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[華南ビジネス] 保税設備の移動について

加工貿易業務を行う企業にとって、移転、法人化、閉鎖などの際に最も煩雑な手続きの一つが保税の設備の処理です。

税関の保税貨物に関する規定に基づき、関税・増値税を免除されて輸入した設備や、進料・来料加工貿易契約に基づき保税輸入された無償提供設備は、輸入日から5年間、税関の保税貨物監督管理対象とされており、工場移転や加工廠の法人化、または閉鎖により転売する場合などは、税関の認可を経た上で、以下の処理を行うことが予想されます。

  1. 積み戻し輸出(及び再輸入)
  2. 結転(転廠)処理による国内留保
  3. 税関監督管理解除手続きによる国内留保

この内、積み戻し輸出とは、実務的には香港への輸出或いは保税物流園区のような、保税監督管理区域への輸出を行い、その後後即再輸入するケースが多く、これにより加工廠の法人化や第三者への転売に際して設備代金を対外送金することができます。再輸入時の中古機器備案と、許可証管理対象商品の備案手続きを輸出前に行っておきます。

結転及び解除手続きによる国内留保については、1998年以前に輸入された設備については場所の移転を認めないという取扱がありますので注意が必要です。

結転手続きは、原則的には同一投資者の工場間で可能とされています。なお、2009年1月1日より加工貿易契約に基づく無償提供設備の輸入に対する増値税の免除優遇は取り消されていますが、今年6月30日までに関税・増値税免除にて輸入された設備が結転手続きを行えるかどうか、管轄地域の税関に確認する必要があります。

解除手続きは下記の2通りの設備状況が想定されます。

A.保税監督管理期間を満了していない(輸入から5年以内の)設備:
税関では、輸入保税設備の償却を5年とみなし、5年以内に国内で移動・譲渡される場合には、税関の公式に基づく設備価値に対し関税・増値税が課税されます。
なお、この際に、設備価値に対しては税関の価格査定が行われます。元の輸入通関時に設備価格を実際より低く申告している場合、査定により修正後の価格に基づいて課税されることがあり、設備取得時の価格証明資料が必要となる場合があります。

B.5年間を満了した設備:
輸入から5年をすぎた設備は、税関の保税としての償却期間が終了し、解除手続きに際し関税・増値税の納付の必要がありません。

上記のような保税設備の税関への処理終了後初めて設備を移管することができます。移管
に際し、移管元は、自社で使用した中古の固定資産の売却として、一般納税人の場合4%の税率の半額を納税、小規模納税人の場合は2%を納税する必要があります。計算式は次の通りです。

  • 一般納税人:
    売却価格=税込価格/(1+4%)
    納税額=売却価格×4%÷2
  • 小規模納税人:売却価格=税込価格/(1+3%)
    納税額=売却価格×2%

なお、中古の固定資産売却に際しては、普通発票を発行しなければならず、増値税専用発票を発行することはできません。このような計算式で納税する増値税は、低税率適用、簡易方法で計算する増値税とされており、仕入れ税額を控除することはできません。

(以上)