中国 粤港澳大湾区

中国広東省・深圳市の小売/飲食業企業関連規定

広東省に進出する日系小売業・飲食業種の企業も増加傾向にある中、よく見受けられるライセンス・届出手続き関連の規定について紹介する。

1.食品経営許可

1.1 深セン市食品経営許可実施弁法(試行)

(1) 許可内容

一地一証原則。経営場所毎に経営許可を取る。許可証の有効期間は5年。

経営主体を食品販売経営者、セントラルキッチンや仕出しを含む飲食サービス経営者、学校や企業・事業単位内食堂に分けている。 農産品販売は食品経営許可が不要、食品生産者が生産場所で販売する食品は、食品経営許可が不要。50人以下或いは30㎡以下の企業・事業単位食堂(学校を含まない)、及び、美食節、展示即売等の食品経営活動は、暫時、食品経営許可の範囲に含まれない。

     

(2) 申請条件

申請主体は、企業法人やその分子機構、事業単位等、営業許可証に記載される主体を申請者とする。工業園区内食堂は請負の引受企業による申請も可。経営許可証が行政当局により取り消された企業やその法定代表者、責任者等は5年以内は申請資格がないとされる。

(3) 申請資料

業態や経営項目に基づき《深圳市食品経営単位現場検収申請表》《深圳市食品経営許可証申請表》等の詳細を参考して申請を提出することとなる。

【新規申請】、名称、法定代表者、住所(非経営場所)変更時【変更申請】、有効期限30日前に【更新申請】、許可証遺失時の【遺失申請】、経営終了時の【抹消申請】があるが、新規申請時の資料は以下の通り。

【新規申請】:食品薬品監督管理部門へ以下の資料を提出する。

  1. 《食品経営許可申請書》原本1部
  2. 営業許可証等のコピー及び原本提示(現場検収時提出済み、或いは電子営業許可証提出済みの場合は不要)
  3. 従業員健康管理制度及び研修管理制度、食品安全自己検査報告制度、食品経営フロー及び統制制度、場所及び施設消毒と保修制度、入荷検査と記録制度、食品保存管理制度等食品安全規定制度一式。
  4. 法定代表者或いは責任者、食品安全管理員、手続き担当者の身分証明書コピー、原本提示。食品販売経営者/飲食サービス経営者/単位食堂 の安全管理員訓練テスト合格証コピー、原本提示。(更にセントラルキッチン、配送企業、3000人以上単位食堂等、各種業態に対応する関連合格証)手続き担当者の授権委託書1部。
  5. 合法使用経営場所の承諾書。
  6. 自動販売機の場合、その設備合格証、設置場所、経営者名称、住所、連絡方法、食品経営許可証の公示方法等の材料。
  7. 現場検査が必要な場合、《現場検収検査意見》1部
  8. 加工食品や酒類のばら売りを行う場合、生産者との合作協議書
  9. 飲食サービスに酒の醸造が含まれる場合、資格を有する第三者機構の発行する、安全検査合格書

(4) 手続き手順と所要期間

新規/変更/改造・増床等の場合、まず現場検収申請を提出し通過後、意見書発行から20営業日に申請提出しなければならない。包装済み食品販売、ネット販売、自動販売機販売は現場検収申請が不要とされる。現場検収(改善事項を除く)、許可証申請はいずれも提出から10日以内に完成するとされている。

1.2 関連規定

  • 《中華人民共和国食品安全法》
  • 《中華人民共和国食品安全法実施条例》
  • 《食品経営許可と備案管理弁法》
  • 《食品経営許可審査通則》
  • 《深セン市食品経営許可実施弁法(試行)》
  • 《深圳市食品経営許可審査標準(試行)》

2.フランチャイズ経営許可

フランチャイズ経営は中国語では「商業特許経営」と呼ばれており、国の商業特許経営管理条例の規定によると、登録商標、企業ロゴ、知的所有権、ノウハウ等の経営資源を有する企業(フランチャイザー)が、契約によりその使用許可をその他の経営者(フランチャイジー)に与え、その契約に約定する統一した経営方式で経営を展開することにより、特許経営費用(フランチャイズ費用)を支払うビジネスモデルであるとされている。

フランチャイズ経営に従事する企業は、商務部の「商業特許経営情報管理」プラットフォームにおいて備案(届出)申請しなければならない。備案した企業の各種情報は、同プラットフォームに公示され随時検索することができる。

2.1 フランチャイズ経営備案手続き

  フランチャイズ経営の企業の条件として、2つの直営店の経営実績が1年超であることとなっており、
   初回のフランチャイズ契約締結日から15日以内に、備案手続きを行うこととされている。

