M&A

[M&Aは今] (2)来料加工廠の法人化(2)

設立と生産移管

生産活動を止めずに移管できるかは最大の難関です。同一場所で法人化する場合、税関ではスムーズな移管をサポートするため、新設法人の進料加 工貿易申請後3か月間来料加工手冊の抹消を待ってくれます。但しこれを過ぎると自動的に抹消されるため、設備移管など進料加工申請開始前に可能な事前作業 は極力済ませておくべきです。

来料加工契約をスムーズに縮小・中止できるか、契約の中方当事者との交渉も心配の種ですが、同一場所で法人化する場合、スタッフやワーカーの雇 用確保や、工場棟の賃貸契約が継続できることは地域への貢献にもなることから、また加工貿易環境が厳しくなっているご時世ですので、契約の中国側も理解を 示してくれるであろうという期待もあります。またこれまで中方のトップとの交流がほとんど無いため直接交渉が難しい場合は、仲介者を立てることも検討でき ます。

設備は加工廠から新規設立する法人に売却しますが、法人が設備輸入免税枠を取得できれば、保税のままで移管することが検討でき、免税枠がなければ、保税の解除手続き(必要があれば課税)後の国内貨物として移管します。

設備は香港会社の固定資産を投資者である日本本社に売却するか、新設した現地法人に売却するかのいずれかとなります。但し、無償提供方式で輸入通関された設備の対価を中国国内から直接対外送金できません。①固定資産を香港会社から本社に売却、中国国内では現物出資とするか、②積み戻し(或いは物流園区・中心などに輸出後)再輸入して、設立後の現地法人が送金するかのいずれかを検討することとなります。

設備を現物出資とする場合の価格については、資本金の登録を検証(験資)する公認会計士が証明書を発行するか、商品検査局の査定部門の査定証明を取得した上で験資報告書を作成依頼します。

目標とする日程は、法人化に3か月、その後加工廠の閉鎖があれば更に3か月~半年が最短日程です。手順を考えると次の図のようになります。(添付図1)保税設備の移管手続きは煩雑で、中国側の当事者の協力も必要ですので手配を早めに進める必要があります。

進料加工の増値税コスト

来料加工と法人の進料加工のコストを比べる場合、鎮などに支払っている10数%~の加工賃手数料と、進料加工による増値税コストを単純に比較することがあります。
進料加工による増値税コストは主に、加工による付加価値分に還付の欠け目を乗じて算出される、免税控除できない部分の増値税コストです。来料加工の際、還付も控除も行われない国内調達及び生産に関わる増値税は、進料加工時には仕入控除の対象となります。進料加工による増値税コストの計算例を示すと次の通りで、粗利益率が高くなるか、或いは輸出製品の増値税還付率が低くなればなるほど、増値税コストは大きくなっていき、国内調達材料が多くなれば仕入れ控除が増え、贈値税の負担は減ります。(添付図2)

法人化した場合には人件費、管理部門のコストが増大することも留意が必要です。管理部門人員数の増加、レベルアップが必要となります。

(以上)