中国

[中国] 決算に際し、ここを再点検しましょう

広州ナックマイツ会計師事務所有限公司
所長 増田昌弘
日本国公認会計士 田中昌志

2009年も残すところ後2ヶ月となり、暦年が会計期間である中国の法人も決算の準備を始めているところかと思います。1年間の損益がいくらなのか、期末時点で会社はどれだけ財産を持っているのかについて、より正確に把握するために、決算時には次の項目について再確認してみてください。

棚卸による現物確認

目で見て現物を確認できる「現金」、「棚卸資産」、「有形固定資産」は、棚卸により、帳簿上の金額と一致するか、帳簿上記録されているものと現物が一致するか確認してください。

「現金」については頻繁に確認されている会社が殆どかと思いますが、不要に多額の現金を保管しているケースも見受けられます。内部統制の事項になりますが、現金保管限度額や金庫の鍵の保管など現金管理に関する規定がない場合は、明文化された規定を作成することをお勧めします。

「棚卸資産」、いわゆる在庫についても、毎月或いは一定期間ごとに実地棚卸を行い、帳簿との差異を把握し、差異の原因を分析している会社が多いと思います。この過程で、滞留在庫や不良在庫が把握されますが、期末においてはこれら滞留在庫や不良在庫などについて評価損を計上する必要があります。中国の企業会計制度では、棚卸資産は、期末に原価と正味実現可能価額のいずれか低い方で計上し、次のいずれかに該当する場合には評価損を引当計上することが規定されています。なお、正味実現可能価額とは、企業の正常な経営過程における見積販売価格から完成までに発生する見積原価及び見積販売費用を控除した金額をいいます。

  1. 市場価額が継続的に下落し、予見可能な将来において回復する見込みがない場合
  2. 原材料につき、当該原材料を使用し生産された製品の原価が製品の販売価額を上回る場合
  3. 製品のモデルチェンジにより既存の原材料在庫が新製品に使用されず、また当該原材料の市場価格が帳簿価額を下回る場合
  4. 商品またはサービスの陳腐化或いは消費者の嗜好の変化により市場の需要に変化が生じ、市場価格が下落している場合
  5. 棚卸資産が実質上既に価値が減少したことを十分に証明できるその他の状況がある場合

また、次のいずれかに該当する場合には評価損の引当ではなく、帳簿価額全額を当期の損失として計上することが規定されています。

  1. 腐敗・変質した棚卸資産
  2. 期限切れで且つ譲渡できない棚卸資産
  3. 生産が打ち切られ、且つ、使用価値及び譲渡価値がない棚卸資産
  4. 使用価値及び譲渡価値がないことを十分に証明できるその他の棚卸資産

次に「有形固定資産」ですが、有形固定資産の棚卸を実施していない会社は意外と多いようです。

そのため、廃棄などにより現物は存在しないが帳簿にはあるといったことや、使用出来ない固定資産を長期間放置しているといった状況があるかもしれません。企業会計制度では、有形固定資産についても、技術の陳腐化、損壊や長期放置などが原因で、回収可能価額が帳簿価額を下回る場合、減損引当金を計上することが規定されています。回収可能価額とは、資産の売却純額(売却価格―売却費用)と、当該資産の継続使用及び使用期間終了時の処分により形成される将来における見積りキャッシュフローの現在価値のうち、いずれか高い方を指します。

なお、次のいずれかに該当する場合には帳簿価額全額の減損引当金を計上する必要があります。

  1. 長期間遊休状態であり、予見可能な将来において使用せず、既に譲渡価値がない固定資産
  2. 技術進歩等の原因で、既に使用できない固定資産
  3. 使用可能であるが、使用後に大量の不良品を産出する可能性がある固定資産
  4. 毀損により使用価値及び譲渡価値がない固定資産
  5. 実質上既に企業に経済的利益をもたらすことができなくなったその他の固定資産

残高確認

「銀行預金」、「借入金」、「売掛金」、「買掛金」、「その他未収金」、「その他未払金」などについて期末の残高が正しいことを確認するため、銀行預金残高や銀行からの借入金残高については銀行より残高証明書を取得し、その他については取引相手に確認状を発送し残高を確認します。非関連会社との取引残高については日頃から確認されていることが多いと思いますが、関連者との取引については合致していないことがよく見受けられますので注意が必要です。また、未収の債権については、期末にその回収可能性を検討し、会社が決めた計上基準により貸倒引当金を計上します。

発生主義での計上

中国の会計も発生主義に基づき各種取引を計上しますので、年内の売上に対応する原価を計上することや、翌年に支払いをするが09年に帰属する費用などは、発票の有無にかかわらず年内に計上することが原則です。

以上

(こちらの記事はウェネバー広東11月号にも掲載しています)