中国 企業所得税

中国・中国現地法人から香港親会社への配当時の源泉税優遇税率の享受について

中国現地法人への投資は日本からの直接投資の他、香港法人による投資も多く、特に華南地域では香港法人からの投資や商流が多く見受けられます。内地と香港の租税協定に基づき、配当時の源泉税申告時には優遇税率が享受できるケースがありますが、昨今ではこのような優遇の享受に対する税務局の検査が比較的厳格に行われ、提出資料も多岐に渡っています。以下に中国側の実務について紹介します。

1. 配当所得に対する企業所得税

中国の企業所得税法(国内法)において、非居住者企業※1が中国国内源泉所得を取得する場合の適用税率は20%としたうえで、税収優遇措置として10%に軽減するとされています。※2

中国の居住者企業※1同士の配当所得は、税収優遇措置により免税となっています。※3

中国居住者企業が、日本居住者企業へ配当送金を行う際、日中租税条約に基づき、10%の源泉税が課税され、中国居住者企業により配当額から差し引いて申告納付(源泉徴収)することになります。

これに対し、中国居住者企業が香港居住者企業へ配当送金を行う際、香港親会社の持分が25%以上の場合は源泉税率が5%に軽減され、25%未満の場合は10%となります。

中国居住者企業の投資者が法人ではなく自然人である場合、自然人が受け取る配当所得に対しては、中国の個人所得税法では税率20%とされています。自然人が外国籍である場合、これまで免税優遇がありましたが、最近の規定で個人所得税法と同じ20%に変更されました。但し、租税条約/協定がある場合にはそれに従うことになり、条件に符合すれば、日本、香港の租税条約/協定の優遇を享受することができます。

2. 内地と香港の租税協定に基づく、中国から香港への配当送金時5%の源泉税率を享受するための条件

香港の居住者企業に対し5%の軽減された源泉税率を認めることに対し、香港企業の「実態」に求められていたのは簡単に言えば少なくともオフィスがあり、人員がいるということでした。且つ、この審査に対し、まず香港居住者企業が香港の税務当局に対し「居住者証明」を申請取得することが重要な根拠資料の1つとされていました。しかし昨今では、これだけでは5%を認められるには十分ではありません。

2-1. 受益者判定に不利な要素

配当所得を受け取ることにより当該所得に関する権利や財産の支配権を最終的に有する者を「受益者」といい、租税協定における優遇税率を享受して配当を受け取る香港法人(=租税協定を享受する申請者)が受益者に該当するかどうか、その判定に不利な要素として、実質的な経営活動/投資活動に従事していないことの他、「所得受領後の12か月以内に50%以上を第三国(地域)の居住者に支払う義務を有するか実際に支払った」ことが挙げられています。※4

更に、申請者の財務諸表を要求し、香港法人の事業規模、管理費用や董事報酬、給与費用の発生状況、中国居住者企業との関連取引や配当所得以外に申請者企業自身の収入或いは利益の発生状況を確認し、申請者企業自身の事業活動の占める割合が多いことを受益者資格要件の一つとして挙げるケースも見受けられます。確かに過去の規定にも「申請者企業の資産、規模、人員配置が小さい」ことは受益者判定に不利とされていた※5ものの、最近では財務諸表の提出や費用明細の開示など根拠資料の提出要求は以前と比べて多岐にわたっています。

2-2. 受益者と認められる他の条件

前述のように申請者企業が受益者判定に不利な要素に該当している場合でも、受益者身分が認められるとされる条件があります。

申請者企業は受益者条件に符合していないが、申請者の100%持分を直接或いは間接に有している者が受益者条件に符合し、且つ以下のいずれかの情況に該当する場合、申請者が受益者身分を有すると認める。

  1. 受益者条件に符合する上述の者が、申請者の所属する居住国(地域)の居住者である。
  2. 受益者条件に符合する上述の者は申請者の所属する居住国(地域)の居住者ではないが、当該者と間接的に株式を保有する場合の中間層はいずれも条件に符合する。

申請者が以下のいずれかに該当する場合、受益者の判定を行わず、直接受益者身分を認めることができる。

  1. (租税協定)締約相手国の政府
  2. 租税協定締約相手の居住者で且つ締約相手国において上場している企業
  3. 締約相手居住者個人
  4. 上記(1)〜(3)の中の1人或いは複数の者が申請者の100%持分を直接或いは間接に有している、且つ間接に持分を有している場合の中間層は中国居住者或いは締約相手の居住者である。

3. 配当送金時の源泉徴収手続き

現在、源泉徴収申告は、中国居住者企業が電子税務局のシステム画面で直接入力し、送金先の香港居住者企業が内地と香港の租税協定の優遇を享受する場合、「租税協定を享受する非居住納税者情報報告表」を合わせて入力、送信するのみで、各種根拠資料のアップロードは、この時点では要求されていません。

これらの資料は、源泉税納付、配当送金も実施完了の後日、若しくは数年後の場合もありますが、税務局の国際税収担当部門より抜き打ち的に通知を受けて検査される時に要求される可能性のある資料となります。要求された資料を提出できなければ、受益者資格を証明できないとして直接否認される可能性があります。また一旦検査が開始されれば、過去年度の遡及を行う可能性もあり、遡及年数は一概には言えませんので、一旦享受した5%が検査を経て否認される場合、滞納金等も含め影響が大きくなります。このためグループとしてこの租税協定の優遇を享受できるか否かにつきよく検討し準備する必要があると思われます。

注記

  • ※1:居住者企業とは、中国国内で法に基づき設立されたか、或いは外国の法律に基づき設立されたが、実際管理機構が中国国内にある企業のこと。一方で、非居住者企業とは、外国の法律に基づき設立され且つ中国国外に管理機構がある企業か、若しくは、中国国内に機構・場所を設立し或いは設立していないが、中国国内源泉の所得を有する企業
  • ※2:企業所得税実施条例第九十一条
  • ※3:企業所得税法第二十六条(二)
  • ※4:国家税務総局2018年第9号
  • ※5:国税函[2009]601号(上記2018年9号により全文廃止)

深センNAC名南コンサルティング 浜田かおり
(2026年9月作成)

※各地の運用状況が異なる場合があります。各所在地にて再度ご確認ください。