中国

[全訳] 中国・流動資金貸付管理暫時弁法

中国銀行業監督管理委員会令
2010年第1号

「流動資金貸付管理暫定弁法」は中国銀行業監督管理委員会の第72回主席会議を経て通過されたため、ここに公布し、そして公布日より施行する。

主席:劉明康
2010年2月12日

流動資金貸付管理暫時弁法

第一章  総則

第一条 銀行業金融機構における流動資金貸付業務を規範化し、流動資金貸付業務の慎重審査経営管理を強化し、流動資金貸付業務の健康な発展を促進するため、「中華人民共和国銀行業監督管理法」、「中華人民共和国商業銀行法」などの関連法律法規に基づき、本弁法を制定する。

第二条 中国銀行業監督管理委員会の批准を経て、中華人民共和国の国内に設立された銀行業金融機構(以下、貸付人という)が流動資金貸付業務を経営する場合、本弁法を遵守しなければならない。

第三条 本弁法で言う流動資金貸付とは、貸付人が企業法人または借入人として国家に認められる他の組織に対して、日常生産経営の運転のために使用される人民元と外貨の貸付を指す。

第四条 貸付人が流動資金貸付業務を展開する際、法律と規定の遵守、慎重審査経営、平等自主、公平と信義誠実の原則により行わなければならない。

第五条 貸付人は内部統制システムを改善し、貸付の全体管理を実施し、顧客の情報を全面的に把握し、流動資金貸付のリスク管理制度と有効な部署牽制体制を構築することにより、貸付管理の各環節の責任を具体的な部門と職場にまで実行させ、また各職場の考課及び問責制度を確立する。

第六条 貸付人は借入人の運転資金のニーズを合理的に測定し、借入人の流動資金与信総額及び具体な貸付限度額を慎重に確定し、借入人の実際需要額を超えて流動資金貸付を貸し出してはならない。
貸付人は借入人の生産経営規模及び資金繰り周期の特徴に基づき、流動資金貸付業務の種類と期限を合理に設定することにより、借入人の生産経営の資金ニーズを満足すると共に、貸付資金の回収に対する有効な管理を実現しなければならない。

第七条 貸付人は流動資金貸付業務を借入人及び所属するグループ顧客の統一与信管理に組入れ、区域、業種、貸付種類などの次元により、リスク限度額の管理制度を確定しなければならない。

第八条 貸付人は経済運行状況、業種発展規律及び借入人の有効な貸付ニーズなどに基づき、内部業績の考課指標を合理的に確定し、不合理な貸付規模指標を制定してはならず、悪性競争と集中的な貸付をしてはいけない。

第九条 貸付人は借入人と、明確かつ合法な貸付用途を約定しなければならない。
流動資金貸付は固定資産、株券などへの投資に使用してはならず、生産、経営を国に禁止された分野と用途への使用をしてはならない。
流動資金貸付を流用してはいけない。貸付人は契約の予定に従い流動資金貸付金の使用状況を検査、監督しなければならない。

第十条 中国銀行業監督管理委員会は本弁法に基づき流動資金貸付業務に対して監督管理を実施する。

第二章  受理と調査

第十一条 流動資金貸付の申請は以下の条件を満足しなければならない。
(一)法律通りに設立した借入人であること。
(二)借入金の用途が明確、合法的であること。
(三)借入人の生産経営が法律及び関連規定に符合すること。
(四)借入人は持続経営の能力を持ち、合法な弁済資源を有すること。
(五)借入人の信用状況が良好で、重大な信用不良記録がないこと。
(六)貸付人が要求するその他の条件。

第十二条 貸付人は流動資金貸付の申請資料及び具体な内容を明確に要求し、借入人に信義誠実原則への厳守、真実、完全、有効な書類の提出を要求しなければならない。

第十三条 貸付人は現場と非現場とを結び付けた形式で十分な調査を行い、書面報告を作成し、その内容の真実性、完全性及び有効性に対して責任を負う。調査は以下の内容を含むが、これだけに限らない。
(一)借入人の組織構成、会社管理、内部統制及び法定代表者と経営管理チームの資本信用などに関する状況。
(二)借入人の経営範囲、主要業務、生産経営、貸付期間内の経営企画と重大な投資計画などの状況。
(三)借入人の所在する業種の状況。
(四)借入人の売掛金、買掛金、棚卸資産などの真実な財務状況。
(五)借入人の運営資金ニーズ総額と現在の融資性負債の状況。
(六)借入人の関連会社と関連取引などの状況。
(七)貸付金の具体的な用途及び貸付金の用途に関連する取引先の資金占用などの状況。
(八)弁済金資源の状況。生産経営におけるキャッシュフロー、総合収益及びその他合理収入などを含む。
(九)担保を入れた流動資金貸付に対して、抵当物の所有権帰属、価額及び現金化の難易度、又は保証人の保証資格と能力などの状況も調査しなければならない。

