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独占禁止法に定める事業者集中

今回は、事業者集中を制限する独占禁止法の規定を紹介します。
合併・買収による事業者の集中は中国の独占禁止法に定める独占行為の一つとされ、一定条件を満たす事業者の集中活動については独占禁止法執行機構(商務部の独占禁止局)に申告し、審査を受けなければならない義務があります。中国の独占禁止法は2008年8月1日に施行されたばかりですが、同法に定義する独占行為の一つに事業者の集中があり、以下の3点を指すとされています。
  1. 事業者の合併
  2. 事業者が持ち分或いは資産を取得する方式を通じて他の事業者の支配権を獲得する
  3. 事業者が契約等の方式を通じて他の事業者の支配権を獲得する或いは決定的な影響力を与える
独占禁止法では、事業者集中が一定の申告基準に達する場合、事業者は事前に国務院独占禁止法執行機構に申告しなければならないとされていましたが、一定の申告基準とは何かについて、08年の8月3日に公布施行された国務院令第529号「事業者集中の申告基準に関する規定」で、事業者集中が以下の基準の1つに達した場合、事業者は商務主管部門に申告しなければならず、未申告の場合、集中を実施してはならないと規定されました。
  1. 集中に参与する全ての事業者の前年度全世界での営業額合計が100億人民元を超える場合、且つその内2社以上の事業者の前年度中国国内での各営業額がいずれも4億人民元を超える場合
  2. 集中に参与する全ての事業者の前年度の中国国内での営業額合計が20億人民元を超え、且つその内2社以上の事業者の中国国内での各営業額がいずれも4億人民元を超える場合
但し、独占禁止法では、次のいずれか一つの条件に該当すれば、申告は不要としています。
  1. 集中に参与する事業者の一つがその他の各事業者の50%以上の議決権のある株式或いは資産を有している。
  2. 集中に参与する各事業者の50%以上の議決権のある株式或いは資産が、集中に参与していない同一の事業者により所有されている。

申告と審査

独占禁止法第23条には、申告の際には以下の資料の提出が必要であるとしています。
  1. 申請書
  2. 集中が関連市場に与える影響についての説明
  3. 集中に関する当事者の合意書
  4. 集中に参与する事業者の、会計事務所の審査を経た前年度の会計報告
  5. その他、独占禁止法執行機構の規定する文書や資料
具体的な資料リストについては、「外国投資者の国内企業合併買収に関する規定」に基づいて発布されている申請ガイドラインを参考することができるとしています。申告は当事者或いは代理人により商務部の反?断局(=独占禁止局)に提出されます。当部門が審査する際、主に以下の要素を考慮するとされています。
  1. 集中に参与する事業者の関連市場におけるシェア及び支配力
  2. 関連市場における集中度
  3. 事業者集中が市場参入・技術進歩に対し与える影響
  4. 事業者集中が消費者及びその他の関連事業者に対する影響
  5. 事業者集中が国民経済発展に与える影響
  6. その他独占禁止法執行機構が考慮すべきとする要素
審査結果が禁止或いは制限付き認可の決定である場合、商務部は社会に公布するとし、それ以外の決定の場合には、申請者に通知するのみとされています。
商務部の反垄断局(=独占禁止局)のウェブサイトでは、08年8月1日の施行以来11月19日までに十数件の申告が提出され、13件が立案され、8件に対して既に審査の決定が行われたことが発表されています。

(本文 終わり)

*今回でNNAに連載された「M&Aは今」は終了となります。長期にわたりご愛読ありがとうございました。

今回は国有資産の譲渡規定に続き、国有資産の譲渡に際しその評価に関する規定や手続きを紹介します。中国語では「国有資産」と呼ばれますが、2008 年10月新たに発布され09年5月より施行される企業国有資産法でも明記されている通り、国有資産とは、国が企業に対し各種の形式での出資によって形成さ れた権益、と定義されています。これらの国有資産が出資された企業の合併・買収、重大資産の譲渡に当たり、また合併買収以外でも、非貨幣財産による対外投 資、清算などを行う際には、規定に沿って資産評価を行わなければならないとされています。

