中国 中国事業再構築入門

中国における事業再構築入門第3回(清算編2)

中国における事業再構築入門第3回(清算編2)

昨今ニーズが高まっている中国を中心とした事業再構築について解説していきます。事業再構築としては、中国の制度上多様な方法が認められており、目的にあった方法を選択していく必要があります。今回は、前回に引き続き撤退方法の一つである清算について取り上げます。前回は清算の手続面について説明しましたが、今回は清算時の税務上の留意点について具体的にみていきましょう。

清算手続に長期間を要するケースや多額の追徴課税を強いられるケースが散見されています。これは、清算時において過年度の納税状況が厳しくチェックされるためです。具体的には、清算手続として税務登記を抹消する必要がありますが、登記抹消に先立って、会計事務所による税務監査を受けなければなりません。この場合において、予測していなかった納税が発生するケースが少なくなりません。

さらに、税務監査に加え、税務当局の追加調査が長期間に行われる場合もあります。多額の追徴課税により資金が不足し、清算のための増資を強いられスケジュールを大幅に変更せざるを得ないケースもありました。これは、税務当局は清算する会社に対して厳しい目で見る傾向があるためですが、不測の事態に陥るのを避けるためにも、事前に税務上どのような点が問題となるかを把握しておくことが重要です。以下において清算時における税務上の典型的な論点について解説します。

① 経営期間

清算時において経営期間が10年未満の場合で、2免3減等の優遇税制を享受していた場合は、優遇された税金額を全額返納しなければなりません。

② 資産処分時の税務上の留意点

清算過程おいて、固定資産や棚卸資産を処分することになりますが、税務上、以下の点に留意する必要があります。

A) 固定資産の処分

自己使用の固定資産の処分については、売却時の増値税の取扱いがポイントとなります。当該増値税の処理に関しては、購入時期によって処理が異なります。

○ 2008年12月31日以前に購入した固定資産
自己使用固定資産で、一定の手続後(購入時の発票等の関連証憑を添えて、固定資産売却前に国家税務局に備案手続完了後)、4%の半分の徴収率(2%)にて増値税を納付する必要があります。

○ 2009年1月1日以降に購入した固定資産
2009年1月1日から固定資産購入にかかる増値税が控除可能となったことに伴い、固定資産の売却は通常の徴収税率(一般納税人は17%)にて増値税を納付する必要があります。

なお、免税枠を利用して輸入した設備で、5年を経過していない税関の監督管理期間中の設備については、関税、増値税を納付後、監督管理を解除のうえ、売却処理をしなければなりません。

B) 棚卸資産の処分

原材料、仕掛品、製品などの在庫は、通常売却(或いは廃棄)することになりますが、無償にて贈与する場合には留意が必要です。この場合、贈与をした清算対象法人はみなし販売として増値税が発生すると同時に、贈与を受けた法人は収益とみなされ企業所得税の課税の対象となり、両社に税金が発生します。

また売却価格について公正価格(一般的には市場価格等を参考)ではないと判断された場合(公正価格より安く販売したと判断された場合)、納税調整を要求されることもあります。なお、保税在庫に関しては、関税、増値税の納付が必要となります。

清算時の税務問題は複合的かつ多岐に渡るため、清算手続をスムーズに進めるためにも事前に公認会計士等の専門家のレビューを受けておくことが望ましいと言えます。