(1) 商務部の「商業特許経営情報管理」プラットフォームにて次の資料を提出する。

  • 商業特許経営の基本情況
  • 中国国内のフランチャイジー店舗分布情況
  • フランチャイザーの市場計画書
  • 営業許可証等の主体資格証明書
  • 商標権、知的所有権等、経営資源の登録証書
  • 直営店経営根拠資料
  • 初回のフランチャイズ契約書
  • フランチャイズ契約書雛形
  • フランチャイズ経営操作ガイドの目録
  • 法定代表者の署名押印したフランチャイザーの承諾書
  • その他当局要求資料

提出資料が国外で作成されたものである場合、認証手続きを経たもの。

(2) フランチャイズ経営者は毎年3月31日までに、前年度に締結、解約、終了、更新したフランチャイズ契約情況を、設立備案した部門に報告しなければならないとされている。

2.2 罰則規定

  1. フランチャイズ経営者が規定通りに備案していない場合、商務主管部門より期限内に備案させ、
  2. 且つ、1万元~5万元の罰金を科すとされる。期限を過ぎても備案しない場合、5万元~10万元の罰金を科し、
  3. 且つ公示される。

上記の2.1 (2)の規定に違反する場合、市レベル以上の商務主管部門より期限内に改善させ、1万元以下の罰金を科すことができる。情況が深刻な場合、1万元~5万元の罰金を科し、且つ公示される。

2.3 関連規定

  • 《商業特許経営管理条例》 (国務院令 第485号)
  • 《商業特許経営備案管理弁法》(商務部令2011年第5号、商務部令2023年第3号修正)

3. プリペイドカード式経営備案とコンプライアンスガイド

    

中国でプリペイドカードというとカード発行会社が発行し、地域や企業の制限なく使用できるもの(多用途のプリペイドカード)と、サービス業に従事する企業自身が発行し、当該会社若しくは同一ブランドの商品やサービスにのみ使用できるとするもの(単一用途のプリペイドカード)があるとされている。

単一用途のプリペイドカードについて、スーパー等で発行されるショッピングカードがよく見受けられる。また飲食店などの小売り業種ではプリペイドカードによる割引などで顧客を勧誘することも多い。一方で、多額の前払いが消費されないうちに閉店したり、倒産して連絡不能になったりするなどのケースもあり、プリペイド決済を行う対象業種の企業は商務部門への備案が義務付けられるか、業種管理部門への備案が奨励されている。なお、プリペイドには記名式/無記名式がある。また、チャージカード/会員カード等とは区別するとしている地域もある。以下に、全国範囲の備案規定と、深圳市のガイドライン文書を紹介する。

  

3.1 「単一用途の商業プリペイドカード企業備案」

小売業、ホテル、飲食、消費者サービス業の企業が中国国内で単一用途のプリペイドカード業務を展開する場合、《単一用途の商業プリペイドカード管理弁法(試行)》の規定に基づき商務部に備案するものとし、次の資料を提出するものとする。

単一用途のプリペイドカードとは、上述の業種の企業が発行する、当該会社或いはグループ、同一ブランドのライセンス経営体系内のみで提供する商品やサービスについて交付する前払い証憑で、磁気カード、ICカード、紙面の券などの実体カード及びパスワード・シリアルコード・グラフィック・生体認証信用情報等を用いるバーチャルカードを指している。

(1) 《単一用途カード発行企業の備案表》
(2) 企業の営業許可証(副本)コピー

一定規模以上のカード発行企業とグループカード発行企業はこのほか規定に基づき追加資料を提出する。

3.2 コンプライアンスガイドの添付表に列記される領域の企業

上記の指定の業種以外の経営者で、コンプライアンスガイドの添付表に列記される領域の企業は、それぞれ対応する業種管理部門に自主的に備案手続きすることを奨励する。提出資料は以下の通り。

(1) 経営主体名称、統一社会信用コード、経営住所、連絡担当者、連絡方式
(2) 不動産権利証明書か若しくは賃貸契約書

3.3 プリペイド方式

プリペイド方式で商品或いはサービスを提供する場合、契約には以下の内容を含むことが推奨されている。

(1) 経営者の名称、責任者、登録住所、連絡方式、統一社会信用コード
(2) プリペイド証憑の名称、種類と機能、及びその購入、チャージ、残高確認、使用、返金方式、記名方式の場合紛失、譲渡方式
(3) 請求内容と基準
(4) 当事者の権利、義務
(5) 前受資金の管理方式
(6) 採用する契約履行保障措置
(7) 紛争処理原則と違約責任
(8) 関連法律規定と規範性文書規定

3.4 資金管理

プリペイドカード発行会社は前受資金を厳格に管理し、企業の主要な業務のみに用い、不動産や株式投資、融資等に用いてはならない。小売業、ホテル、飲食業の企業は、前受資金残高が前年度主要業務収入の40%を超えてはならない。

3.5 関連規定

  • 《単一用途商業プリペイドカード管理弁法(試行)》(商務部令2012年第9号)
  • 《深圳市プリペイド式経営活動コンプライアンスガイド》(深圳市市場監督管理局 2025年4月22日)