カテゴリ

今回は、香港会社買収のメリットとして、CEPAを利用して中国進出を図るケースをご紹介します。

外資誘致は生産業種からサービス業種へ移行

これまでの中国への進出は、人件費などのコスト削減や、原材料調達などを目的とした生産拠点の移管がほとんどでし た。中国の外資誘致政策は、生産加工、輸出を行う外資の生産企業を誘致して雇用と技術導入を促進することによる経済発展を図る一方で、サービス業は国内産 業保護のためもあり、外資の参入はほとんど認められていませんでした。2001年にWTOに加盟後、サービス業種は次第に外資へ門戸を開放し始め、流通業、物流、建築業種などはすでに100%外資企業の設立が可能となっています。市民の生活水準も多いに向上し、外資企業にとって今や中国は販売の市場として捉えられるようになっています。

CEPAの枠組み

中国は世界の各国・地域と自由貿易協定の枠組みを構築していますが、その一つであるCEPAは中国と香港、及び中国とマカオの緊密な経済合作協定(Closer Economic Partnership Arrangement)です。香港・マカオ原産貨物の中国への輸入関税免除と、サービス業種の進出を他国に一歩先んじて開放することが協定の主な柱です。2004年より施行され、毎年内容が更新されることになっています。

サービスサプライヤーの認可

他の海外企業に先駆けて香港企業へ進出の認可を認めるサービス業の種類は年々増加し、2007年の協定内容の更新により2008年から施行する香港企業への優遇は全部で38の項目にわたっています。主なものは添付図の通りです。サービス分野の開放が進んでいるとはいえ、金融、通信分野や、弁護士・会計士などの分野ではまだまだ外資の参入ハードルが高い分野もあります。

手続き手順としては、香港の工業貿易署へ先ず香港企業の認定証書である香港サービスサプライヤー(HKSS)証書を申請取得し、中国での認可申請の際にこの証書を添付します。サービスサプライヤーの条件には事業活動の場所や地元の従業員など事業所の実体があることや、3年から5年など一定期間の申請業種の経験があることなどが含まれています。申請の前1年以内に出資者に変更がある場合は報告しなければならず、特に50%超の株式を外国企業が取得した場合には、取得後1年を経て香港企業として認められ、HKSS証書の取得が可能とされています。また、100%子会社の運営するサービス業種について持ち株会社が申請することも可能とされています。

中国での設立申請時、HKSS証書を添付して申請した香港企業は、認可の過程で問題があれば香港の工業貿易署にフィードバックし、政府間の調整を努力することになっています。

このように、設立に関し外資企業に対して制限のあるこのようなサービス業種については、海外企業が香港の事業実績のある企業へ出資或いはこのような企業を買収し、中国への新たな進出の足がかりとしていくことになるわけです。

(この連載で紹介するM&Aのケースは、M&A体験者から伺った実例を基に編集したものです。M&Aの実務に対し何ら保証するものではありません。)

(以上)

今回は、製造型企業の中で、生産加工工程の内製化を代表するM&Aケースをご紹介します。A社はプラスチック成型用金型製作を専門に行う中小企業です。顧客のニーズに応えて中国へ現地法人として進出しまし たが、海外での事業のノウハウがなかったため税金など予想外のコストがかかったり、一定の周期で設備投資が必要であったりして、事業規模に比して資金需要 が大きくなっていました。この企業では最終製品を自社で製作することはやっておらず、自動車や家電製品などの部品メーカーのニーズに合わせて金型を受注製 造していました。

専門技術企業の悩み

自動車や家電製品、情報通信機器などの製造工程の中で、金型製造やプレス、メッキ、研磨加工など、共通し且つ専門技術を必要とするような工程があります。これらは技術産業であり、日本の無数の中小企業が支えてきた分野です。これらの製品の専門メーカーは、川下工程の部品メーカーや組み立てメーカーのニーズに応えるため決済条件が悪くなりがちであったり、また、最終製品を直接製作するのではなく、部品や製品全体のコストの中では金型やメッキ部分のみの工程の付加価値を上げにくい状況であったりします。そして、技術導入コストなどがかかる一方、資金繰りに苦しくなってくる会社もあり、また創業者の子供達がモノづくりから離れていくという後継者難にも直面しています。こういった場合に、川上或いは川下の工程に携わる企業の傘下に入ることは、最もスムーズなM&Aの選択になると言えます。