国有資産評価の審査許可と届け出

《企業国有資産評価管理暫定弁法》では、国有資産評価業務は審査の上許可し、また届け出を行う制度と規定しています。国有独資企業・会社や、国有資本参入企業は、資産評価を行う際、事前に国有資産監督管理機構に次のような事項について報告を行わなければならないとされています。
  1. 関連経済行為の認可について
  2. 評価基準日の選択について
  3. 資産評価範囲の確定について
  4. 資産評価機構選択の条件、範囲、手続き及び予定の機構の資質や専門性の特徴について
  5. 資産評価の日程計画について
企業は国有資産監督管理機構に進捗状況を報告し、当管理機構は必要に応じて指導や現場検査を行うことができるとされています。
資産評価を行った後、企業は、地域或いは国の国有資産監督管理機構に評価報告書その他の関連資料を提出して、適正な手続きの基に評価を行ったかどうかの審査許可或いは届け出許可を受けます。審査許可、届け出許可を行った評価業務は正式に評価価格が確認されることとなり、資産譲渡時の参考価格となります。国有資産評価管理暫定弁法では、取引価格がこの評価価格の90%以下となる場合、取引は一旦停止され、資産評価を審査或いは届け出許可した元の機構が認可した後継続することとしています。

評価機構、評価委託

資産評価は国や地域の国有資産管理行政主管部門が審査し許可発行する資産評価資格証書を有する資産評価機構に委託することとされており、国有資産評価管理弁法実施細則では、評価業務の受託は地区や業種の制限を受けないこと、評価機構と評価対象に直接利益関係がある場合は、その評価機構に委託してはならないことが規定されています。委託する主体は一般的に評価対象企業或いは評価に関連する当事者ということになっており、資産評価機構と、評価内容、期限、費用徴収の方法と金額、違反規定などの条項を含んだ協議書を締結して評価を委託します。

評価方法と評価報告書

国有資産評価管理弁法により、評価機構は、評価対象機構の資産、債権・債務を全面的に精査し、帳簿上と実際の資産内容が一致しているか、並びに経営成果の真実性を調査し、確定することとされています。また資産の評価は、将来の収益能力を適切な割引率を用いて現在価値を算出する収益還元法、資産の再取得コストから、使用年限や機能などを差し引いて評価時点の価値を算出する再取得原価法、市場の同類資産価値を参照する市場価格法、清算を前提として評価する清算価格法、その他規定されている評価方法などを用いて評価を行うこととされています。

評価実施後、報告書が作成されますが、その内容に加えなければならない項目は以下とされています。
  1. 報告書の本文として:評価機構の名称、委託者の名称、資産評価の範囲、名称と説明、評価基準日、評価原則、評価の依拠する法律・法規、政策、評価方法と価値評価標準、個別資産評価説明、価値評価と関連語句説明を含む評価の結論、添付文書の名称、評価業務の実行日と報告提出日、評価機構責任者・担当者の署名、機構印など。
  2. 添付文書として:評価まとめ表、明細表、評価方法の説明と計算過程、評価基準日に対応する会計財務資料、資産評価機構の資格証明コピー、評価対象企業の資産証明文書コピー、その他関連資料
(以上)

今回は国有資産の譲渡に関する規定を紹介します。

金融業国有資産及び上場企業の国有資産を除いた、企業国有資産について、国内外の法人・自然人に譲渡する場合には、2004年2月1日から施行された《企業国有資産譲渡監督管理暫定弁法》及び2006年 12月31日公布の《企業国有資産譲渡についての関連事項の通知》を参照することとされています。

国有資産とは、国家の投資或いは投資により形成された、国家の所有する権益を指し、国務院・省・自治区・直轄市や各 レベルの人民政府が、国務院直属の特設機構で国有資産の監督管理を行う国有財産監督管理機構から授権され、国有資産の出資者としての職責を果たすものとさ れ、その株式支配企業や出資企業について各行政レベルで確定、公布し、その行政レベルに応じて国有財産監督管理機構へ報告することとなっています。国有資 産の譲渡の実行については、国務院国有財産監督管理委員会がその制度を制定、監督することとされており、譲渡案件に対する決定や批准を行うものとされてい ます。

譲受企業及び譲渡の条件

《企業国有資産譲渡監督管理暫定弁法》によると、譲受企業の条件は①財務状況と支払い能力が良好で、商業的に良好な信用があることが必要で、譲受企業が外国企業である場合は、国の外商投資企業に対する産業方針指導に沿っていなければならないとしています。

