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[まとめ] 貿易取引に係る外貨と税務1-貨物輸出取引

中国では、人民元国際化や金融改革が進められると共に、外貨取引の規制も緩和が進められています。また、外貨管理部門の規制緩和と合わせて、税務面でも輸出取引の増値税申告やサービス取引対外送金時の納税に関する大幅な改正が行われています。そこで、今月は貨物輸出取引に係る外貨管理規定や輸出増値税還付の現状や注意点について、ご紹介をさせて頂きます。

外貨管理規定

2012年7月以前の貨物輸出取引では、輸出記録に対応する外貨回収を個別に照合する手続が行われていたが、現在では、一定期間の輸出総量と外貨資金回収額を総合的に監督する方法へと変更されている。

(1)特殊な外貨受領
貨物輸出前の外貨受領や輸出ユーザンス契約等により輸出通関から売上代金受領まで一定の日数を設けている場合には、外貨管理局での登録手続が必要となる。なお、外貨管理局へ登録義務のある輸出取引の形態は以下のようである。
① 輸出日予定日より30日以上前の外貨前受金受領
② 輸出日から90日以上の輸出ユーザンス契約等による外貨受領

(2)重点監督企業
輸出貿易を含む外貨取引に関して、通常の外貨受け払いや上記特殊売買契約での登録を適切に行う企業に関しては、外貨管理局への個別な届出を必要とせず、実際の貨物輸出入実績や売買契約に基づく外貨取引が認められ、個別輸出取引に対して外貨照合を実施していたころと比べ、手続が非常に簡素化されている。但し、外貨管理が不適当と判断される企業は、外貨管理局にてB類/C類企業と区分され、外貨取引に一定の制限が加えられる。

貨物輸出取引に係る制限事項

企業区分 規制内容
A類企業 特になし(外貨前受金や輸出ユーザンス取引の登録義務)
B類企業
  • 一定額を超える輸出貨物外貨受領額に係る証憑提出義務
  • 前受金、及び30日以上90日以下の輸出ユーザンス取引届出義務
    ※90日を超える輸出ユーザンス取引は執行が認められない
C類企業
  • 個別の輸出取引についての登記義務
  • 前受金、及び30日以上90日以下の輸出ユーザンス取引届出義務
     ※90日を超える輸出ユーザンス取引は執行が認められない
  • 輸出代金外貨の海外保管禁止

外貨管理局での登記を行った企業はA類企業として区分される。その後、企業に以下の状況が発生する場合に、外貨管理局は企業に対してB類やC類企業の認定を行う。
① 外貨管理局の立入検査で不適切性を認識される企業
② 輸出取引前受金やユーザンス契約等の登録を実施しない企業
③ 外貨管理法違反が認定され行政処罰等を課される企業

なお、上記①「外貨管理局の立入検査」対象企業として、前受金や輸出ユーザンス取引比率が25%、一年以上の長期に渡る前受金や輸出ユーザンス取引が全体の10%以上という基準が定められているため、上記の外貨取引発生を抑制することが企業区分の調整を避けるためにも有用である。

税務規定

従来は輸出通関日から90日以内に輸出通関証明書等の書類を以て、主管税務局へ輸出増値税還付の申告を行い、且つ210日以内に輸出貨物に係る外貨管理局発行の外貨受取照合伝票を提出する必要があったが、現在は輸出外貨照合手続が執行されていないため、税務局への輸出外貨受取照合伝票提出も不要となっている。

但し、税務機関も企業による輸出外貨回収が執行されない輸出取引に対して無制限に増値税還付を認めている訳ではなく、輸出通関日から起算して翌年4月末日(増値税還付申告期限)を期限として輸出外貨の回収を義務付けている。例えば、5月15日に輸出した貨物に関しては、輸出通関証明書や輸出発票等の必要が整い次第、輸出貨物に対する外貨を回収していない状況でも還付申請を行うことが認められるが、輸出翌年度の4月申告期限迄に外貨回収を行う必要がある。

(1)輸出取引の外貨回収遅延
貨物の輸出取引において、輸出ユーザンス取引等により輸出通関日の翌年4月末日迄に輸出外貨の回収が行われない場合には、輸出貨物の外貨回収が行われていないことに係る申請表や契約書等の関連書類を当該4月の増値税申告期日(通常は4月15日)までに主管税務局へ提出して審査を受けなければならない(※)。また、売買契約で規定される決済日に輸出外貨回収を行った後には、翌月の増値税申告期間中に、外貨受領に係る証憑を主管税務局へ提出する。

(2)重点監督企業
外貨管理規定と同様に、一定の不適切な事由が企業に確認される場合には、管理重点企業と認定され、個別の輸出取引に係る外貨回収情況や外貨回収証憑を定期的に報告する義務が課される。重点管理の対象に選定される企業は、上記外貨管理局のB類/C類企業と重複するが、その他国家税務局が独自重点企業と判断する主な基準は以下のようである。
① 税関でのC類/D類認定企業
② 増値税専用発票虚偽発行等で税務機関より行政処罰を受けた企業
③ 輸出入管理や外貨収支管理で外貨管理局や業務部門等より行政処罰を受けた企業
④ 前年度の外貨回収率が70%を下回る企業

まとめ

貨物輸出取引に係る外貨管理局の監督管理は大幅に緩和され、個別輸出取引の外貨回収を照合する手続は廃止されていますが、輸出総額を基準とした外貨回収状況は管理されているため、輸出通関金額と外貨回収額を一致させる原則は継続して存在しています。最近の貨物輸出取引に係る規制緩和は実務手続の利便化が目的であり、必要な申告を行わない場合、並びに輸出貨物と外貨回収に不均衡が生じる企業に対しては、外貨管理局や税務機関は一般の企業と区分した厳格な管理を執行します。企業が個別の管理下に置かれる場合、90日を超える延払や輸出ユーザンス契約締結、及び輸出増値税還付に支障が生じることになりますので、外貨手続が簡易化されている現状においても引き続き厳密な外貨登録や適宜の外貨売上回収を行って頂く必要があります。

※ 2013年12月31日までに輸出された貨物の税還付申請については、2014年4月4日付で発布された国家税務総局公告2014年第20号により、申請提出期限が6月30日に延期され、各地税務機関は提出期限から20日以内に手続完了することが規定されています。