中国

[実務入門] (32) 原価計算 (1)

今回から、原価計算について説明していきます。まず、「原価」と「費用」の違いは何か、という非常に基本的な点を確認したいと思います。

「旧」企業会計準則・企業会計制度上では、以下のように規定されています。

  • 費用とは、企業が商品販売、役務提供等、日常活動で発生する経済利益の流出をさす。
  • 原価とは、企業が製品生産、役務提供で発生する各種の消費をさす。
  • 企業は期間費用と原価の境界を合理的に区分しなければならない。期間費用は直接当期損益に計上しなければならず、原価は生産される製品、提供される役務の原価に計上しなければならない。

ひらたくいうと、製品の売上や役務に紐つけて損益計算書に計上すべき支出が原価、期間(1ヶ月や1年)に紐つけて損益計算書に計上すべき支出が費用ということになります。

本記事は、現在NNA.ASIAで連載中の「ここに注目!中国会計・税務実務入門」を転載したものです。

それでは、「旧」企業会計準則・企業会計制度上、原価に集計すべき費目は決まっているのでしょうか。

  • 企業が生産経営の過程で消費する各種の材料は、・・・原価、費用に計上しなければならない。
  • 企業が従業員に支払うべき賃金給与については、・・・原価、費用に計上しなければならない。
  • 企業の生産経営過程において発生するその他の各種費用は、・・・原価、費用に計上しなければならない。
  • 商品の生産や労務役務の提供等直接材料費、直接労務費、商品代価そのほか直接費用は、原価として直接集計をし、各種の間接費用については原価に一定の分配基準に従って原価に配賦する。

このため、直接材料費のみならず、各種の労務費や間接費を製品原価に含めて原価計算を行う必要があり、月末の「製品」「仕掛品」残高の中にも労務費や間接費も含まれている必要があるでしょう。

ところで日本では、原価計算は昭和37年に大蔵省企業会計審議会より出ている「原価計算基準」に規定されており、改訂もなく今日まで有効な唯一の原価計算に関する会計基準となっています。
ここでは「直接費」「間接費」の定義について触れていますので、基本的な点ですが確認してみましょう。

  • 製品に対する原価の発生の態様、すなわち原価の発生が一定単位の製品の生成に関して直接的に認識されるかどうかの性質上の区別による分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを直接費と間接費とに分類する。
  • 直接費は、これを直接材料費、直接労務費及び直接経費に分類し、さらに適当に細分する。
  • 間接費は、これを間接材料費、間接労務費及び間接経費に分類し、さらに適当に細分する。
  • 必要ある場合には、直接労務費と製造間接費とを合わせ、または直接材料費以外の原価要素を総括して、これを加工費として分類することができる。

したがって、外部の立場から中国の製造業会社の財務分析を行う場合には、どのような費目を原価に含めて計算しているのか確認することは重要です。
また、親会社の日本法人と子会社の中国現地法人という観点からは、もちろん原価計算方法を統一することが望ましいです。
しかし、一方で企業会計制度上以下の規定があることをご留意ください。

  • 企業は当該企業の生産経営上の特徴および管理上の要求に基づき、当該企業に適応した原価計算対象、原価項目及び原価計算方法を確定しなければならない。
  • 原価計算対象、原価項目および原価計算方法は、いったん確定したあとは随意に変更してはならず、変更が必要な場合、管理権限に基づき、株主総会、董事会、マネージャー(工場長)会議や類似機構の認可を得ると共に、財務諸表注記において説明を行わなければならない。

次回も引き続き原価計算について解説する予定です。