川下業種による内製化

この金型製作企業は、1工場では採算の取りにくくなった中国現地法人を、日本でも従来取引のあった成型メーカーの中国現地法人に売却することとしました。技術開発には一定の設備投資が必要であり投資回収を短期に見積もらなければならないこと、川下業種が買い手であることと現地法人では最終製品の製造開発を行っていないため、企業価値には営業権を主張しにくく、売却金額は純資産価値相当額程度となりました。

買収の効果

金型工程を内製化する買収は、金型工程を含めた製品化の採算が全体的によくなれば成功と言えるわけですが、金型工程の担当者は成型品の付加価値を上げられるように、一体となって技術開発を行いました。また成型メーカーの人材やノウハウを活用して、材料調達コストの削減などにも取りくむことができました。一方、売り手の本社では不採算の工場を改善し活用してくれる顧客に売却することができたことが一番のメリットで、本社自身は、加工精度や品質、特殊技術によるビジネスチャンスを求めて、最終製品の開発に取り組むことになりました。買い手企業は技術の内製化により市場の競争力強化につながりました。商品サイクルが短く、競争の激しい製品分野では特に効率の改善に役立ったと言えます。

(この連載で紹介するM&Aのケースは、M&A体験者から伺ったケースを基にした架空のストーリーです。M&Aの実務に対し何ら保証するものではありません。)

現代版のれん分け

企業の合併・買収(M&A_merger and acquisition)の手法のひと つに、「マネジメント・バイ・アウト、MBO」があります。MBOとは、社内の事業部門或いは子会社の経営陣が事業の継続を前提として、親会社・オーナー から株式・経営権を買い取り自ら企業のオーナーとなる独立手法のことを言います。会社の屋号をそのまま引き継ぐ、いわば「現代版のれんわけ」です。

日本の企業風土になじむ

MBOは、基本的に既存の経営陣及び従業員の雇用継続を前提として、経営陣が親会社・オーナーからの独立を果たす友好的な事業買収であり、日本の企業風土になじむと言われています。通常のM&Aと比較すると、以下のようになっています。
  MBO M&A
買い手 社内の経営陣 第三者
経営陣 現経営陣が引き続き行う 一般的に、企業文化の異なる第3者から派遣される経営者
MBOは上場企業にとっては、自社を上場廃止にし、経営の自由度・独立性を高めるという目的のために行うこともあります。上場を廃止することで、市場で買収されるリスクをなくしたり、上場企業の義務である情報の開示をする必要がなくなることが会社の経営にとって都合がよいと考える場合です。資金や知名度が十分にあって、上場によって知名度や信用を得るメリットが不要というような場合です。但し、こういったMBOには、将来的には資金の調達方法が限られてくるというデメリットはあります。

MBOのメリット・デメリット

MBOのメリットは先ず、社内の現経営陣がその事業を引き継ぐことにより社外での信頼も得やすく、内部でも企業文化の融合に時間を必要としないことです。こうして既存の経営方針が維持でき、買収後の意思決定も迅速に行えることが予想されます。オーナーとなり経営者となった元の経営陣や従業員は仕事に対するモチベーションも向上するでしょう。 被買収企業としては、経営戦略再構築のチャンスとなります。また元の投資者が後継者難であるような場合には、会社幹部から事業の後継者が見つかるのは都合のよいことです。

デメリットとしては、独立後の知名度が下がったり、グループ企業離脱によって売上が減少する懸念があるということ、また、資金提供者が会社内部だけではない場合には、経営の自由度が制限される可能性もあるといったことです。

