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[実務入門] (15) 個人所得税法の改正

5月まで意見公募を行っていた「個人所得税法改正案(草案)」につき、6月30日、全国人民代表大会常務委員会にて改正内容が決定され、改正個人所得税法が2011年9月1日から施行されます。改正点は次の通りです。

本記事は、現在NNA.ASIAで連載中の「ここに注目!中国会計・税務実務入門」を転載したものです。

(1) 基礎控除額を3,500元に増額

給与・賃金所得につき、課税所得額を求める際に毎月の給与額から控除する基礎控除額が、現行の2,000元から3,500元になりました。

これにつき、財政部税政司の王建凡・副司長は、基礎控除額の引き上げは、物価上昇などにより生活コストが上昇していることに対する手当てであり、この引き上げにより、給与所得者の納税対象者が現在の約8,400万人から2,400万人となり、約6,000万人が個人所得税を納める必要がなくなるとしています。

なお、外国人の基礎控除額については、改正内容に盛り込まれていません。変更がある場合には、外国人の基礎控除額についての規定がある「個人所得税法実施条例」を改正することになると思われますが、今回の個人所得税法改正の趣旨が中低所得者の税負担の軽減にあることから、外国人の基礎控除額の増額は期待できそうにありません。

(2) 給与・賃金所得の税率表の改正

給与・賃金所得の累進課税につき、最低税率をこれまでの5%から3%とし、また、現行9段階としている税率区分のうち、15%と40%の区分をなくし7段階としています。各税率の課税所得額の範囲も変更され中低所得者の税負担が軽減されるように改正されています。

表1は、給与・賃金所得の税率表につき、現行と今回の改正内容を比較したものです。

(3) 申告納税期限を翌月15日に

現在翌月7日までとされている源泉徴収義務者および納税者の申告納税期限が、草案通りに翌月15日までとなりました。他の税目である企業所得税、増値税、営業税などの通常の申告納税期限が翌月15日となっていることに合わせたものです。

(4) 個人事業者の税負担を軽減

個人事業者の生産・経営所得および請負経営・リース請負経営所得に関し、草案通り、現行の累進税率である5%から35%の税率区分は変更せず、各税率区分の課税所得額を引き上げることにより、全体的に税負担が軽減される改正となっています。

表2は、個人事業者の生産・経営所得および請負経営・リース請負経営所得の税率表につき、現行と今回の改正内容を比較したものです。

個人所得税所得速算表