)商品流通の各段階で売上に係る税額から仕入に係る税額を控除して納税していくこと。

3. 増値税上の商品販売認識

 増値税法においては、商品販売についての納税義務の発生、すなわち売上増値税額の認識は、原則として売上代金の受領日または売上代金取立て証憑の取得日とされ、先に発票を発行した場合には、発票の発行日に行う(注3)としています。例えば、◇直接代金回収方式による場合には、商品を出荷したか否かにかかわらず、売上代金を受領または売上代金取立証憑の取得日◇掛売および割賦販売方式による場合は、契約書に約定した代金回収日当日、代金回収日が契約で約定されていない場合には商品の出荷日◇代金前受方式による場合には、商品の出荷日――など商品販売の決済方式によって納税義務の発生認識時点が細かく規定されています。
なお、直接代金回収方式を採用して商品販売を行い、その商品を既に購入者へ運送した後、これを販売収入として見積もり計上したとしても、購入者から売上代金または売上代金取立証憑を未だ受領しておらず、増値税領収書を発行していない場合には、売上代金を受領した当日、または売上代金取立証憑を受領した当日を納税義務の発生時点とするものと規定され、これをもって、売上計上と増値税の納税義務の発生が必ずしも一致していないこと、即ち発生主義による売上認識を想定していると考えられます。

 (注3)商品の輸入については通関日が納税義務の発生日となる。