MBOにおける資金

従業員や経営陣が会社や事業を買収するに当たり、十分な資金を準備できない場合、ベンチャーキャピタル・ファンドや銀行などからの融資により調達することがあります。この資金で親会社やオーナーから株式・経営権を買い取ります。ファンドは出資した企業を数年後に上場させるか、或いは株式を第三者へ売却するなどの方法で投資のリターンを得ることが手法とされています。このようなファンドは、投資に対し高いリターンを求めるために、業績の改善をサポートしてくれることがある反面、企業にとっては独立した経営方針が確保できない場合があります。
(以上)

株式公開は重要な企業の成長戦略の一つですがこれを手っ取り早く達成するためにM&Aが検討される場合があります。上場に際しては、売上規模など一定基準 を満たす必要があることから、既存の経営活動とのシナジー効果のある企業を買収して早期に一定の事業規模を得ようとするものです。上場には資金調達、認知 度や信用度の向上などのメリットがありますが、上場後は企業情報の公開義務があること、また株主にとっては実質的に経営の支配度が低下することなどに留意 する必要があります。以下に、香港の株式市場を例に紹介します。

香港上場のメリット

一般的な上場のメリットとして、上場時及び上場後の資金調達を通じて、親会社の資本投下に依存せずに経営戦略を展開できるということや、経営の透明性向上により、企業の信用度が高まること、ひいては知名度・社会的な信用度向上により、従業員の帰属感を高め、人材獲得力の向上につながることなどが挙げられます。

香港上場のメリットとして、香港市場への上場が中国市場での知名度・信用力向上につながることや、中国企業にとっては海外市場上場地域の主要な一つであること、資金の流動に制限がなく、キャピタルゲイン非課税などの税務優遇などにより、発行会社と投資者の双方にとってメリットのある市場であるといったことが挙げられます。

上場検討の留意点

一方、上場を検討する要素(留意点)として、次のような事項が挙げられます。
  • 上場の合理性。資金調達のニーズなど、上場が会社の方針に沿っているかを判断する。
  • 会社及び経営者は上場に必要な時間とコストを把握すべきである。
  • 株主は、上場により会社に対する支配度が低下することに留意する。
  • 上場企業の果たすべき義務及び情報開示義務を理解すべきである。
  • 経営陣は、取締役の変更などの人事異動が株価や投資家影響することに留意すべきである。
  • 取締役は、上場後の信用責任を果たし、株取引の制限について知っているべきである。

香港株式市場の上場基準

香港株式市場にはメインボードとGEM(創業版)という2種類の市場があり、それぞれの市場で上場要件も異なっています。財務関連の基準についてメインボードでは①利益 ②時価総額と売上高 ③時価総額、売上高、キャッシュフロー のうちいずれかの要件を満たすこととされています。一方、これまで明確な財務要件が無かったGEM(創業版)では、香港における第2の市場として、またメインボード上場へのステップとしてのGEM上場基準を見直し、今年5月2日に上場要件の改正が発表されました。今年7月1日より施行されますが、5月2日以降に上場申請が受理される企業は上場日に応じて新要件が適用されることになっています。

財務関連の基準は次の通りです。

メインボード

  1. 利益基準
    1. 上場直近3年間の純利益合計がHK$5千万以上(直近の年度がHK$2千万以上、その前の2年間の合計がHK$3千万以上)
    2. 上場時の時価総額がHK$2億以上
  2. 時価総額/売上高基準
    1. 上場時の時価総額がHK$40億以上
    2. 直近事業年度の売上高がHK$5億以上
  3. 時価総額/売上高/キャッシュフロー基準
    1. 上場時の時価総額がHK$20億以上
    2. 直近事業年度の売上高がHK$5億以上
    3. 直近3年間の営業キャッシュフロー合計がHK$1億以上

GEM (新基準)

  1. 直近2年間の営業活動におけるキャッシュフローがHK$2千万以上
  2. 上場時の時価総額がHK$1億以上
財務基準と並び経営実績についても一定の基準が設けられています。

