香港 お金の管理

[お金の管理] (4)資金管理

今回は「お金の管理」の中でも一番重要なテーマです。さて、総経理として一番重要な「お金の管理」とは何でしょうか?あまりに基本的なことですので、普段は担当者に任せきりで軽視しがちなのですが、最も大切なのは「資金繰り」です。

会社は利益を上げることが使命ですが、まずは倒産しないということが大前提となります。倒産しないためには利益を上げていればいいんだろうと思われますが、実は損益は倒産には直接関係しません。例えば、不動産会社をイメージしてください。この会社は前期最高益を計上し、会社の業績には文句の付け所はないとしましょう。しかし、ある時点から銀行が借入金の借り換えに応じてくれなくなったら、どうなるでしょうか?不動産会社ですから、当然多額の借入金があります。業績も良いのだからこれまで通りに借り換えに応じてくれるものだと思っていたところに「現金で返済してくれ」と言われたら、その返済資金を短期間に準備できない限りは倒産せざるを得なくなります。これはこのところよく日本で起きている現象ですが、このような業績に問題がない会社でも、業績以外に問題があったり経済情勢が急激に変わったりした場合には、実際に銀行が借り換えに応じてくれないばかりか他に貸してくれるところも現れない、ということが起き得るのです。逆に今度は、スナックをイメージしてください。このスナックは客の入りも悪く、毎月大幅な赤字を続けています。しかし、このスナックはどんなに赤字を出していようと、資産家のスポンサーがいる限りは倒産しません。

このように、倒産に業績は間接的に関係してきますが、あくまで直接的に関係するのは「支払資金が無くなる」ことなのです。

さて、それでは支払資金が無くならないように管理するためには、どのようにしたらよいでしょうか?方法としては、短期的には具体的な資金繰り表の作成、中長期的には大局的な資金計画表の作成が管理上有効です。

【短期的な管理 – 資金繰り表】

銀行口座別に、毎日の出金予定と入金予定を入力した表を、一般的に資金繰り表と言います(表1)。

(表1)

itakura200810-1

この表を作成する目的は、短期的に支払資金が無くならないように管理することです。例えば、預金の合計額では残高がプラスであったとしても、口座別にみると残高がマイナスとなる口座が1つでもあったら、それは支払資金が足りていないということですので、別の口座から送金手続をしなければなりません。

このように、どの口座も間違っても残高がマイナスになってはいけないことから、出金予定と入金予定はできるだけ正確に見積ることと、また予期していなかった突発的な出金や入金の遅れに備えて、ある程度の余裕残高を残しておくことが重要です。

一方、短期的な管理目的であることや、何ヶ月も先まで正確に入出金額の見積りを行うはできないことから、常におおよそ3ヶ月程度先まで更新しておけば目的は達成できるはずです。

【中長期的な管理 – 資金計画表】

毎月、どのような理由によりどの程度の入出金があるのかをまとめた表を、一般的に資金計画表と言います(表2)。

(表2)

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この表を作成する目的は、中長期的に支払資金が無くならないように管理することです。

つまり、この表で言えば2行目の「預金残高」がどのくらいあるかということをできるだけ正確に把握することがポイントです。

この例として作成した資金計画表では、08年4月から新規に事業を開始した貿易会社を想定しています。また、売掛金・買掛金ともに支払条件は、締め後1ヶ月払いとし、借入金は毎月HK$100,000ずつ返済するものとしています。

この表を作成する上で一番気をつけないといけないことは、当たり前と思われるかもしれませんが、実際の入出金額の見込みを入力しなければならないことです。例えば、普段見ている損益計算書の売上金額と実際の入金額には差があるという点を見落としがちです。この例では、入金条件が締め後1ヶ月払いですので、入金は売上月より1ヶ月遅れることになります。また、実際には得意先ごとに条件が異なるはずですので、主要な得意先の入金条件を考慮しないと正確な資金計画表は作成できません。

また、当然の性質として、通常は売上に先立って仕入があります。仕入れてもすぐに売れるわけではなく、在庫として保管されている期間もあります。従って、ほとんどの場合、入金よりも先に出金がきます。この例では、損益で見ればおそらく利益は計上しているはずですが、仕入と売上の時点の差の分だけ、資金収支は一時的に悪化しています。

この表は中長期的な管理目的であるため、通常はおおよそ1年程度先まで作成します。つまり、おおよその損益の見込みが立っている時点まで作成し、投資計画などと合わせて検討を行うことによって、その実現のためには手許の資金で足りているか、新たな借入が必要なのか、買掛金の支払い条件を延ばしてもらうことによって対応できるか、などいろいろな資金繰り上の対策を前もって行うことができるわけです。

このように資金繰りは重要ですので、会社の管理状況を念のため確認してみてください。