中国 中国事業再構築入門

中国における事業再構築入門第7回(資金調達3)

今回も、前回に引き続き、中国国内における日系現地法人の資金調達スキームについて取り上げます。

中国においては、人民元に関する総量規制や外貨規制等、資金調達に関して様々な制約があり、日本本社の思い通りにいかないケースが多々あります。また、当局への申請手続および審査において、一定の期間を要するため、ある程度ゆとりをもった資金計画を策定しておくことがポイントとなってきます。日系現地法人の資金調達スキームとしては、(1)グループ内金融(2)増資(3)外部借入(4)その他に分類できます。図1参考。今回はグループ内金融の一つである委託貸付について解説します。

(1) 委託貸付とは
現状、中国国内においては、企業間(金融機関および親会社以外)の直接の資金融通はできません。これは、中国において資金の融資および貸付行為は金融機関のみが行える営業行為であり、金融機関以外の一般企業による直接貸付は基本的に禁止されているためです。しかし、「委託貸付」という形で、金融機関を介在させることにより、企業間の間接的な資金融通を行うことができます。

委託者(貸付側)、借入側、金融機関の3者間における契約となります。具体的には、まず、委託者(貸付側)と借入側が条件面等を協議し、当該内容を金融機関に持ち込む形で3者契約を交わします。この場合、金融機関は貸出リスクを負わず、委託者(貸付側)が負います。なお、融資実行時には、金融機関に対して手数料を支払う必要があります。

(2) 委託貸付のメリット・デメリット
① メリット
 増資や親子ローンと比較すると手続期間が短く機動的かつ柔軟な資金調達が可能。
 返済条件(借入期間・利率等)を比較的自由に設定することが可能。
 ※利率については、通常、預金金利と貸出金利の間の水準で設定。
 グループ内で資金調達するため、中国国内で直接融資を受けるよりも低金利。
 グループ企業間における余剰資金の有効活用が可能。
②  デメリット
 金融機関に対して手数料が発生。
 委託者(貸付側)および借入側で同一金融機関の口座を保有していない場合、口座を開設する必要。

(3) まとめ
委託貸付は、中国国内にグループ会社を数社保有する場合に適した方法で、グループ内での余剰資金を有効に活用することができます。また、親会社からの資金調達である増資や親子ローンよりも手続期間が短く、比較的タイムリーな資金調達が可能です(委託者(貸付側)および借入側で同一金融機関の口座を保有している場合は、通常2-3週間程度で実行可)。それに加え、金利は外部借入よりも低水準で、金融機関への手数料も通常1%程度であるため、資金調達コストを抑えることができます。