メインボードについては、3年以上の営業実績と同時に、同一の経営陣、直近事業年度については同一株主が基準とされています。但し、時価総額/売上高基準を適用する場合には、3年未満の営業実績でも可能とされています。

GEMについては、2年間以上の経営実績で、同一経営陣、直近事業年度について同一株主という基準となっています。

(以上)

同業種との資本提携の目的はシェアの拡大や他の地域への進出で、買い手側企業にとっては同じ事業を行っていることか ら譲渡対象企業の比較分析もしやすいといえます。譲渡企業の経営状況が悪くても買い手が自社で立て直しできますし、却って安価で買収できるチャンスである とも言え、従って譲渡価格にはシビアになるかもしれません。このような目的での買収の買い手となりうるのは、急成長中の会社や、合従連衡が進んで勝ち残っていく会社です。

一方、異業種の買収が目指すのは、創業時間の短縮とシナジー(相乗)効果というメリットです。異業種を買収すること によって事業の多角化を図っていこうとする背景の一つには、昨今では商品や事業の終期が昨今はどんどん短縮して、業態が古くなっていくことが挙げられま す。せっかく新規事業を立ち上げても絶えず変革が必要だとか、リスク分散のために事業の柱が複数必要だとかいった状況です。よって成長期の会社だけでな く、事業を引き継ぐ二代目社長にこそこの課題があるといえます。また、好調な業種・業界ではなくむしろ歴史が古い業種や現在(或いは将来)の不況業種とも いえます。新規事業を一から立ち上げることは難しくても、時間を買って必要な顧客・販売拠点・人材、ノウハウなどを一括して取得し、早期に収益を見込むこ とができるわけです。

特長のある会社

買収などの資本提携の対象企業として、買い手にとって魅力のある会社を選ぶことに異議はありませんが、そのポイントは一言で「特徴のある会社」を選ぶことだと言えます。技術、ネットワークなど他社には無い、真似のしにくいものがあれば、新規参入のメリットがあるわけです。

一方で、対象企業として考えにくいのは業績が右肩下がりの会社です。その業界の市場自体が頭打ちの可能性があり、参入のタイミングではないし、また異業種の経営不振立て直しも困難です。

顧客の共有という意味では全く関連の無い業種の提携が生まれることがあります。出版・広告業や消費者金融業などは顧客ベース活用のチャンスと考えられます。法人顧客のみの商売を個人顧客にも広げるため、異業種に参入する例もあります。

また、企業運営に共通する機能を果たす業種としてソフトウェア開発業、人材サービス業などは代を反映した特徴のある会社が多いとも考えられるのではないでしょうか。

運営上・財務上のシナジー効果

異業種との資本提携で期待されるシナジー(相乗)効果には先ず運営上の効果が考えられます。販売チャネルを共有できたり、関連商品として販売促進して売上増加を見込んでいく一方で、物流などの販売費用を共有して削減できたり、会社が合併すれば管理部門などの重複する機能をスリムにしてコスト削減を図ることができるかもしれません。また買収によって節税効果、信用力向上などの財務上のシナジーも期待されます。

逆に、異業種の統合には買い手側に元々その業種の経営のノウハウが無いために競争力を失うリスクがあります。せっかく取得した企業の人材が流出してしまえば中身の無い「空箱」となってしまいます。期待されるシナジー効果を得られるかどうかの分析と、提携後早期の統合作業の実現、そして統合後の効果を評価することが、M&Aにおいて重要な仕事の一つとなります。

(以上)

日本企業の中国事業展開において、合弁会社の設立は現在でもよく検討される投資の形態の一つですが、これは主要な資本提携の一つです。

合弁の形式としては主に、中国国内企業と外国企業との合弁=「中外合弁」、そして外国企業同士で合弁して中国国 内に会社を設立する「外資合弁」があります。実際は外資合弁ですが、中国国内での登記手続きを簡便にし、運営管理拠点を設置する目的で外国企業同士が香港 やシンガポールなどで投資目的の合弁会社を設立した後、1社として中国国内に投資設立するケースもあり、登記上は外商独資企業とみなされます。

