中国 中国会計税務レポ

[中国会計税務レポ] 企業関連者間取引の特別調整 – 特別納税調査調整と相互協議 (10)

中国の租税回避防止管理のガイドラインである『特別納税調整実施弁法(試行)』(国税発[2009]2号。以下「2号弁法」)の移転価格に関する規定の改定に関して、2017年3月に公布された『特別納税調査調整および相互協議手続管理弁法に関する公告』(国家税務総局公告2017年第6号。以下「6号公告」)のうち、前回紹介した関連者間役務取引の補足説明と相互協議について紹介します。
 

1. 受益性役務と非受益性役務

前回紹介した通り、6号公告では関連者間役務取引を「受益性役務」と「非受益性役務」に区分してその取扱いを定め、受益性役務の取引価格決定において考慮すべき要素と、非受益性役務とみなされる場合について例を挙げて詳細に説明をしています。
受益性役務の取引価格は、役務の具体的な内容および特性、役務提供者の機能・リスク・原価および費用、役務受領者の受益状況・市場環境、取引双方の財務状況、および比較可能な取引の価格設定の状況との要因を考慮して、合理的な移転価格算定方法を選択し、

  • 各役務受領者ごとに区別して役務プロジェクト単位で合理的な原価に基づいて取引価格を確定すること
  • 区別できない場合には、役務の性質に従って合理的な基準及び比率で各役務受領者に配賦し、配賦された原価に基づいて取引価格を確定すること

を求めています。
税前控除が否認される非受益性役務については、以下の6項目とし、具体的な例を挙げて説明しています。

  1. 役務受領者が既に購入している、または自主的に実施した役務活動
  2. 投資者の投資利益を保障するために実施した 支配、管理および監督などの役務活動
    • 董事会活動・株主会活動・幹事活動および株式発行など株主へのサービス活動
    • 投資者・グループ本部などへの経営報告書または財務報告書の作成・分析に関する活動
    • 投資者・グループ本部などへの資金調達活動◇グループの政策決定・管理・支配・コンプライアンスのために必要な財務・税務・人事・法務などの活動(注1)
    • その他類似状況
  3. 企業グループに属するということのみで 超過収益を獲得する役務活動
    • 資源統合および規模のメリットをもたらすグループ再編活動
    • 信用評価の向上による融資コスト削減などの利益活動
    • その他類似状況
  4. その他の関連取引において既に補償を得た役務活動
    • 特許権使用料を受けている特許権などに関するサービス
    • 貸付利息を受けている融資関連サービス
    • その他類似状況
  5. 役務受領者が果たす機能および負担するリスクとは関係ない、またはその経営ニーズに合致しない関連取引
  6. その他、役務受領者に直接的または間接的な経済利益をもたらさない、または、非関連者が購入もしくは自ら実施することを望まないような役務活動

(注1) 経済協力開発機構による税源浸食と利益移転(BEPS)行動計画ではグループ内サービスと判定され、投資者への活動に含まれていません。

2. 特別納税調整に関する相互協議

相互協議とは、租税協定の関連条項に基づき、当事者となる国・地域の主管当局間で、国際的な二重課税問題を回避または排除するために行う協議です。6号公告では、特別納税調整に関する相互協議手続き(注2)について、相互協議の申請・受理・一時停止・中止・終了といったプロセスやその適用条件、税務機関が相互協議の申請を拒否できる状況(注3)などを詳細に規定しています。一方、2号弁法で定められていた申請期限(移転価格調整通知書を受け取った日から3年以内)には触れられていません。
6号公告では相互協議には

  • 二国間および多国間の事前確認の協議および確認
  • 租税協定締結国の一方が特別納税調査調整を実施することによりもたらされるもう一方の対応調整に関する協議・交渉

も含まれるとしています。

(注2) 相互協議の手続き規定には、「租税協定相互協議手続き実施弁法」(国家税務総局公告[2013]56号)もあるが、特別納税調整の相互協議には適用されないとされており、6号公告においても、租税条約の条項解釈および実施手続きについては当該56号公告に基づいて実施されると規定している。
(注3) 納税調整案件が終了して納税を行った後、すなわち二重課税状態となった後でなければ申請はできない。