国際会計税務・相続

日本と香港の相続税・贈与税の動き

今年3月、消費者金融大手「武富士」の前会長長男による贈与税1600億円申告漏れの件が新聞等で大きく報じられました。申告漏れ額は個人としては過去最高で、追徴課税は1300億円を超えるとされます。ここ香港も、一連のスキームの重要な舞台としてかかわっていましたので、今回は、これに関連する話題を取り上げてみます。

スキームの概要

今回のスキームを単純化してみますと、

  1. 97年、前会長夫妻はオランダ法人を設立
  2. 98年3月頃、このオランダ法人に夫妻の保有する武富士株式を売却
  3. その前後に長男は日本から香港に移住
  4. 99年12月、このオランダ法人株式を夫妻から長男に贈与(株式時価約1600億円)

ポイントは、②により、前会長夫妻の日本国内財産である武富士株式がオランダ法人株式という国外財産になったこと、③で、長男が日本の非居住者になったこと、④長男は、当時のルール(日本非居住者が受贈する国外財産には、日本の贈与税が課されない。図表参照)により日本で申告をしておらず、また贈与税の規定がない香港でも税金を納めていなかった、ことです。

日本の税務当局の見解とその後の法改正

これに対し、東京国税局は、香港に在住したいた間の長男の実態に着目し、「生活の本拠」は日本国内にある(すなわち、日本居住者として日本国外の財産も課税対象)として、贈与税を課してきました。前述③を認めなかったわけですが、当時、長男は、年間のかなりの日数を香港で滞在するとともに、香港IDカードを保有し、ベンチャー投資の香港法人の代表を務めていたといわれますので、日本の居住者か否かの判断は非常に難しいところだったと思われます。

実はこのスキームは、以前より資産家の一部にはよく知られた節税方法だったのですが、当局としても無視できない流れとなってきたためか、2000年の相続税法の改正で、前述ポイント④のルールの縛りをきつくして、この抜け道も簡単には使えなくなりました。

日本の贈与(相続)税の考え方

改正前 国内財産 国外財産
日本居住者 課税 課税
非居住者 課税 非課税(当時)

日本国籍を有する者は、贈与した者または取得した者が、贈与前5年以内に国内に住所を有したことがある場合には、譲与された国内外問わず全ての財産が課税対象となった。

香港での動き

香港では、贈与税の規定はないものの、相続税(正確には遺産税)は15%と低率ながら存在します。ただし、香港政府は、金融業や資産管理業の育成、ひいてはその発展による増収を図るために、相続税廃止の方向で進んでいます。

税収確保のために、締め付けをますます厳しくする日本、一方、緩和して資金の流入を狙う香港、対照的な動きが大変興味深いところです。

以上