事業運営の役割分担

合弁事業のメリット・目的の一つに事業活動の役割分担があります。日本企業が高品質の商品や最先端の技術を有している一方で、中国国内市場販売のネットワークがあるとか、原材料の供給が可能である中国企業との製造企業合弁事業は最もよく耳にするケースです。中国内資企業との合弁により、現地の状況に即した管理運営や経営戦略を推進することができます。

外資合弁においては、大手メーカーの要請に応じて部品メーカー数社が経営資源(カネ・人・モノ)を出しあえば、1社では負担が大きい中国への進出が可能となります。

新規設立、増資引き受け、持ち分買取り

資本提携の方法としては、合弁で新規に設立することに加え、既存会社に出資する方法があります。増資を引き受ける場合、投入した資金は資本金として登録され、会社に入ることになる一方、株式の買い取りは、元の出資者に支払うこととなります。事業拡大のための提携であれば前者の方法が取られますし、株主自身の資金需要や事業撤退であれば持ち分の買い取りということになります。

日本側主体の事業展開が可能か

合弁の一方が自社主導で事業を展開したい場合は出資比率を高めるのが当然です。しかし、中外合弁事業で、日本企業が51%出資で中外合弁企業を設立していても、重要事項については董事会での全員一致決議が必要と元々合弁契約や定款に取り決めてあり、中国側の同意が中々得られず思うように事業展開できないことがあります。

中国では対外開放が進むに伴い、業種によって外資出資が制限されてきた分野でも序々に制限緩和に向かっており、これまでマイナー出資の合弁形態で行ってきた事業を日本側の主導でさらに展開したいような場合、合弁相手の持ち分を買い取って外資100%とすることもあります。このような場合もちろん合弁相手の同意が必要で、合弁契約の途中終了として合弁契約に応じた賠償などの交渉、また今後合弁相手との関係をどのように保つかなどを考慮する必要があります。

中外合弁契約では出資比率に応じて利益を分配すると記載されており、逆に出資比率を小さくして損失の場合の影響を少なくしたいと考える場合もあります。

また一般的には合弁パートナーの数は少ない方が意思決定がスムーズかつスピーディに行えることが予想されます。

合弁解消

一方、合弁事業の解消ですが、業績悪化や市場構造の変動により事業の継続が困難になった場合には、会社の解散か或いは持ち分の譲渡により合弁事業の解消を検討することになります。

中外合弁の関連規定には、合弁の一方が株式持ち分を譲渡する場合、合弁相手が優先購買権を有するとあり、第三者に譲渡する場合は合弁相手への譲渡条件より優遇されてはならないとあります。

持ち分譲渡の場合の手続きとしては、董事会などで合弁相手の同意を得た上、元の審査認可機関である対外経済貿易部門の認可を受け、工商行政管理部門などで登記変更手続きを行うことになります。

(以上)

卸売業は、商品の種類及び流通の機能によって自社の利益増大を図ることができる業種であり、逆に言えば同じものを同 じ機能で販売しても差別化できず、生き残りが難しいことは想像に難くありません。天然資源でソーシングが困難などの特殊な理由がある場合を除き、顧客に対 する交渉力は弱く、ポジションは低いのが通常です。また流通改革において小売企業が卸売企業を介さず、生産者から直接仕入れるといった状況があり、こう いった背景で企業間の合併や統合が進むのは自然の流れと言えるのではないでしょうか。卸売、小売を含む流通業種の企業再編は、大手企業、中小企業の案件に 関わらず昨今では非常に一般的となっています。