第三章  リスク評価と審査批准

第十四条 貸付人は健全なリスク評価制度を確立し、責任部門と職務を明確させ、流動資金貸付のリスク要素を全面的に審査しなければならない。

第十五条 貸付人は健全な内部ランク評価制度を構築し、科学的合理的なランク評価と与信方法を採用し、顧客の信用ランクを評定し、顧客の資本信用記録を確立しなければならない。

第十六条 貸付人は経営規模、業務特徴及び売掛金、棚卸資産、買掛金、資金繰り周期などの要素により、借入人の経営資金ニーズを測定(測定方法は付属書類参照)し、借入人のキャッシュフロー、負債、弁済能力、担保などの要素を総合的に考慮し、貸付金額、期限、利息、担保と返済方式等を含む貸付構成を合理的に確定する。

第十七条 貸付人は貸付・審査の分離、分級審査という原則に基づき、規範な流動資金貸付評価制度とプロセスを構築し、リスク評価と貸付審査批准の独立性を確保しなければならい。
貸付人は健全な内部審査批准授権と再授権の制度を確立しなければならない。審査批准者は授権範囲内に、定めたプロセスにより貸付の審査批准を行い、権限外の審査批准をしてはいけない。

第四章  契約の締結

第十八条 貸付人は借入人及びその他関連当事者と、書面の貸付契約及び他の関連協議書を締結し、担保が必要である場合、同時に担保契約の締結もしなければならない。

第十九条 貸付人は貸付契約書に借入人の流動資金貸付の金額、期限、利率、用途、支払、弁済方式等の条項を明確に約定しなければならない。

第二十条 前条にいう支払条項について、下記の内容を含めるがこれだけには限らない。(一)貸付金の支払方式、貸付人の受託支払の金額標準。
(二)支払方式の変更及び変更の条件。
(三)貸付金の支払制限、禁止行為。
(四)借入人が迅速に提供すべき貸付金の使用記録及び資料。

第二十一条 貸付人は貸付契約書に下記を借入人の承諾事項として約定する必要がある。(一)貸付人に真実、完全、有効な資料を提出すること。
(二)貸付人の貸付支払管理、貸付後の管理及び関連検査に協力すること。
(三)対外投資、実質的に債務が増加する融資、合併、分割、持分譲渡など重大事項を行う前に必ず貸付人の同意を得ること。
(四)貸付人は借入人の資金回収情況により、貸付金の弁済期間の繰上げを要求する権利があること。
(五)弁済能力に重大な不利事項が発生した場合、速やかに貸付人に知らせること。

第二十二条 貸付人が借入人と締結する貸付契約には、下記の状況のいずれかが発生した場合、借入人の負うべき違約責任と貸付人の採用可能な処置を約定しなければならない。
(一)約定した用途に従って貸付金を使用していない場合。
(二)約定した方式に従って貸付金を支払っていない場合。
(三)承諾事項を遵守していない場合。
(四)約定した財務指標を超過した場合。
(五)重大な違約事件が発生した場合。
(六)貸付契約に約定した他の事項を違反する場合。

第五章  貸出及び支払

第二十三条 貸付人は流動資金貸付の実行と支払の審査を担当する独立な責任部門又は部署を設立しなければならない。

第二十四条 貸付人は貸出前に、借入人が契約に約定した引出条件を満足するかどうかを確認し、契約の約定通り、貸付人の受託支払か又は借入人の自主支払方式で貸付金の支払に対して管理と統制を実施し、貸付金を約定した用途に使用させるよう監督する。
貸付人の受託支払とは、貸付人が借入人の引出申請と支払委託に基づき、貸付金を借入人の口座を通じて、契約に約定した用途に符合する借入人の取引先に支払うことを指す。
借入人の自主支払とは、貸付人が借入人の引出申請により、貸付金を借入人の口座に振り込んだ後、借入人が自ら契約書に約定した用途に符合する借入人の取引先に支払うことを指す。

第二十五条 貸付人は借入人の業種特徴、経営規模、管理レベル、信用状況などの要素及び貸付業務の書類に基づき、貸付金の支払方式と貸付人受託支払の金額標準を合理的に約定しなければならない。

第二十六条 以下の状況のいずれかを有する流動資金貸付は、原則的に貸付人受託支払方式を採用しなければならない。
(一)借入人との貸付業務が新たに確立し、且つ借入人の信用状況が一般的である。
(二)支払対象が明確で、且つ一回の支払金額が比較的大きい場合。
(三)貸付人が認定する他の状況。

第二十七条 貸付人受託支払方式を採用する場合、貸付人は約定した貸付用途に基づき、借入人の提出する支払申請に記載された支払対象、支払金額等の情報が相応するビジネス契約書等の証明資料と符合しているかどうかを審査しなければならない。審査批准後、貸付人は貸付金を借入人の口座を通じて借入人の取引相手に支払う。