また国有資産の譲渡については競売、入札、協議譲渡等の方法で行うことができ、譲受企業の募集は公開で行われることとされており、譲渡側は、譲受候補企業の資質、商業信用度、経営状況、財務状況、管理能力、資産規模などの譲渡条件を提示することになっています。公開募集によって2社以上の譲受企業がある場合、競売或いは入札の方法で行われ、1社のみであった場合には協議譲渡が行えるものとされています。その後《企業国有財産譲渡についての関連事項の通知》では、香港・マカオ・台湾を含む外国の企業及びその他の経済組織或いは個人(以下、外国投資者)が譲受の主体である場合は以下の規定に沿って行うとされています。
  1. 外国投資者に国有資産を譲渡する場合は取引市場において公開で行う。特殊な状況下で、確かに協議方式で譲渡が必要な場合に、企業国有資産譲渡監督管理弁法及びその関連通知にある、協議による譲渡の批准についての関連規定に合致しなければならない。
  2. 譲渡側が譲渡条件を提出する際、外商投資産業指導目録とその関連規定に基づき、国家の外国投資者の譲り受ける国有財産権に対し禁止或いは制限規定がある場合、譲渡公告の中に提示しなければならない。
  3. 資産取引市場を通じ外国投資者が譲受主体として確定された場合、譲渡側は国家の関連管理規定に基づき、関連の職能を担う部門に報告し審査批准を申請しなければならない。

譲渡の手順

《企業国有資産譲渡管理暫定弁法》に基づく譲渡の大まかな手順は以下の通りとなっています。
  1. 譲渡側は財産取引機構を選択し、譲渡財産に対し内部の決定手続きを経たうえで、書面決議を行い決定し、当該弁法に沿って国有資産監督管理機構の審査認可を経て譲渡を決定する。
  2. 譲渡の認可決定後、譲渡対象企業の財産・資本の整理と会計事務所による監査を行う。資産整理と監査の結果を基に、関連資格を有する資産評価機構に資産の評価を依頼する。評価報告は審査認可或いは届け出された後に国有資産譲渡価格の参考依拠として確定される。
  3. 譲渡側は取引機構に依頼し資産譲渡公告を新聞紙上と取引機構のネット上で行い、公開で譲受者を募集する。公告の期間は20日営業日とする。
  4. 譲受者が2者以上であれば競売或いは入札方式で、1者のみの場合は協議による譲渡方法を取り、譲渡条件を協議・合意後、財産譲渡契約を締結する。
  5. 譲渡金額を支払う。取引成立後、財産取引機構の発行した証憑に基づき財産登記の関連手続きを行う。
(本文以上)

中国における外国企業による合併買収に続き、外国企業が国内に設立した外商投資企業が合併買収を行う場合の規定について紹介します。
外商投資企業のM&Aに関しては、従来外商投資企業の国内投資行為の1つとして2000年に規 定が発布されていました。更に本連載第 回で中国のM&Aに吸収/新設合併、存続/解散分割があると記載しましたが、外商投資企業の合併・分割に ついての規定が2001年に発布されています。

外商投資企業の国内投資を行う条件として、(1)登録資本金が全額払込み済みであること (2)利益の計上を始めていること (3)違法経営記録が無いこと (4)累計投資額が純資産の50%を超えてはならないこととされています。

外商投資企業が中国内資企業を合併する場合は更に、(1)対象企業は「会社法」に基づき設立された有限責任公司か或いは株式有限公司であること (2)合併後の会社が産業資格要求を満たしていること(3)合併後外国側投資者の持ち株比率が25%を下回ってはならないこと(4)既存従業員を極力就業させること 等が必要とされています。
登録資本金について、合併後の登録資本金額は、合併企業間の登録資本金の和とされています。一方分割の際、分割後の企業の登録資本金額の合計は、分割前の登録資本金額にならなければならないとされています。

審査認可手続き

会社の吸収合併では、吸収する会社が申請者となり、新設合併では、合併する各社のうち一社が申請者となって申請します。合併予定企業の元の審査認可企業が2つ以上ある場合に、合併後解散する予定の会社は、合併申請を開始する前に、合併による解散申請を行うこととされています。
審査機関はその行政レベルに応じて、投資総額の審査上限が決められており、合併後の投資総額の和が申請地の審査権限を超える場合は、更に上級の行政レベルの審査機関に申請が提出されることとなります。

合併(・分割)審査認可申請手続き手順は図の通りとなっています。この手続き後、外商投資企業批准証書を返却・変更或いは受領した上で、合併または分割後に存続或いは新設する会社は、営業許可証を変更或いは受領し、その後30日以内に税務・税関・外貨管理などの登記機関で関連の審査手続きを行います。解散する会社は抹消などの手続きを行うこととなります。