卸売業企業が合併や統合を通じて他社との差別化を図る方法の一つに、隣接業種との提携があります。製造企業同士では サプライチェーンの上流・下流と言ってもよいです。商品が一般消費品であるような卸売業の場合、小売企業との合併は事業基盤の強化につながり、他社との差 別化につながります。またお互いに商品をよく知っており、経営面では方針を一にしやすいということもあるでしょう。一方小売業にとっては、特に新規出店を 進めている段階では、商品仕入れルートの確保が急務です。今回は、卸売業の企業再編という観点から小売企業との提携を検討していますが、この点では、小売 企業にとってもメリットのある提携といえます。

合従連衡

先述の例は卸売企業の後継者問題などもあり、小売企業への会社譲渡という提携に至りますが、企業再編ではその他に、同業他社同士の統合ケースもあります。これは各社が株式を移転し、持ち株会社を設立するという方法です。統合のメリットとしては仕入れコストや本部コストの削減、信用力の拡大などがある上、各社はそのまま存続できるため、企業文化の融合や人事制度の統一といった問題が少ないことが特徴です。各社特徴のある社長がいれば、寄り集まって更にいい知恵が出てくるかもしれません。事業規模の拡大により上場の可能性も出てきます。このような同業他社同市の統合は合従連衡により業界内での生き残りを図るのが目的ですが、業界淘汰のピンチは発展のチャンスでもあると言えます。

企業再編時の企画、実施の上での課題には、企業文化の統一、社長やその他の役員人事をどうするか、再編後の持ち分比率、労働条件の違いなどがあります。

また、統合後のシナジー効果についても早期に発揮できるような仕組みづくりが必要となるでしょう。現代の企業にはコンピュータシステムが導入されているためシステム統合が必要となれば、コストがかかります。

統合する場合に、両社(或いは各社)の統合が業界で生き残るために必須であり、そのためには既存のシステムや企業文化の変更に柔軟に対応できるという強い意思と方向性が必要です。

提携交渉が合意に至った時、それは提携事業の始まりであり、早期に各種課題を解決しなければ提携が実ったと言えないことになります。

(本文 以上)

リスクの確定

前回に引き続き、委託先工場の買い取りケースについて紹介します。このケースでは、従来の取引相手との交渉は進めやすい面もあるが、「親しき仲にも」基本合意契約によるお互いの意思確認と、買収監査による潜在リスクの洗い出しが大事、といったことを説明しました。

買収監査を通じ、買い手は買収時のリスクは何か、リスクの大きさはどれくらいかを確定していきます。リスクの確定によって、最悪の場合を想定し たり、万が一問題が起きた時の対応策や費用の負担について契約書に盛り込んだりします。隠れた債務などの可能性が大きい場合、株式買収ではなく資産買収に よるリスク回避も検討されます。

リスクは企業によって様々で、リスクの内容にふさわしい調査・監査を行います。以下に一般的なリスクを列記します。
  • 簿外負債:決算書に載っていない負債がある場合。
  • 保証債務:会社として他社の連帯保証をしている。
  • 税務リスク: 脱税、申告漏れなどがある場合。
  • 環境汚染:廃棄物の処理上問題がある。
  • 贈収賄:政府機関などに対し、絶えず行っている場合。
  • 背任行為:従業員の不正など。
  • 瑕疵:製造製品の品質問題(リコールなど)
  • 人材流出:人が辞めるリスク。

中国事情特有のリスク

中国国内の事情に特有で製造拠点に関わるリスクとしては、土地登記上の問題もあります。買収先企業が土地の使用権を有する場合、譲渡可能な土地かどうか、また工場棟を賃借している場合でも、土地及び建物を含む不動産登記状況が適正で手続きに漏れがないか、或いは当該土地が住宅や商業用途に転換される可能性などを調査します。

税務リスクにおいては、複数の帳簿が作成されていることにより隠れた債務や、申告されていない収入や資産などが無いかどうか。税務規定に違反していることを知らずに、或いは当局に指摘されないまま過ごしているような活動があれば、買収後当局から指摘され追徴される潜在的なリスクとなります。前回に述べた通関業務に関しても同様です。

