中国 中国会計税務レポ

[中国会計税務レポ] 外債の限度額管理

外債管理に関する規定が改正され、借入限度額の計算が従来の投注差方式に加え、マクロプルーデンス方式(以下「MMP方式」といいます。)による管理方式を採用することができるようになりました。

1. 外債登記

外商投資企業が行う対外借入については限度額が定められ、限度額を超える対外借入はできません。限度額は外債登記を行うことにより管理されます。《外債管理暫行弁法》(国家発展計画・財政部・国家外貨管理局令2003年第28 号。以下「管理弁法」といいます。)によると、外債登記を行わない場合、かかる借入契約は法的拘束力を有しないとされており、元利金を国外に支払うことが実質的にできません。

なお、管理弁法では、「外債」とは、「国内機構が非居住者(注1)に対して負う外貨建ての債務」と定義されています。一方、中国の外商投資企業が、中国国外から人民元を借入れることについては、《外商直接投資人民元決済業務操作細則を明確にする事の通知》(銀発[2012]165号)によりその条件(注1)と外債限度額の計算に含まれることが明確にされました。 これにより、国外からの借入については、外貨建て、人民元建て共に限度額をもって管理されることになりました。
中国の国内金融機関から自らの信用で借入を行う場合は外債には該当しませんので、限度額の有無に関わらず借入が行えます。なお、国内借入に国外の親会社などが保証する(外保内貸)場合、その保証の履行により発生した短期外債の一定額は残高管理の対象外(注3)とされています。

(注1) ここの非居住者とは、中国国外の機構、自然人及び中国国内において法令に準拠し設立された非恒久的施設をさします。
(注2) 登録資本金が期日通りに全額支払われていることが前提となっています。
(注3) 保証債務に関しても金融機関を通じての登記が必要とされ、実質的に残高管理に組みこまれていましたが、2014年度の通知(匯発[2014]29号)により、保証履行時にその履行額が前年度の純資産を超過する場合のみを短期外債として登記することに緩和されています。

2. 限度額管理-投注差方式

管理弁法において、外商投資企業における外貨借入の限度額は、「投資総額」(注4)と「登録資本金(中国語表記は注冊資本金)」の差額、すなわち「投注差」を限度とすると定められています。このため、投注差を超える対外借入は行うことができず、借入枠を確保するためにまず増資を行い、新たに投注差を創設するという方法が実務上行われてきました。総投資額と登録資本金との関係は、以下の通り規定されており、1 回の増資毎に判定するとされています。

<投資総額と登録資本金の関係>

総投資額 登録資本金の割合
USD300万ドル以下 投資総額の70%以上
USD300万ドル以上USD1,000万ドル以下 投資総額の50%以上
USD1,000万ドル以上USD3,000万ドル以下 投資総額の40%以上
USD3,000万ドル以上 投資総額の3分の1以上

(注4) 総投資額とは、外商投資企業特有のもので、現地法人に外国から投入することができる限度額、すなわち資本金と対外借入による総投資額を示すものとなります。

3. 限度額管理-MPP方式

2016年5月の銀発「2016」132号通達の施行により、従来に加え方式MPPによる外債管理が始まりました。MPPは純資産等を基準に、政策的な因数を加味して外債限度額を計算します。一般企業における計算式は、次の通りです。現状、外債限度額の計算上、純資産に乗ずる率や因数は1.0のため、実質的に純資産額が外債限度額になります。

外債限度額 純資産×融資レバレッジ率×マクロプルーデンス政策因数
外債利用額 外債残高×各リスク率(注5)

外商投資企業は投注差方式、MPP方式のいずれも選択適用できますが、選択後の変更は原則できません。値が通常変動しない「投注差」よりも、値が毎年変動するMPPの方が外債限度額は多くなる可能性があります。但し、純資産を基礎とすることから、累積欠損が多い企業は実質的にMPP方式を選択できないことになります。
(注5) 返済期間リスク率:1年以下1.5、1年超1、類別リスク率:フバランス、オンバランス共に1.為替リスク率:外貨対外借入残高0.5。

以上