外商投資企業の合併・分割・登録資本減少の公告及び通知見本

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図にも示す通り、合併・分割申請を行う会社は、初歩的回答受領後10日以内に当事者の債権者に対し通知を出し、且つ、30日以内に新聞紙上で公告することとなっています。

上記通知書を受領した債権者は受領日から30日以内に、通知書を受領していない場合は第1回目の公告日から90日以内に、債務の継承案に対する修正要求や、全額返済、担保提供要求などを行う権利があり、これらの要求を行わない場合、予定の合併・分割による債務継承案を認めたとみなされることになります。2003年にはこれらの公告・通知の書式サンプルが特に発布され、参考することができるようになっています。
(以上)

中国における外国企業による合併買収についての説明の続きです。買収対象が中国企業の資産の場合と、外商投資企業の持分譲渡を行う場合の認可申請文書を紹介します。

外国企業が行うM&Aの中で、新たに外商投資企業を設立し中国資本企業の資産を合併買収する場合、元の債権及び債務を継承する必要はありません。資産を売却する国内企業は、外国投資者が審査認可機関へ申請文書を提出する15日前までに債権者へ通知書を発行し、且つ全国版の、省レベル以上の新聞に公告しなければならないとされています。

外国投資者は、設立予定の外商投資企業の定款(及び、ある場合は契約)の中で出資期限を規定すること、或いは、外商投資企業を設立してから資産購入を協議し当該資産を運用する場合には、外商投資企業営業許可証発行から3ヶ月以内に、資産価額分の出資は全額払い込んだうえ資産価額を支払わなければなりません。

外国企業が中国資本企業の資産を買収し、設立する外商投資企業の投資総額は買収資産の取引価格及び実際の生産経営規模に基づいて確定しなければなりません。

資産の買収合意書には以下の内容を含めることとされています。

  • 当事者各社の状況。名称(氏名)、住所、法定代表者の氏名、職務、国籍など
  • 買収予定資産のリスト及び価額
  • 買収合意の履行期限、履行方式
  • 当事者各社の権利・義務
  • 違約責任、争議の解決について
  • 合意署名の日時、場所
外国企業が資産を合併買収する場合、設立予定の外商投資企業の投資総額、従事する業種に基づいて、認可権限に応じて、相応の認可権限を持つ認可機構へ下記のような資料を提出します。
  • 国内企業の財産権保有者或いは権力機構の資産売却同意の決議
  • 外商投資企業設立申請書
  • 設立予定の外商投資企業の定款(合弁企業の場合、及び契約)
  • 設立予定の外商投資企業と国内企業が署名した資産買収合意、或いは外国企業と国内企業が署名した資産買収合意
  • 被合併買収企業の定款、営業許可証
  • 被合併買収企業が債権者に通知、公告した証明、及び債権者が異議を提出したか否かの説明
  • 公証或いは認証を経た投資者の身分証明書或いは開業証明、関係する資本信用証明書
  • 被合併買収国内企業従業員の配置計画
  • 債権・債務処置、資産評価、買収合併当事者の関連関係に関し要求される資料
  • 買収する資産が政府機関の許認可に関連する場合、その許認可文書
設立認可取得後、30日以内に登記管理期間で設立登記を申請し営業許可証を取得します。設立後当該資産を経営活動に用いることが認められています。

対象企業が外商投資企業である場合

外国企業によるM&Aの対象が外商投資企業であるとき、対象企業は、外商投資企業の持分譲渡についての認可を得ることとなります。深?市貿易工業局の規定する提出資料の例をご紹介します。

基本資料としては以下の通りです。
  • 企業の董事長が署名する申請報告書
  • 企業の董事会会議で一致同意する株主変更決議
  • 企業各株主が持分変更を認める書面意見
  • 企業の設立認可文書及び変更事項の批准文書、批准証書、営業許可証
  • 最新の験資報告書
  • 持分変更後の修正合弁契約(合弁企業の場合)及び定款或いは補充契約及び定款、元の契約及び定款
  • 新たな投資者の登録登記証書(公証を経たもの)、資本信用証明
  • 持分変更記入後の《外商投資企業批准証書控え》(フォーマット)
  • 外国投資者が中国国内の文書送達を授権し委託する《法律文書送達授権委託書》(フォーマット)
  • 対象企業の株主間で全部或いは一部の持分を譲渡する場合、及び新たな投資者に全て或いは一部の持分を譲渡する場合、持分譲渡協議書
  • 企業が登録資本を増加するが、元の株主比率が変更する場合、及び新株主により登録資本を増加する場合、各株主が署名する持ち株変更協議書(注:持分変更後の修正合弁契約に既に持分変更協議の内容が含まれる場合は提出不要とされる)
(本文以上)