経営範囲について、中国における外商投資企業の事業活動は認可制で、必要な許可を得て証書の発行を受けなければなりません。営業許可証や定款に記された経営範囲を超えて活動することはできません。但し、中国の開放政策に伴い外資規制は緩和されており、以前の厳しい規定通りに作成された定款が未修正であるなど法的手続きが漏れているだけの場合もあります。修正や追加手続きが可能であれば買収時のリスクとしては大きい問題とはならないでしょう。

最終条件交渉へ

買収先企業のリスクを洗い出し、適切な調査を行って、対応策を見出すか或いは契約書に盛り込むなどのステップを経て、最終条件交渉に入っていきます。一般的に、○株式価値の決定 ○従業員の処遇の決定 ○社長の処遇の決定 ○譲渡代金の支払方法の決定 ○連帯保証・担保提供の解除方法の決定 ○罰則規定 などの項目を盛り込みます。他にケースに応じて、細目事項を決定します。譲渡後のいざこざを防ぐためにも、事前にきちんと交渉条件に盛り込み決定しておくことが重要です。

出資者変更登記手続き

委託先工場の買い取りに際し、当該工場の登記に関しては株主変更の手続きが必要となります。手続きステップは図の通り、認可を経て各種登記の変更手続きとなります。株主間の譲渡契約書、譲渡・譲受け双方の会社の登記証明、定款の修正などが必要です。資産譲渡の場合はこれらの各種登記手続きは不要となりますが、譲渡する資産の特定が詳細に渡ると双方の契約としては複雑になります。

(以上)

委託から内製化

今回は、委託先工場の買い取りケースについて紹介します。

A社(日本)は、B社(中国)に対し主要製品の生産を数年来委託しています。B社工場での製造品目は主にA社の依頼製品であり、A社が工場の株 式を買い取り、自身で経営するということが検討されました。この背景には、例えばB社が業界の競争激化で経営不安定となった場合や、或いはA社側の事情 で、これまで外部に委託していた製造品目の市場が拡大され重要視されるようになり、内製化される方針に変更された、などのケースがあります。いずれにして も、この買取りケースの特徴は、買収候補企業と従来取引実績があり、お互いに顔が見え、一定の信頼関係があるという点で、不特定多数の買収先とは異なりま す。買収側にとっては事前調査や企業絞りこみの手間がなく、相手企業の概要も分かっており、交渉も一見スムーズに開始できそうです。とはいえ、買収活動は 一足飛びに行えるものではなく、打診→基本交渉→基本合意契約→買収監査→最終交渉→最終契約 と親しき仲にもステップを踏んで進めるのが望ましいです。

譲渡意向を確認、監査を実行するための「基本合意契約」

「基本合意契約」とは、買収の意向書です。譲渡側としても、本当に譲渡する意向が無い限り会社の内情を調査されることに抵抗があるでしょう。基本合意とは、譲渡意向を双方確認し、買収契約以降異議が無いよう、お互いのために監査を行い契約に向かって協力するという主旨を明らかにするものです。

基本合意書の内容としては、その目的や有効期限、期間中の独占交渉権などを規定します。また、評価の実施日程や、以降最終契約までの日程計画を立てます。また、交渉中に日常の生産活動がおろそかにならないよう規定します。

買収側としては、その目的は生産継続であり、株式譲渡により引き継ぐ債権・債務のリスクが大きい場合、監査後、買収方針は資産の買い取りに移行する可能性があります。

一方、買収監査はそのリスクの洗い出しや資産評価などによって売却価格の交渉に影響を与える可能性が大きいため、譲渡側は意向書に売却価格或いはその考え方について大まかな方針を決めたいと希望するでしょう。

このほか、基本合意契約には秘密保持条項、免責条項などが含まれます。

財務監査のポイント

「買収監査」は、企業の真実の状態を知り、企業資産を公平に判断する基準であると同時に、潜在するリスクを洗い出して買収の是非を判断するという目的があり、財務監査では会計士などの専門家が工場現場の精査を実行します。項目としては、次のようなポイントがあります。

