中国 中国会計税務レポ

[中国会計税務レポ] 営改増全面展開後の増値税 – 納税義務の発生時点 (6)

昨年5月1日の営業税を増値税に移行する税制改革「営改増」の全面実施後に交付された増値税の規定について5回にわたり説明をしてきました。今回は営改増により新たに増値税の課税行為となったサービス提供などの納税義務の発生時点を確認していきます。

1. 収益の認識と増値税の納税義務の発生

中国では、商品売買やサービス提供等の取引成立に伴い発行する増値税の「発票(ファーピャオ)」が、取引が行われたことを示す合法かつ税務上有効な証憑であるため、発票を発行した時点で売上計上するという、いわゆる「発票基準」が実務として行われていることが少なくありません。しかし、企業会計準則及び企業所得税法上も収益は発生主義(注1)を原則として認識するものと規定されています。
一方、増値税の発票については「増値税発票発行指南」(税総貨便函[2017]127号付属書類)において、納税義務が発生した時に発行しなければならないとされています。増値税暫行条例(国務院令第538号)によると、増値税の納税義務の発生認識の原則は、販売代金を受領または販売代金請求に関する証憑を取得した日(物品の輸入の場合には通関の当日)とされており、収益の認識とは一致していません。

(注1) 中国語表記は「権責発生制」。

関連規定: 企業会計準則基本準則第9条、企業会計準則第14号、企業所得税法実施条例第9条、国税函[2008]875号、増値税発票発行指南第1章第1節四、増値税暫行条例第38条、増値税実施細則38条、国家税務総局公告2011年第40号、他。

2. サービス等における増値税納税義務の発生時点

営改増後、現行の増値税に関する基本法規は、2009年に施行された増値税暫行条例およびその実施細則(国家税務総局令第50号)と、新たに増値税の徴収対象となったサービス等に関する基本法規となる「営業税から増値税に移行する税制改革の試行を全面的に推進する通知」(財税[2016]36号)です。当該36号通知の付属文書1の「営業税から増値税への移行試行実施弁法」(以下、「営改増試行実施弁法」)では、納税義務の発生時点について以下の通り定めています。

  • 納税人に課税行為が発生し、かつ販売代金を受領し(注2)または販売代金請求に関する証憑を取得した当日(注3)。先に発票を発行した場合は、発票発行の当日。
  • 納税人がリースサービスにおいて前金を受け取る場合は前金を受領した当日(注4)。
  • 納税人が金融商品を販売場する場合には、金融商品の所有権が移転する当日。
  • サービス・無形資産または不動産のみなし販売に該当する場合(注5)は、サービスの提供、無形資産譲渡完了の当日または不動産所有権変更の当日。
  • 増値税の源泉徴収義務者の納税義務の発生時点は納税人の納税義務発生の当日。

    (注2) 販売代金の受領とは、納税人のサービス、無形資産、不動産販売の過程においてまたは完成後に代金を受領すること。
    (注3) 販売金額請求証憑を取得した当日とは、書面による契約で確定した支払日であり、書面契約を締結していない、または書面契約において支払日が確定していない場合には、サービス・無形資産譲渡完了の当日または不動産所有者変更の当日。
    (注4) 営改増試行実施弁法第45条では建築サービスの前受金も含まれていたが、財税[2017]58号通知で削除され、リースサービスにのみ適用されるものとなった。
    (注5) 以下の状況は、サービス・無形資産・不動産の販売と見なされ、増値税の課税行為となります。

    1. 無償で役務を提供する場合(但し、公益事業又は一般の者を対象とするものは除く)。
    2. 無償で無形資産又は不動産を譲渡する場合(但し、公益事業又は一般の者を対象とするものを除く)。
    3. 財政部及び国家税務総局が規定するその他の場合。