前回は中国のM&Aによる対中投資に関して、各M&Aの種類の定義について紹介しました。続いて、 それぞれの手続き手順を(1)外国企業(中国に設立された外資投資性企業を含む)が行うM&A  (2)中国に設立された外商投資企業が行う M&A に分けて紹介していきます。

(1) 外国企業が行うM&A

外国企業が行う、中国の国内に設立された各種の企業に対するM&Aについて以下順番に、①株式を取得する場合 ②新たに外商投資企業を設立し資産を合併買収する場合 ③対象企業が外商投資企業である場合 について説明します。また、2006年の関連規定で新たに導入された④外国投資者が株式権を以って国内企業の株式を買い取る場合についても説明します。

①外国企業が中国資本企業の株式権を合併買収

合併買収の同意
株式を取得する場合、合併買収後に成立した企業が、被合併買収中国企業の債権及び債務を継承するとされ、債権債務の処置に関しては審査認可機関へ報告しなければなりません。
譲渡価格については、被合併買収中国企業が国営企業でなければ、資産評価機関による資産評価は必ずしも必要ではありませんが、地域ごとに要求が異なるため確認が必要です。評価結果を明らかに下回る譲渡や、形を変えた国外への資本移転等は禁止されています。

合併買収当事者はお互いの関連関係について説明の義務があり、双方とも同一の実質支配者に属する場合はその実質支配者について審査認可機関へ公表し、譲渡価格の合理性を説明しなければなりません。

合併買収の合意文書には、次の内容を含めることとされています。
  • 合意各社の状況:名称(氏名)、住所、法定代表人氏名と職務・国籍
  • 買収する株式権或いは増資を引き受ける数量及び価額
  • 合意の履行期限と履行方式
  • 各社の権利と義務
  • 合意署名の日時・場所
認可申請
外国投資者が中国資本企業の株式の25%以上を取得することにより、中国資本企業は外商投資企業となる認可が必要で、その投資総額・企業の類型と業種に応じて市・省・国と異なるレベルの商務部門にて審査認可が行われます。申請手続き資料は以下の通りです。
  • 被合併買収企業の株主が外国投資者の株式合併買収に一致同意した決議(被合併買収企業が株式有限公司である場合、株主大会決議)
  • 被合併買収企業を外商投資企業に変更設立する申請書
  • 新定款、新合弁契約
  • 株式権買収或いは増資引き受けに関する協議書
  • 被合併買収国内企業の前年度の会計報告書
  • 投資者の身分証明書或いは登記証明及び資本信用証明文書(公証を要する)
  • 被合併買収企業が行っている投資の状況説明
  • 被合併買収企業及びその投資先企業の営業許可証
  • 被合併買収企業従業員の配置計画
  • 被合併買収企業の債権債務の処置、合併買収取引価額の根拠、合併買収の各社に関連関係が
存在するか否か について、審査認可機関が要求する資料
  • 合併買収後に成立する外商投資企業の経営範囲、規模、土地使用権の取得など他の政府機関の許認可が必要な場合はそれらの許認可文書を一括して送付すること。
譲渡対価の支払いについて、新たに設立された外商投資企業が国内企業を合併買収する場合には、新会社の設立3ヶ月以内に全額(延長申請により6ヶ月以内に60%以上、1年以内に全額)の払い込み、新会社の外資比率が25%以下となる場合には3ヶ月以内に全額の資本金、或いは6ヶ月以内に6ヶ月以内に全額の現物出資が必要です。増資引き受けの場合は認可後変更登記の際に20%の新登録資本の払い込みが義務づけられています。なお、人民元を支払う場合には、外貨管理局の認可が必要です。
(本文以上)

外国企業による中国への投資形態は、以前は中国企業との合弁企業も多かったのですが、市場の開放が進むにつれ中国での事業ノウハウが蓄積されたこともあ り、独資による設立・運営も増えています。更に、既存の企業を買収して効率よく中国市場への進出を図ったり、委託・外注先を内製化したりする目的でのM&Aの形態による投資も増えています。今回以降数回に分けて、中国でのM&Aに関する規定について紹介したいと思います。