第二十八条 借入人自主支払方式を採用する場合、貸付人は貸付契約の約定により、借入人に貸付金の支払状況を定期的に報告することを要求し、口座分析、証憑検査又は現場調査などの手段で貸付金の支払が約定した用途に符合しているかどうかを確認する。

第二十九条 貸付金支払の過程において、借入人の信用状況が下落し、主要業務の利益能力が強くなく、貸付金の使用に異常が発生した場合、貸付人は借入人と協議の上、貸付金の貸出と支払条件に関する補充契約書を締結するか、或いは契約の約定により、貸付金の支払方式を変更したり、貸付金の貸出と支払を停止したりする。

第六章  貸出後の管理

第三十条 貸付人は貸付金の貸出後の管理を強化し、借入人の所属する業種及び経営の特徴に対して、定期及び不定期の現場検査及び非現場監視測定を実施することにより、借入人の経営、財務、信用、支払、担保及び金融数量とレート変化等の状況を分析し、借入人の返済能力に影響する各種のリスク要素を把握しなければならない。

第三十一条 貸付人は貸付契約書の約定により、借入人に資金回収専用口座の指定、及び当該口座の資金収支状況の報告を要求しなければならない。
貸付人は借入人の信用状況、融資状況などに基づき、借入人と協商の上、口座管理協議を締結し、指定口座の回収資金の収支管理を明確に約定することができる。
貸付人は巨額資金及び異常資金の流出入状況を注意し、資金回収口座の監督管理を強化しなければならない。

第三十二条 貸付人は借入人の経営、管理、財務及び資金繰り等、重大な早期警戒事項に十分に注意し、契約の約定に基づき、直ち繰上回収、担保追加等の有効処置により貸付のリスクを防止、除去しなければならない。

第三十三条 貸付人は貸付種類、限度額、期限、借入人の経営状況及び返済能力の整合程度を評価し、借入人との今後の取引の依拠とする。必要な場合、借入人との取引策略と内容をタイムリーに調整する。

第三十四条 債権を確保するため、貸付人は法律法規の規定及び契約書の約定に基づき、借入人の多額融資、資産売却及び、合併、分割、持分改造、破産清算等の活動を参与しなければならない。

第三十五条 流動資金貸付を期限延長する場合、貸付人は貸付人に対応する資産転換周期の変化原因と実際なニーズを審査する上、延期の可否を決定する。また、貸付金の延期期限を合理的に確定し、延期貸付への事後管理を強化しなければならない。

第三十六条 流動資金貸付が不良貸付になった場合、貸付人はその貸付を専門的に管理し、回収処置案を制定しなければならない。借入人が一時経営困難のため期限通りに貸付金の元利金を返済できない場合、貸付人は借入人と改めて協議を行うことができる。

第三十七条 回収不能の不良貸付に対して、貸付人は関連規定に基づき貸付を消却後、債務人に引き続き遡及するか、又は市場化処理を行わなければならない。

第七章  法律責任

第三十八条 貸付人が本弁法に違反し、流動資金貸付業務を行う場合、中国銀行業監督管理委員会は期限を設けて是正を命令しなければならない。貸付人が以下のいずれかの状況がある場合、中国銀行業監督管理委員会は「中華人民共和国銀行業監督管理弁法」第三十七条の規定により監督管理処置を行うことができる。
(一)流動資金貸付業務のプロセスに欠陥がある場合。
(二)貸付管理の各段階の責任を具体な部門と部署にはっきり定めていない場合。(三)貸付の調査、リスク評価、貸出後の管理を十分に行っていない場合。
(四)借入人の契約違反の行為を発見すべきでありながら発見しなかった、或いは、発見したものの直ちに有効な処置を採らなかった場合。

第三十九条 貸付人は下記のいずれかの状況がある場合、中国銀行業監督管理委員会は本弁法第三十八条の規定により監督管理の処置を実施する以外、さらに「中華人民共和国銀行業監督管理法」第四十六条、第四十八条の規定により処罰を行うことができる。
(一)貸付条件の引下げ又は借入人の実際ニーズを超過して貸付金を貸出す場合。
(二)本弁法の規定に基づき貸付契約書を締結していない場合。
(三)借入人と共謀して規定違反をして貸付業務をした場合。
(四)借入人が流動資金貸付金を固定資産投資、持分投資及び国に生産、経営を禁止された分野と用途に使用することを放任した場合。
(五)貸付の審査批准権限を超過、又は形を変えて超過した場合。
(六)本弁法の規定に基づき、貸付の支払管理を統制していない場合。
(七)本弁法の定めた慎重審査な経営規則に厳重に違反したその他の状況。

第八章  付則

第四十条 貸付人は本弁法の規定に基づき、流動資金貸付管理実施細則及び操作規程を制定しなければならない。

第四十一条 本弁法は中国銀行業監督管理委員会が解釈の責任を負う。

第四十二条 本弁法は公布日より施行する。