中国
雇用契約
中国・定年超過労働者の基本権益保障暫定規定
目次
規定制定の背景
2024年9月13日全国人大常委会にて《法定退職年齢の段階的引き上げに関する決定》が公布され、段階的に法定退職年齢が延長されております。当該決定の中で、定年超過労働者の基本的権益を保障することが記載されており、それを法的にサポートする為に、「定年超過労働者の基本権益保障暫定規定」が制定されております。
規定内容について以下にポイント別にまとめております。
本規定の施行時期
2026年7月1日施行 (第24条)
本規定の対象となる労働者とは
対象:定年超過労働者、規定に基づき早期に退職手続きを完了した後、再就業した労働者(第2条)
尚、段階的に定年退職の延期を適用されている労働者は、労働契約法の適用となる為、対象外とされております。(第23条)
定年超過労働者の賃金に関する事項
企業は、定年超過労働者と具体的な労働報酬の金額、支払い周期、支払い時期、支払い方法等事項を規定しなければならない。(第10条)
定年超過労働者が正常に労働を提供した場合、企業が支払う労働報酬は、当地の最低賃金を下回ってはならない。(第11条)
貨幣形式で、約定した金額を期日通りに定年超過労働者本人に支給をする。最低毎月1回の支払い。実物或いは有価証券などその他の形式で代替できない。給与を差し引いたり、無断で支払いを遅延してはならない。(第12条)
雇用契約の形態、雇用契約記載事項(第6条)
書面による雇用契約を締結しなければならない。
契約事項は、契約期間、業務内容、勤務地、勤務時間、休憩・休暇、労働報酬、社会保険、労働保護、労働条件、職業的危害防止などの事項を明確にしなければならない。
雇用契約の終了について(第8条)
- 雇用契約が終了するケース:
- 雇用契約の期間が満了した場合
- 双方が合意した業務内容が完了した場合
- 双方が定めた終了条件が生じた場合
- 双方が協議の上労働契約を解除した場合
定年超過労働者の休日、残業について(第9条)
「国務院職工の労働時間に関する規定」および「全国の年節及び記念日休暇の方法」の規定に従い、定年超過労働者の労働時間及び休息休暇を合理的に手配し、通常は定年超過労働者の残業を手配してはならない。企業が、定年超過労働者に残業を手配する場合、「中華人民共和国労働法」第四十一条、第四十二条及び第四十四条の規定に従う。
*有給休暇(「職工有給年休暇条例」)及び医療期間(「企業職員の疾病又は非労災負傷による医療期間に関する規定」)については、本暫定規定上は定年超過労働者への適用を明示していない。そのため、現行の解釈では、これらの権利は原則として保障されないが、企業が任意で付与することは妨げられない。
*原則として、定年超過労働者の残業は極力避けるべきである。やむを得ず残業をさせる場合は、①労働者の書面による自発的な同意を得ること、②労働法第41条(時間制限)を厳守すること、③第44条に基づき正確に割増賃金を支払うこと、が義務付けられる。なお、健康上のリスクを考慮し、強制的な残業は法律違反となる可能性がある。
社会保険について
労災保険(加入義務あり):(第15条)
使用者は、高齢労働者の労災保険への加入及び労災保険料の納付を負担し、個人は労災保険料を納付しない。
養老保険:(第16条)
待遇受給:高齢労働者が基本養老保険の給付を受けて引き続き働く場合、その基本養老保険の給付の受給状況に影響を及ぼさない。
待遇を未受給:
従業員基本養老保険への継続参加を選択することができる。その場合、個人として従業員基本養老保険料を引き続き納付することができる。使用者と合意した場合、使用者も規定に従って従業員基本養老保険料を納付することができ、個人が納付すべき従業員基本養老保険料は使用者が源泉徴収して納付する。
医療保険:(第17条)
待遇受給:定年超過労働者が既に退職者向けの労働者基本医療保険給付を受けてなお勤務する場合、労働者基本医療保険の給付受給内容に変更はない。
待遇未受給:
従業員基本医療保険に継続して加入することを選択した場合は、個人として従業員基本医療保険料を引き続き納付することができる。使用者と協議の上、使用者も関連規定に従って従業員基本医療保険料を納付することができ、個人が納付すべき従業員基本医療保険料は使用者が差し引いて納付する。
*社会保険については、労災保険は、加入義務が定められ、企業の負担義務が定義された。養老保険、医療保険については、保険待遇の未受給者に対して、個人の身分で継続して参保できることを明記している。企業名義で、参保するかどうかは、使用者と労働者の協議事項としており、企業の負担義務を強制してはいない。
雇用契約の改訂について(第7条)
双方が協議し一致すれば、雇用協議の約定内容を変更することができる。
*本規定施行前に締結された雇用契約が本規定の強行規定(最低賃金、労災保険など)に抵触する場合、労働者の同意の有無にかかわらず、本規定が優先される。なお、労働者と協議の上、書面による変更契約(補充協定)を締結することが望ましい。
定年年齢超過者の労働争議について(第19条)
労働仲裁:
本規定に明記された労働報酬、休憩休暇、労働安全衛生、労災保障に関する紛争については、『中華人民共和国労働紛争調停仲裁法』に基づいて処理する。
民事訴訟:
その他の事項について争いが生じた場合、人民法院に訴訟を提起する。
人力資源社会保障行政部門にクレームできる事項(第20条)
雇用主が本規定第九条第二項(残業関連事項)、第十一条、第十二条の規定(給与事項、最低賃金、賃金の遅延)に違反した場合。
安全生産、職業病予防関連部門にクレームできる事項(第21条)
事業主が『中華人民共和国安全生産法』、『中華人民共和国職業病予防法』その他の法律法規及び規則に違反した場合
労働組合の支援(第22条)
労働組合は、高齢労働者の合法的権益を法に基づいて守り、使用者が定年超過労働者の合法的権益の遵守状況を監督する。定年超過労働者が仲裁を申請したり、訴訟を提起したりした場合、労働組合は法に基づいて支援と助けを提供する。