中国のM&Aの種類

外国企業の中国でのM&Aに関し、2006年1月改正施行の会社法と、同年9月、2000年の暫定規定が改正施行された「外国投資者の国内企業合併買収に関する規定」にその主な種類と定義が記されています。また、外国企業が中国で設立した外商投資企業が中国内で行うM&A関連業務については、上述の規定の他、2001年11月に公布実施された「外商投資企業の合併と分割に関する規定(改正)」に記載されています。

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株式買収・資産買収

外国企業による中国資本企業の株式買収とは、外国投資者(外国企業或いは外国企業が中国国内に設立した外商投資企業)が、非外商投資企業の株主の株式権を買収することを言います。既存の株式の持ち分を取得する場合と、増資分を投資者が引き受ける場合があります。

一方、外国資本企業による中国資本企業の資産買収とは、外国投資者が外商投資企業を設立し、当該企業により中国資本企業の資産を協議買収して当該資産を運営すること、或いは外国投資者が国内企業の資産を協議買収し、当該資産を以て外商投資企業を設立して当該資産を運営することを言います。

合併・分割

企業の合併には吸収合併と新設合併の2種類があります。吸収合併とは、ある企業が他の企業を吸収して1社となりますが、吸収する方の企業が引き続き存続し、吸収される方の企業は解散します。新設合併とは、2つ以上の企業が合併して1つの新しい会社を設立し、合併する各社は皆解散することを指します。

一方、分割とは、1つの企業が会社の最高権力機関の決議を通じて2つ以上の会社に分割することを指し、存続分割とは、1つの企業を2つ以上の企業に分割し、分割前の企業が引き続き存続することを存続分割と言います。

解散分割とは、ひとつの企業が二つ以上の企業に分かれ、分割前の会社が解散し、かつ2つ以上の新企業を設立することを解散分割と言います。

審査認可と進出制限業種

外国資本が国内企業を買収することは、中国資本企業を外商投資企業に変更することになります。外資企業の設立に審査認可が必要であるのと同様に、商務部門による買収の審査認可が必要です。認可取得後、工商登記などの登記変更手続きを行うことになります。各種の手続きについて、次回以降に説明します。

また、外国企業或いは外商投資企業は、中国資本のどのような業種の企業でも買収することができるわけではありません。中国は外資の進出業種を、「外商投資産業指導目録」という業種リストにおいて「奨励・許可・制限・禁止」の4種類に分けています。奨励業種の一部及び制限業種において、出資比率に制限があるか、中国資本との合弁・合作のみが認められる業種については、外国資本が当該中国資本企業を100%買収することができません。禁止業種においては、外資での進出が禁止されており、買収そのものを行うことができません。

このような外資進出制限業種には、製造業では自動車の完成品や発電設備製造などが良く知られていますが、サービス業種では教育機関、医療機関、出版印刷、不動産開発、情報通信業種などがあります。

前回はM&Aにおけるデューデリジェンス(DD)について、目的や調査の範囲などについて紹介しました。今回は財務DDと法務DDで発見される問題点などについて説明します。

DDでは、企業の客観的な価値評価(譲渡価格)や譲渡契約、また買収後の運営管理のために確認すべき点という視点から問題点を洗いだすものです。香港や中国企業のDDで発見される問題点について、いくつかを列挙して説明します。

資産や収益関連の問題点

企業の純資産は譲渡価格算定の参考数値の一つですので、資産や収益に関する問題点を基に、決算書の純資産から企業の真実の純資産に修正することを目的とします。隠れた債務を探しだすことはDDの重要な任務の一つですが、売り手の情報開示状況などによって限界があることも確かです。
  • 売掛金の回収可能性:売掛金は後日回収予定の資産ですが、長期債権の手続き方針などを確認し、回収可能性を確認します。
  • 減価償却が正しく行われているか:建物や設備などは、使用するに従いその価値は減少するため、毎年正しく減価償却が行われているかを確認します。
  • 香港では長期服務金、中国では経済補償金と呼ばれる、従業員解雇時のコストが見込まれていない場合、実態を把握の上試算します。
  • 取締役や株主の個人的な費用と会社の費用を区別する方針について、確認します。香港・中国の特に中小規模の企業では、会社の経費で個人の費用を負担することがかなりの範囲で行われていることも多いため、企業の収益への影響度を把握する必要があります。
  • 雇用契約通りに報酬が支払われているか。香港会社の取締役報酬などが契約書で約定されているが、会社の資金不足或いは契約の未履行で報酬が未払いのようなケースがあります。