①資産の実在性(資産が本当にあるか、価値はいくらか)、②負債の網羅性(負債はもれなく決算書に記されているか、簿外負債や偶発債務の可能性はないか)、③管理体制(どのような管理体制、会計基準で経営しているか)④税務リスク(脱税などの税務リスクがないか)

特に通関業務については、加工貿易を行っている場合、保税の原材料・製品の実在庫と手冊の登録状況の差異や、設備の登録状況について確認します。同時に通関業務の中で違法行為や手続きの漏れが無いかどうかも確認します。通関業務上のこれらの問題は、以降税関などによる税金の追徴リスクとなるからです。

(続く)

吸収合併による物流拠点の統合

今回は中国での物流グループ拠点統合のケースを紹介します。

WTO加盟後、中国では物流業種に関する開放が段階的に進みました。元々国内産業保護の色合いの強い業種の一つで、フォワーディング会社で1百万米ドルだった最低資本金額が内資企業と同様5百万元となり、また道路運輸業務の外資出資比率制限もなくなりました。

現在では総合物流業として制限されず、複数の経営範囲と規模に応じて設立認可と特定業務のライセンスを取得することができます。

制限緩和に伴い、外国企業は①保税区倉庫企業、②外資制限のほとんどないコンサルティング会社・一般地区倉庫企業、③CEPAによる国際貨物運輸代理企業、④一般地区の道路運輸会社 等の拠点を個別に設立してきました、最近の傾向として、機能強化と効率化を図るべく、拠点の統合が検討されています。
このような場合、吸収合併-存続会社を決め、他の会社を吸収し、吸収された会社は後日解散する―という方法を取ることができます。

事業のフォーメーション

存続会社を決めることは、拠点の業務範囲と位置を主要なビジネススキームにどう生かすかを検討することでもあります。

例えば国内外の荷主からの依頼を受け、外貨入送金と通関手配を管理し、業務を各拠点に分担するのが主要な業務ならば、フォワーディング会社を存続会社(本社)とし、倉庫・輸送拠点を支店、その他は営業拠点の支店とします。国内業務が主で顧客が一定であれば、郊外の倉庫・輸送拠点が本社ともなり得ます。逆に本社機能が都心に位置していれば、人材の確保・情報収集に有利と思われます。連絡事務所の登記は不要ですが、営業拠点とする場合は支店登記が必要です。

ライセンス関係

物流業務各種のライセンスと税制には変遷があり、複雑です。輸送費用は貨物代金の一部と見なされており、実際に輸送手段を保有/専有する輸送会社のみが発行できる専用発票は、顧客である荷主の増値税の申告上、仕入控除の対象とすることができ、顧客(荷主)にとってメリットがあります。輸送業務を行う拠点が吸収される側となる場合に、合併吸収に際して税務上の変更が無いかどうか、確認が必要です。

なお保税区業務を行う場合は必ず区内に法人登記が必要であり、一方、保税区会社はその経営範囲が原則的に区内業務に限られていることから、区外業務を経営範囲として認可するかどうかは、地域により異なる状況が見受けられます。

債権・債務の継承手続き

存続会社の地域の審査認可機関で合併申請を行い、吸収される会社の所在地では解散申請を行います。存続会社は合併によって解散する会社の債権・債務を全て継承します。吸収合併の申請に対しては 、45日以内に初期的な回答を得るとされています。この初期的回答の取得後10日以内に債権者に通知を出し、且つ30日以内に全国紙に3回以上公告することが義務付けられています。この通知と公告で債務の継承案を説明し、90日間債権者より異議がなければ最終認可取得の申請に入ります。申請後30日以内に可否の決定があるとされ、その後認可書類や登記書類を刷新していきます。

合併後の会社の資本金額は有限責任会社の場合、元の会社の登録資本金の和とし、資本金減少に対しては特に認可が必要です。

(以上)