その他会計・税務関連の問題

  • 個人所得税の申告は会社に源泉徴収の義務がありますが、納税負担は個人であることから会社が従業員に便宜を図って、個人所得税を過小申告しているような場合があります。
  • 香港会社の関連中国法人費用が香港会社に合算して計上されていたり、中国事務所経費が一般管理費ではなく、売上原 価として計上されていたりすることがあります。適正な会計処理ではなく、また買い手の会計処理と異なり評価や分析がしにくいため、買収後は修正が必要とな る場合があります。

取引・決済

取引・決済状況では、主に買収後のビジネスの潜在的なリスクを確定させます。
  • 直近の年度及び最近の状況で、収入・売上総利益・税引前利益の動向を確認します。売上金額や経費の異常な増減などが無いか、買収後の経営に影響がないかを確認します。
  • 一定顧客が売上総額を占める割合が高い場合は、買収後のリスクとして留意すべきです。
  • 基本契約と個別契約:重要顧客及び重要仕入先との契約書について、品質或いはサービスの保証、リベートなどの状況に留意すべきです。
  • 事業に関連する商標や特許登録を行っていない場合、それらの侵害を受ける潜在リスクがあります。
  • 関連者間取引がある場合、買収後の取引に変化がないかどうか、確認する必要があります。関連者取引によって対象企業の意図的な利益移転などが無いかどうかもチェックのポイントの一つです。

組織・従業員

  • 会社の組織図に表示されない機構があります。例えば合弁会社、出資先などの関連会社です。こういった会社の存在、資本関係、運営管理は調査対象の是非や範囲、今後の拠点の機能、今後の買い手の支配力にもよりますが、実態を把握する必要があります。
  • 労務関連訴訟で係争中の訴訟が無いかどうかを確認します。
  • 製造業などでは、環境問題で基準を超えた環境汚染物質の排出が無いかどうか、確認をする必要があります。
(以上)

本連載の第15回(08年3月4日掲載)と16回(同18日)で、委託先工場の買い取りのケースの中でのデューデリジェンス業務について触れましたが、今回は更に詳しく説明したいと思います。

M&Aにおけるデューデリジェンスの目的

M&Aにおいては、デューデリジェンス、略してDDと呼ばれる買収監査業務は必須の過程となります。DDは会社の譲渡価格を決定するための判断材料となるだけでなく、譲渡後のリスクマネジメントのための大事な業務です。特に、日本企業が香港・中国の企業を買収する場合には、譲渡対象企業周辺の商習慣や税制などの投資制度、政策をよく知らないまま交渉を進めているケースが見受けられます。また現地の譲渡企業が譲渡価格についての要求を進めていく一方で、企業の業績や組織などについては情報を中々開示しないので、買い手にはリスク分析がしずらい、といったケースがあります。このような場合、買収目的の達成が危ぶまれます。譲渡企業の十分な理解と協力を得て、現地事情をよく知る専門家に依頼し、譲渡企業の実態と潜在リスクについて効果的な調査活動を行うことが重要です。調査活動の結果、譲渡自体の是非を問うことになる場合もあります。

調査の内容

日本企業同士の買収においては、企業価値算定を主な目的として財務DDのみに注力するかもしれませんが、香港・中国 での企業買収に際しては、対象企業が日系或いは現地企業に関わらず、目的に沿った調査の範囲を検討する必要があります。グループ企業や拠点の多い企業につ いても同様で、目的に応じてどの拠点の調査が必要かは異なります。

調査は会計士や弁護士などの専門家に依頼しますが、買い手企業は時間と費用が限られた中で、買収の目的を十分に専門家に伝え、調査範囲を決めなければなりません。

調査のステップは表の通りです。買い手企業の依頼からすぐに調査に入ることができるわけではなく、調査範囲を打ち合 わせ確定するには数日の時間を要します。調査範囲確定後、対象企業側で調査範囲の資料やデータを準備する時間が必要です。現場調査活動の前に資料がそろえ ば、調査活動がスムーズに進められます。

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情報開示と調査の難しさ

DDは秘密保持が最も重要です。譲渡双方の企業と、調査対象の情報に関わる人は秘密保持の義務を負うため、関係者間 でそれぞれ、秘密保持契約を締結します。売り手側の従業員が譲渡については知らされていない場合には、商取引上の監査活動といった名目で現場に入ることも あります。

売り手企業にとっては内部情報を探られる気分の悪さもさることながら、意図的に情報を開示したくない理由があり、 DDに非協力的なケースがよく見受けられます。このような場合には、買い手企業の方から、実態を知るために必要な調査であり心配をしないよう、説明してい ただいたり、現場調査活動に立ち会っていただいたりします。

中国・香港企業の買収DDを行う場合の専門家は現地の弁護士・会計士を起用することになります。現地弁護士・会計士 は日本企業のニーズを踏まえているとは限らず、また問題点の提起も、当然地域の投資や税制、法律などを知っている前提で報告書を作成します。記述を正確に 読み取ること自体、日本企業にとっては手間のかかる作業になります。

次回は主要な調査範囲である財務DDと法務DDで発見される問題点などについて説明します。

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事業環境の変化

日本の中小企業にとって事業承継は大きな問題となっていますが、同じような状況が香港・中国華南地域でも見られます。日系企業進出の歴史が比較的古い香港華南地域では、70 年代後半から香港経由の中国進出があったと言われます。当初の進出は大企業のほか中小企業のオーナー経営者によって行われ、大企業が布石を打ちブランドを 確立していく一方、技術と同時に小回りの利く中小企業が、おもちゃ、雑貨、衣料品を始め、様々な業種で、香港に貿易機能、華南地域に生産拠点を置いて活発 に創業し、成長させていきました。

しかし20数年を経て、企業内部では経営者の方と事業内容が世代交代期を迎えました。世代交代には、親族や従業員による事業の継続がまず検討されますが、親族が既に希望の職業を別途目指しており、また若い世代が製造業にあまり興味を持たない、持っていても 経験不足といった、継続困難な状況があります。一方、従業員は経営者の志や方針をよく理解していても、経営者となるには経験・能力が不足している、或いは 譲り受けのための資金の用意が難しいといった状況があり、世代交代が難しいのです。

企業の外部環境も変化しています。生産拠点である珠江デルタ地域の人件費や各種コストの上昇によって事業の採算が悪化、単純作業だけでは付加価値が上がらない、また輸出加工だけではなく国内市場への対応が必要など、事業の形態や内容にも変更が必要になってきています。

第三者への事業承継(M&A)

親族や従業員に後継者候補がいない場合でも、事業を継続し、継続して従業員に職場を提供したいと、第三者への譲渡(M&A)が検討されます。従業員も今後の雇用継続が約束される譲渡はむしろ歓迎するのではないでしょうか。譲渡の相手として日系企業を望む場合、狭いコミュニティですから取引先や知り合いの経営者へ直接打診する場合もありますが、当事者同士、基本的には合意に達しても、譲渡価格や、譲渡契約の詳細内容を詰めるため、専門のアドバイザーに相談したり、交渉の仲介を依頼したりするのもよい方法です。

また、事業提携のメリットは、譲渡企業(売り手)の側には分からなくとも、譲り受け企業(買い手)にはより多くのアイディアがあるものと予想されるので、仲介者を通じマッチングを行えばより多くの買い手候補が期待できます。但し秘密保持は重要となります。

譲り受け企業(買い手)によるデューデリジェンスの目的は主に、経営上のリスクの発見と、譲渡価格の参考となる企業評価の算出です。香港華南地域の来料加工廠などの潜在的なリスクには経営者にも把握仕切れないものがあり、専門家による洗い出しにより、トラブルの予防対策を行うきっかけともなります。

事業承継が大前提のM&Aでは、譲渡価格にもまして、後日の事業の継続と発展のための計画と実行が重視されます。いわゆるポストM&Aです。後継者が同業種の場合、提携後のスムーズな事業の融和が必要と思われますし、新規業種への投資となる場合には、事業環境や経営管理上の違いを早期に理解し内製化をどのように図るかを検討しておかなければなりません。譲渡企業の経営者の方は2-3年の間、顧問或いは取締役として移行のサポートを要請される場合が多いと思われますので、事業承継の計画を早期に立てられることをお勧めします。

(以上)

(この連載で紹介するM&Aのケースは、M&A体験者から伺った実例を基に編集したものです。M&Aの実務に対し何ら保証するものではありません。)